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わが国を巡る領土問題の再認識

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公開日付:2015.10.30

 現代、世界各地で発生している紛争の要因の多くは、領土を巡る問題であるといえるが、大陸から離れた海洋国で、これまで比較的にこの種の問題で煩わされることがなかったわが国も例外でなく、目下3地域で、近隣国から事前の話し合いもなく実効支配をされるという領土・領海問題を抱えているが、重要事項でありながら、知っているようで案外知られていないのが領土や境界の決められ方ではなかろうか。

(1)領土や国境とは?。

 そこで先ずその定義を述べておくと、国家の領土とは、「独立主権国家として、その主権を行使し統治権が及び独占的に占有支配し得る範囲(領域、テリトリー)のことで、広義には陸地だけでなく領海、領空が含まれる」と定義づけられている。
 国境とは、領土、即ちその国の「国家領域の限界を示す区画の境界線、俗に言う縄張り」のことで、構築物で囲われずとも条約での合意でも国境線となる。
 国境は通常、その地域に常住する同一民族の棲息圏や行動範囲などの歴史的実態に則り、隣接国との摩擦が少ない山脈や河川、海洋などの自然的障害で仕切られてえきたので、くねくねと折れ曲がった曲線構造の自然地形に沿った境界線が多いが、隣国との地理的関係が密接していたり複雑になると、当時関係国間の話し合い・合意書面で決定されたり、中立的第3者国の仲裁を得て合意決定される場合もある。
 この場合は経緯や緯度、主要構築物、両国の面積・人口比などで人為的に仕切られる直線的構造となることもある。
 世界地図を見ると、国土や国境が流動的で未確定なため、仮設定の領域や境界線が点線で描かれていたり、不自然な直線構造で仕切られたものを見かけるが、これらの多くは、旧植民地宗主国や戦勝大国のエゴと戦後処理の曖昧さで半強制的に設定されたものといえ、当事国の意思を無視し、民族を分断したりしたので、これが現代の領土・領海争いの原因となっていることが多い。
 近接する他民族・種族や地域との縄張り争いは、人間も含めたあらゆる動植物が、その発生の有史以来抱えてきた問題であり、その紛争が絶えたことがないといわれるが、こういった国家運営の基礎となる重要な領土や国境という概念が創案され明確に定義づけられたのは、実は意外にもそれほど古くなく、17世紀の近代になってからのことである。

(2)領土・国境という概念の発生と、その沿革。

 すなわち1648年に、ヨーロッパで、過去30年余りも続いたカソリックとプロテスタントとの争いを終結するために、フランス、ドイツ、スウェーデンなどの主要関係国がドイツに集まって国際会議を開き、ウェストファリア条約を締結・調印し、そこで初めて領土や国境という概念が明確に規定された。
 太古の昔には、恐らく地球全体の地理的状態が知られておらず、未開で広大な荒野や山林が無限に存在しているものと考えられ、人口も少なかったので、人類がその種族の生命の維持と子孫の繁殖を続けるに必要な自然の土地や食糧資源などといった恵みが十分にあり、その需要(必要)を満たしていたので、そういった無限の広大な地域を、自力で移動できる能力の範囲内で自由に移動して回り、それを他の動物と同様に、生存本能的な必要に応じ、必要量だけを採取したり狩猟をすることで生活し、全く自然人・自由人として自給自足し、ごく自然発生的な各種族の生存の知恵として適切に譲り合ったり棲み分けをし、自然界との調和的な共生、共存を図ってきたので、ここまでが自分たち同族の占有縄張り領域といった区画化の考え方を持たず、従って他民族や他の動物種族との争いごとも少なく、自然界の生態系秩序と調整の摂理に従って、比較的に平穏に生存・増殖し得てきたものと推察できる。
 それがその後数億年・数百万年を経る間に、数多の寒冷化や温暖化などの気候変動や環境の変化、洪水、旱魃、飢餓などといった災難を体験しつつ、漸次、それを克服して生存する方法を身につけ、その間に、各種動物の中で最も知能や技能が発達した人類が知恵を高めて進化を遂げ優位に立ち、他の種族を支配するようになり、人口を増殖せしめた。また道具や言語を創出したことで行動範囲が広がり、他地域、他民族との交流も盛んになるにつれ欲望水準も高まり、地域や気候風土、自然の生産物にも差異がある事に気づき、より安全で快適な生活環境と豊かな恵みをもたらす広大な地域を求めようとする意識が高まり、狩猟民族のような移動型生活態様をとり、やがて豊饒な地での安定的定住を指向する農耕生活などといった生活態様も生じ、山林地帯や海岸地帯などそれぞれの地域の特産物を交換し合う交易といったことも発達するようになり、人類は原始的な狩猟・採取経済生活から次第に土地こそが富を生む基という土地経済、土地を耕す農耕経済、そこで働く労働者を尊重する勤労経済、海の幸と山の幸との物々交換経済、それを仲介する商業経済、交易の共通的媒体としての貨幣経済、協力し合い富を効率的に大量生産する産業経済、そのための科学技術・機械・物質文明の経済、それを支援する資本主義経済、金融・投資経済生活へと発展を遂げてきたのだが、その過程で、より肥沃で広大な地域を占有したいといった欲望の高まりなどから、領土の確保、その境界の明確化といった概念も強くなり、それが近年の欧州諸国の植民地化、現代のTPPなどといった経済ブロック化へと連なって人類社会は発展してきたが、同時にそれを巡る国家や地域間の競争の激化、紛争の多発といった新たな問題も招来した。
 国際的な領土や境界線の設定は、強大国の武力や経済力による領地と覇権の拡大を助長したり、保護・保証するためのものでなく、むしろ国家間のトラブルを予防し、各国の自主独立力を高めるためのものと心得、恵まれた環境の広大な領地を有する優越的な強大国ほど、互譲・互助の寛容さとノブレスオブリージュ(優越的立場に立つものに課せられた義務と責任、理性的な節度と品位)を尊重すべきであろう。
 百獣の王といわれるライオンのような野生動物の社会でさえ、特定者の独占的占有と多種族の絶滅を慎む節度で共生・共存・共栄の秩序を保っているのだし、「屏風と事業・戦線・領土は、手を拡げ過ぎると倒れやすい」といわれるのだから。

(3)国境を設定し得る前提条件は国家の存在。

 国と国との境目を画するのが国境線であるから、これを設定するには先ず国家としての存在が認められている必要がある。
 国家として国際的に認められるには、3つの条件、即ち「①国家主権の確立…独立国としての最高権力あるいは意思の存在、法律などにより国内を管轄・統治する権利の保有。他国からの内政干渉を排除できる権利も含まれる。②領土の存在と画定…国家が管轄する主権と支配が及び範囲(領域)の設定。③国民の存在…国民とはその領地内に生活の基盤を置き、永久的に在住する人」の3要項が全て揃って満たされていることが必要であり、それに加えて「④複数以上の他国から、国家としての存在を承認されていること」が肝要、つまり国際的に立派な独立国だと認められてこそ、初めて国家としての地位が確立することになる。
 パレスチナやIS(イスラム国の自称)などが、まだ世界から完全な国家として認められないのも、目下紛争継続中で領土が画定していないこと、永住する同種の民族ばかりで構成されず他種外国人の一時的混入など、これらの要件を欠くからである。

(4)国境は陸地だけでなく海・空にも及ぶ。

 国境線が設定されているのは陸地だけではなく、海洋にも領海域、空にも領空域という国境が存在し、陸地と併せて国家主権が及ぶ領域となる。
 領海という概念の歴史は大航海時代からと古いが、領空の設定は飛行機の普及が進んだ20世紀になってからである。現在はまだ何処の国の領土にも出来ないとされている南極・北陸の両大陸や宇宙空間までもが、今後益々開発競争が進めば、領域設定の争う対象になりかねないとも言われている。
 飛行機が普及して各国領土の上空空間を自由勝手に飛び回るようになると問題である。そこで設定されたのが国際航空条約で制定された権利の領空圏域で、陸地・海洋境界線の垂直平面上の上空100キロメートル内となっており、それ以上の高度域は制限外である。地面下の地中権についても、深度制限はあるが、同様に認められている。
 ただし領空権の適用は民間旅客・貨物機、気球、飛行船に限られる。軍用機は事前の承認があれば他国の上空通過も可能、100km以上の上空を飛ぶロケットやミサイルは対象外で自由(軍事大国の身勝手さを感じるが)、今話題の小型無人飛行機に関しても、問題が多発するようなら規制されるようになろう。
 領海は、兵器の性能向上に伴って弾丸が届かない範囲にまで拡大され、国連海洋法条約による現行法では、その国の海岸線から直線で12海里(約22km)までが国家主権の全てを行使できる「接続水域の領海」としている。
 この他に、沿岸から200海里(約370km)までという「排他的経済水域(EEZ)」の設定が認められており、これは石油・ガス資源、水産資源の開発という経済的権利に限って認められる海域ということで、海上・水中の他国船の航行を排除し得るものではない。
 近年では海底資源の開発が盛んになったので、さらにこの他に領海基線(海岸線から引き潮が一番後退した地点)から400kmまでとした「大陸棚を基準にし権利」が認められるようになったが、ただしその海底資源の開発に限られ、海中資源や航行船に対する支配権はない。しかしここまでを広義の領土と見れば、海洋国日本は、世界第7位の広大な領土を有する国とも言える。
 両国間の海域が狭い場合や河川の境界線は、船舶が航海できる深さのある基本線の中間と決められている。無人島や海中火山爆発で新島が出現し発見した場合の領有権は、最も早く発見し、領有を主張・宣告し、活用実績を立証して実効支配した国の領土とされるので、領土問題は多分に、「早いもの、声の大きいもの、実質的活用の実績があるもの勝ち」といった面がある。

(5)現在世界の領土問題の震源地は?。

 イギリスに端を発した産業革命以降の世界は、それまでの自然界の作物の採取とそのままでの一次元的利用、牧畜・農耕主体、個人の手作業による自給自足といった人類の社会・生活態様を一変させ、確かに目覚ましい機械文明や工業技術の進歩、生産効率の向上、資本主義経済の発展などで、物質文明の繁栄をもたらしたが、その反面で、人間の浅ましい過剰欲望や競争・闘争心、排他による独占的権益の確保などといった性悪の面を煽り立てた嫌いもあり、その結果、こういった近代化と巨大化の弊害が今世紀になって一斉に露顕・噴出した感があり、地球自然環境の荒廃や、世界的な異常気象と重大な天災の多発、経済先進国における少子高齢化の一方で低開発地域での人口爆発的増加、地球天然埋蔵資源の枯渇化、地球規模での需要と供給関係の逆転現象、貧富格差の極端な拡大・偏在、こういった問題のエゴな解消を図るための国家・地域間競争の激化、新たな領土領地拡大を求める紛争の熾烈化を招くなどといった新局面を迎え、現代の世界は改めて、精神文明重視生活への回帰、真の豊かさや幸福とは?の探求を余儀なくされるようになり、目下はその過渡期としての世界的な激動と混迷期にあるといえる。
 自国中心的で国際化といった意識が弱く強く、モノ・ヒト・カネの国際間移動や流動・情報交流手段が未発達であった19世紀末までの世界、とりわけわが国は、大洋の中に孤立して浮かぶ島国で、海洋という要害によって守られ、比較的に温暖で気候や自然環境にも恵まれ、定住型農耕民族で温厚・協調的、自然に順応して共生・共存するといった国民性を有し、国内だけで何とか自給自足できる状況にあったので、永年にわたり異国から本格的に武力侵略を受けるということがなかったし、異国に武力攻撃を仕掛け領土拡大を図るという意図も持たず、国際感覚が鈍いといった欠点はあったが、概して平穏に推移してきたので、国策としても、日常生活においても、領土や国境を自らの力で守るという意識や関心が弱かったといえる。
 その点では、欧州の先進的といわれる諸国の多くは、概して日本より緯度的に北部の気候風土が厳しく荒野が多い地帯に存在しており、従って良い土地を求めて常に移動し続ける狩猟・採取型生活態様で、闘争的な民族性が強く、地政学的にも広大な大陸の陸続きで他国と接しているので、昔から近隣諸国と争いが絶えず、自国の安全は自力で守るといった領土や国境防衛への意識や関心が強く、より豊かな自然資源に恵まれた東南方地域への進出を目ざす領土拡大指向が強くならざるを得ないといった環境的背景を抱えていた。
 15世紀から17世紀初にかけ、ヨーロッパ大陸の主要国、北欧州スカンディナヴィア半島諸国、南欧州のスペイン、ポルトガル、これに続いてオランダ、オスマントルコ、ドイツなどが、やや遅れてイギリス、フランスなどが参入し主体となって、海外に新しい領地と資源を求める気運が高まり、そのための新しい航路や陸路を開拓する大航海時代、陸路のシルクロードの発達を迎えることとなったが、そこには欧州ならではの、地域の発展に伴う北・西アジア方面からの異民族の大量移動的流入による人口の急増、旧来の都市国家社会の過密化、近隣国間での資源獲得競争の激化、自然環境の荒廃と資源枯渇、近隣国との領地争いからの脱却という切実な動機や、本来のヨーロッパ地方の民族は、北欧地域のバイキング、北方騎馬民族、移動型狩猟・遊牧民などが主体であり、国内の一定箇所に定住することに拘らない進取の気性と開拓者スピリッツ、逞しい挑戦・闘争心を有していたことなどもあって、目覚ましい成果を上げ、その結果、北・中・南アメリカ新大陸などが発見されたり、18から19世紀にかけてはアフリカや中・南米、中東、東南アジア、東アジア地域、その中継・補給基地としての北・南太平洋諸島の植民地化競争が活発化し、それにさらに遅れての19世紀から20世紀の前半には、新興大国アメリカやロシアの参入もあって、日本にまでその触手が伸びるようになり、これが日本への黒船の来航、鎖国政策を採っていた日本の開国、明治維新、それ以降の近代欧米化への転換促進、欧米列強との対立、敗戦、戦後の自由・民主主義国への移行に連なり、現代に至ることとなった。
 第2次世界大戦後、その戦後処理、ソ連・中国などへの防共対策などから、世界各地に植民地を有していた欧米諸国は、支配下にあった多くの国を植民地から開放、独立容認をせざるを得なくなったが、その際の領土帰属や境界の設定において、旧宗主国としてエゴと都合で強制力を発揮し、在来民族の意思も聞かず強引に直線で仕切って民族を分断させたり、政治的思惑で新たに設立させた国に、本来の在住民族を放遂しその領土を譲渡させたり、大国間の駆け引きで、離島領有権や境界線を曖昧に処理したケースも多かった。中・韓・日本の領海域や離島の帰属、南・北朝鮮の分断、アフリカ各地での民族紛争問題など、近年の領土問題を巡る世界の各地の紛争の原因、震源地は全てここに存在するとさえいる。従ってこの種の問題の後始末や処理責任は、その種子を蒔いた当時の関係国欧米に任せるのが妥当ということではなかろうか。

(6)領土紛争を仲裁する国際的な権威機構は存在するのか?。

 国際間紛争の問題が生じた場合に、中立的に仲裁する国際的な権威ある機構は、オランダのハーグに本部を置く国際司法裁判所であろうが、国連安全保障理事会が世界6地域に割り振られた15人の裁判官を任命し、その任期は9年である。
 しかし領土問題などは、問題発生を予防的に警告したり、積極的な口出しや指導はせず、問題が発生し、当事国から調停依頼申請が出されにも、もう一方の国が問題存在の事実なしと応じなければ、開廷はもとより、話し合いでの仲介さえ出来ず、応訴・出席を強制的に実効させる権限はない。現在の中国の対日姿勢がこれである。
 もし裁定に両国が応じても、それは厳格な白黒の判決で決着をつけ、その遵守と実行を強制的に執行する権力と実力を持つというものではなく、あくまでも円満な問題解決への仲裁・調停に留まるものである。
 ドイツの法学者が、「自然の造形や日本の庭園などは曲線構造が主で、優しい感じであるが意外に頑丈で見飽きないが、欧米の造形物は直線構造が主で、一見、丈夫なようだが、案外脆い点があり、見飽きてしまう」と評していたが、これは国際紛争の処理にも通じるもので、諦めず、焦らず、相手の立場も考える事が大切だ。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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