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安全保障関連法制後の日本

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公開日付:2015.10.16

(1)日米間で既に約束済みだった安保法の可決

 国論を二分した安全保障関連改正法案(自衛隊法の改正など10法案)が本2015年の7月には衆議院本会議で、9月19日の未明には参議院本会議でも、いずれも、国会議事堂を囲む連日数万人にも及ぶ民衆や有識者の憲法違反、安保法の改正・自衛隊の海外武装派兵絶対反対の声に耳を傾け、その十分な理解と納得を得ることもなく、圧倒的多数を誇る連合与党の圧力で、通常国会の抜き打ち的審議打ち切り、強行採決で一括可決され成立することとなった。
 しかしこの法改正と可決は、1945年8月に第2次世界大戦でわが国が敗北し、9月に降伏文書に調印、以降は非武装・不戦、恒久平和と国体の安泰を世界に表明したときから奇しくも70年という節目を迎える年月に成立をみたものであるが、安倍政権や与党はそのことを十分承知の上で、あえて当時の非軍国主義・平和国家としての再建という理念を放棄し、海外での武力行使に道を拓いたのであろうか?。
 2015年(平成27年)9月19日は、再び、日本国の将来を左右する重大な決定と方針転換がなされた日になったのであり、国内のみならず、世界にも大きな反響を及ぼすものである。
 国家の安全保障政策は、国の運営に関する最重要課題であることは申すまでもないが、安倍首相は本法成立直後の記者会見でその感想を聞かれたのに対して、「本件に関してはこれまで十分に時間をかけて衆・参両院で丁寧に説明し、与野党で審議し尽くし、国民の理解も得られたと思う。アベノミクスが一応の成果を見て経済が回復基調にあるし、国政選挙のない本年の通常国会開期中に安保関連改正法案を成立させることは第2次安倍政権発足時から決めていたことなので、ようやくここまできて宿願を果たしたというのが率直な感想だ。これで日米間である程度のことが出来る(?)」と胸を張り、翌日からの秋の5連休中は避暑地でゴルフを楽しんでいるが、さてこの結果、将来の日本はどのような道を辿るのであろうか?。
 ご参考までに本法案関係だけに絞り、安倍政権発足以来から成立までの経緯を改めて簡単に整理し、振り返っておこう。
 2006年9月に、第一次安倍政権が発足。
 翌2007年、憲法解釈の見直し、集団的自衛権の行使を検討する有識者懇談会「安全保障の法的基盤再構築に関する懇談会(安保法制懇)」初会合を開催。戦後まもなくの日米安保条約締結当時の岸元総理の孫で自民党のプリンスということで期待されたが、若くして初総理就任ということもあり、施政方針が抽象的で、これといった成果も見ないまま、任期途中で体調不良となり、約1年の短命の退陣。
 2012年9月、自民党総裁選で再び党首に返り咲き。党内に安保法制懇再設置。
 2012年12月、衆院選で自民党が圧勝し、第2次安倍内閣発足。(注:この選挙時では、憲法の拡大解釈や安保関連法の改正案に関しては一切触れずに秘し、専ら日銀を抱え込んだ大胆だが危なっかしい超金融緩和での株価上昇策、アベノミクスという経済再建政策優先で大人気を博したが、その裏では、御用学者たちに憲法解釈の拡大、安保関連法改正策に関して研究させ、マスコミと財界を味方につけ、民意の形成を画策した)。
 2013年7月、アベノミクスの梃入れで信を問う参院選でも自民党が大勝、衆・参のねじれ国会解消、以後、連立与党による力の政治、独裁政権色を強めた。
 2014年5月には、圧倒的優勢の政治勢力を背景に、第1次政権時にやり残したことを実施すると、親米・財界優遇、鷹派の本性を露骨に発揮し始め、ここで集団的自衛権の行使を巡る憲法解釈の見直しを表明するようになり、自民・公明両党で安全法制に関する協議を開始、7月に政府が与党協議の結論を踏まえ集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。
 2014年12月、衆院選で自民党が再び大勝、第3次安倍内閣発足。防衛相・安全保障関連法案担当相に中谷氏を起用、この本格的実現化姿勢をさらに強める。
 本2015年2月、集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定を法案化する「安全保障関連法案」の与党協議を開始。  同年4月、日・米両政府の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会で「日米防衛協力のための指針」に合意。(注:国内法の改正案提示、国会審議、国民への十分な事前説明もまだされていない段階で、既に両国間で密約的に合意され、今通常国会中の9月、中国主席が訪米する前に法案を可決・成立させるとアメリカには約束済みであったから、審議打ち切り・強行採決は予定の行動であったということになる)。
 本年5月、自民・公明両党が安全保障法案の全条文案で最終合意。政府がこの法案を閣議決定。安保法案が衆院本会議で初めて本格的審議入り。
 同年7月、衆議院本会議で安保法案を強行採決で可決。続いて参議院本会議でも本格審議入り。
 この間「①他国からの侵略やテロ攻撃などを受けることに対する抑止力の強化や、②積極的な国際貢献につながるので賛成」とする与党と、「①紛争相手国を刺激し、かえって危険が及ぶ可能性が高まる、②集団的自衛といっても、所詮はアメリカの軍事政策との協調であり、日本の自衛隊はその盾とされ、うまく利用されるだけではないか、③後方支援が主というが、いざ戦争となれば先ず兵站基地が攻撃対象とされるのが軍事戦略の常識、④修羅場の戦場での交戦となった場合、何処が安全などといった選別は難しく、そのゆとりもない、⑤国際的にも、日本は平和主義を放棄し、戦争のできる軍事国家に転換したと受け止められるマイナスの方が大きいので反対」とする野党との間で論戦の攻防が、とはいえ与野党ともに、根本的世界平和の探求や国家理念としての軍事強化の是非論議より、末梢的な予測事案発生時の対応や表現語句に主体を置く駆け引きのやりとりばかりが空しく展開された。
 審議が進み、その具体的事例に対する対応の曖昧さを民衆が知るにつれ、国会議事堂周辺や各地での反対デモが連日数万人規模で行われ、激しさを増していったし、主要新聞の世論調査結果でも「反対」が約56%、「よく解らない」が約28%、賛成は僅か約16%という状態にあった。
 ところが9月の裁決が予想される日の直前の各マスコミの世論調査結果によると、強行採決の結果を予想したのか、空しい抵抗と諦めたのか、裏で何か特別な配慮があったのか、なぜか急に「賛成」が増加し「反対」に接近するという数値が報じられることとなった。
 そして問題の本年9月19日、こういった国民の不明や不安の声に応えられることはなく、完全に無視され、野党の最後の抵抗も空しく、ついにというか案の定と言うべきか、賛否両論で問題の多い重要政策を決定する場合の常套手段とされる休日前のどさくさに紛れて、過半数を握る与党の数の力で押し切られ、参議院でも強行採決で可決、安保関連の一般10法案、つまり、

  1.   武力攻撃事態法改正案
  2.   重要影響事態法案(周辺事態法を改正)
  3.   PKO(国連平和維持活動)協力法改正案
  4.   自衛隊法改正案
  5.   船舶検査法改正案
  6.   米軍等行動円滑法案改正
  7.   海上輸送規制法改正案
  8.   捕虜取り扱い法改正案
  9.   特定公共施設利用法改正案
  10.   国家安全保障会議(NSC)設置法改正案

と、新法案の「国際平和支援法案(恒久法案)」が付け焼刃的に付加され、一括して承認、成立することとなった。

 その直後の世論調査では、どうせ無駄な抵抗なら勝ち馬に乗ろうといった愚集心理が働いたのか、日本国民の変わり身の早さなのか、先読みや深読み能力の乏しさによるものなのか、逆に「賛成」が若干ながら「反対」を上回るということや、安倍政権の支持率約43%はこの前後で1%程度の低下に留まり、大きく変動することはなかったとするデータや、民衆を煽った感情的なデモ行動に対しては「あまり好感が持てず、実施的効果も期待できないパフォーマンスにすぎないとする意見が50%近くもある」と報じた新聞社もあり、可決の前後で各マスコミの論調に変異やバラツキが生じたような感もする。

(2)安全保障関連法関係の国会の対応についての所感

 これらの各法案について、個別にその善悪を評価しコメントするにはあまりにも分野が多岐に渡り複雑な上に、日米間での軍事最高機密に触れることもあろうし、全ての真実が国民に公明に知らされていない面もあり、本稿の紙面ではとても記述し難いが、筆者なりのいくつかの所感を述べると、
 

  1.  第2次世界大戦の早期終結を英断された昭和天皇の終戦詔勅の痛切な「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、国体の安泰と国民生活の平穏のために、恒久平和を祈念し、進んで太平の世を開かんと欲す」との崇高な御心と、敗戦体験からの厳しい反省に立ち、恒久平和の希求、非軍国主義、民主主義国家としての再建という強い決意をし、戦争放棄と明記した平和憲法を戦後70年にわたって厳守してきたわが国が、その基本的理念や方針を大きく後退・変化させ、憲法条文の拡大解釈などといった姑息な手段で、他国に対する攻撃的軍隊でなく、専守防衛のための治安機構であったはずの自衛隊に、集団的自衛権の行使といった抽象的なまやかしの法改正と屁理屈で、海外に武力をもって派兵させ得る道を拓いたということは、後世に残る日本国としての歴史の重大な変革と転換期になり、国際的な一般常識としては、日本は、世界の恒久平和を希求し主導する平和主義国であることを放棄し、再び軍事国家に転じた、真に自主独立の主権国家でなく、アメリカと一体となった主権在米の従属国の一つであることが一層明確になったと受け止められても仕方なく、遠交近攻、近隣の中国、ロシア、北朝鮮や韓国までも刺激し、それなりの対抗姿勢を強めさせる口実を与え、領土問題の解決をより複雑化し遅れさせ、日米の密接関係に揺さぶりをかけるといった彼らの思惑にも嵌められたといった点では、プラス面よりむしろマイナス面の方がやや多かろうと考える。
  2.  中、ロ、北朝鮮の昨今の対日姿勢には不快さを感じるが、彼らも現段階では本格的に日本に軍事進攻を仕掛けてくる気などなく、それは実際上国際社会の目もあり許されず不可能であるから、外交戦略上の脅しや揺さぶりで経済的支援を求めているに過ぎないので、それに乗せられて動揺することは好ましくない。
     事実、今回の日本の国会争乱と決定については、世界各国の全般的受け止め方としては、日本の国内問題であると冷静に受け止め、静観の姿勢をとっており、むしろ日本をパートナーとしたアメリカの今後の世界戦略への関心の方が強いようだ。
     中国やロシヤ、韓国は、日本が直接軍事的脅威になるとは考えず、彼らも日本より、今後の日米関係とアメリカの出方の方を注視している。
     アメリカは、今回の日米同盟関係の深化に対して、従来から望んでいたこととの真意はともかく、表だった歓迎の意は表明せず、日本国内の平和主義の闘いと淡々と論評しており、日本のことより中・露の反応の方を懸念しているようであり、アメリカの軍事戦略への同調と協力の望むが、日本のいざの軍事的緊張や危機に際して、日本が期待しているように、自己が多大な犠牲を負ってまで、本気で日本を助けてはくれないであろうと考える。なぜならアメリカは、不利な戦いは挑まず、自国の経済的メリットがない戦いには手を出さず、イランやキューバへの対応の急転換が示すように、情勢の変化に応じて変節することを恥と考えないエゴでドライで狡猾な国であるからだ。
  3.  安全保障関連法は、いくら自民党などの与党や安倍内閣が、世界平和への積極的な貢献、国際協調、多国間の安全保障同盟関係の構築による集団的自衛権行使での日本の防衛体制の強化になるなどと奇麗事で繕っても、その実態は、主たる盟約国がアメリカであり、アメリカの従来からの要求に応じ、その思惑と国際政治・軍事・経済戦略に沿って、アメリカの主導で、アメリカの利益優先で発動される事態に対処し得るように、国内の法体制を改正・整備しようとするものであることは間違いなく、決して安倍総理が強調するような、日本の安全のために、他国が日本を守ってくれるためだけのものといった都合の良いものではない。
     日本が独立主権国として、自国の安全と防衛のために必要だからと、独自の判断で、独自の武力だけで、固有の領土の奪回や、領海侵犯への対抗の軍事行動を起こそうとしても、盟約国との集団的自衛権の行使が原則だから、独断専行の単独行動は認められず、事前の協議と合意が必要であり、非合意で自制を求められると、勝手な自発的単独行動は取り得ず、もしそれを無視した単独行動の結果の責任は、日本が単独で負わねばならないということになろう。
     逆に、盟約国からの集団的自衛のためだからと自衛隊の出兵協力要請があれば、そこは危険な戦場だし、日本の利益や危険とは関係ないから協力派兵は出来ないと拒否したり、安全な場所での後方支援だけならなどといった都合の良い我侭な選択がいざの緊急切迫事態時に通用するとは到底思えない。
  4.  この法案の提出、国会審議以前から、もう既に日米間で密約がされていたのか、着々と米軍と自衛隊との共同軍事演習で敵前上陸の訓練が実施されていたり、具体的な協約書類が準備されていたことが曝露され、それが最高軍事機密事項という大義名分で秘匿されてきたこと、一連の法制化や国会審議の手続きや遂行の手順が全く逆で間違っており、それでは国会は、民意を代表して国家の将来を考え真剣に審議する立法機関というより、一生懸命に討議しましたという形式をとった茶番劇の舞台、事後承認のセレモニーでしかないこと、「民は由らしむべし、知らしむべからず」という格言を曲解し、国民の知る権利を無視した公明さを欠く非民主儀的行為であることなど、卑劣で、為政者への不信感を抱かせる愚行であり、日本の議会制民主主義の未熟さを痛感させられた。
  5.  先に述べた日米共同軍事演習でも、戦略の立案や戦術の指揮・命令は全てアメリカが握っており、日本の自衛隊はその手先の足軽隊か二軍扱いでしかないことが明白になったと感じたこと。
  6.  安保関連法の改正が憲法改正論議より先にされたことも、物事の進め方の手順が何かにつけて日本は逆だと感ぜしめたが、それにしてもこのような国家の将来を左右する重大な案件を、前記したように本年の5月の衆議院での審議入りから僅か5ヶ月間の短期審議で両院可決に至ったという拙速さと、国民へのわかりやすい説明不足、マスコミや一部の御用有識者がすっかり安倍総理に抱き込まれ、言いなりに動いたことへの失望である。
     情報の共有・均質化がないと、国民は正しい現状認識が出来ず、従って正しい理解や判断、正しい行動も出来なくなる。

(3)結論…今後の日本の行方はどうなる?

 商取引でも、急ぎの成約と甘い話、威圧で押し付けたことの結果には碌なことないとされるが、これはその場凌ぎで曖昧に処理されたこと、拙速制定した規約や不平等な条約などについても通じることであり、そういった取り決めは好ましくなく、守られず後日に禍根を残し、争いの種となる。またこれで一度形成され定着してしまった条約や、慣習、イメージ、先入観、誤解などを根本的に覆し払拭して正しく改めることが並大抵でないこと、そのためには成約時に要した日時や努力の数十・数百倍の年月や時間、苦労と努力と費用が必要であることは、過去のこういった過ちが原因で現代の世界の国境争いや民族の対立といった混乱や争乱があることなど、幾多の歴史的事実が立証する。今回のことで折角これまでの努力で築き上げてきた平和を愛し信頼できる日本という信用やイメージが崩れ、「日本は再び戦争のできる国」になったと思われるのは誠に残念なことであり、相当な覚悟が必要となろう。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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