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自然界に学ぶ共存・共栄の知恵

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公開日付:2015.07.24

(1)自然界との共生から多くのことを学び進化してきた人類

 世界的に混沌とし将来の見通しが不鮮明な現代、道に迷った時は「原点回帰」ともいわれるので、今一度、フランスの教育家ルソーの「自然と歴史は最も良き教科書である」という至言を思い起こし、謙虚に学び直すことも有意義であろう。
 美しく、厳しくもあり、常にさまざまに変化して止まない地球の自然環境が、そこに棲息する種々の動植物に、環境の変化に適応して進化し生存し続けるために与えた影響の大きさは計り知れない。
 とりわけ他の動植物より抜きん出て優れた頭脳を有する人類は、自然現象を鋭く観察し、これらから類推的発想を得て、機敏に対応する英知と技術を身につけ、熱を用いて加工したり、道具を発案し、言語や文字などといったコミュニケーションの手法を発案し、協力し合って組織的に働き、より効率よく大量に自然界の諸資源を収奪・活用し得たからこそ、他種族を支配して君臨し、更なる進化を遂げてきたといえよう。だから適度に耕された自然がカルチャの語源となったのだ。
 たとえば、コガネムシや蟻が獲物を転がしながら大きな獲物を運んでいる姿から車輪や大八車、自動車のような運搬手段を、川面に浮かぶ枯れ枝に乗って流れに任せながら魚を獲る鳥から船を、亀や蟹といった甲殻類から自分の身を保護する甲冑といった武装を、巣を張り広げて獲物を捕獲する蜘蛛から捕虫網や漁網を、空から自由に飛び回る鳥から飛行機を、空中を回転しながら種子を舞い落とし散らして種族の繁栄を図る樹木やタンポポからヘリコプターをなどといったように、自然界のさまざまな現象を鋭く観察し謙虚に学ぶことからヒントを得て、実に多くの便利なものを発案してきたのである。

(2)自然環境が民族の意識や人格形成に及ぼす影響

 地形や気象条件などといった自然環境が人類に与える影響は、こういった技術や便利な機械・道具の開発だけに止まらず、基本的な人間の意識や発想、価値観、基本的な人格の形成、生活態様にまで及ぶ。
 大きな大陸で広大な領土を有し、気温も温暖で地震や台風などの自然災害の発生も少なく、動植物や、食料資源、エネルギーや鉱物などの生産資源も豊富で、人口密度も低いし、基礎的な国力もあるといった恵まれた余裕のある自然環境の地域で育ち生活する民族の性格は、概して大らか、楽観的で大雑把、陽気であるが、反面、やや優越感が強く自信過剰で、苦難する他者への思いやりや配慮を欠き、独善的であり、不時の災害に備える危機管理意識や貯蓄性向が乏しく、それでいて、恵まれた環境を背景に、更なる勢力拡張を目指す覇権・支配欲が強い、進歩的・革新的な傾向を持っている。
 これに対して、狭い領土で人口密度が高く、四季の気象変化がめまぐるしい気候風土などといった厳しい自然環境の地域に生息する民族の場合は、概して環境の変化には敏感で、万一の災害に備える警戒心と危機管理意識が強く、注意深く、繊細で、貯蓄性向も旺盛、逆行に対する根気強い忍耐力、対応力に優れ、慎重で控えめだが、いざの土壇場に立たされると、意外なほどの粘り強さと反発力を秘めているが、反面やや消極的で保身・保守的、自己主張をはっきりとせず、他者の意見や判断を参考にして従うといった傾向がある。日本人はこの範疇に入る。
 ロシアや北欧諸国のように、たとえ国土面積は広大でも、気候風土や地理的条件が更に厳しく、広漠とした凍土が主体で食糧資源や産業資源も乏しいとなれば、人間の生存要件が制約されるので、寒冷さに耐えるための対応として、そこに住む民族の性格は必然的に、農耕型でなく狩猟型民族で、脂肪質の多い肉食・酪農製品を好んで食し、たとえばバルト海に面したエストニアが世界一の大酒飲みの国で、年間1人当たり平均飲酒量が約100kgと日本の3倍以上も飲むといったように男女共に酒が強くなり、同時に独裁的支配欲が強く、温暖で豊かな緑と食糧に恵まれた豊饒の領地を求めて南方に進出しようとする切実な欲求が潜在しており、概して進取の気性に富み、昔の北欧バイキングやアングロサクソン系のように攻撃的・侵略的になり勝ちで、中国大陸も、永年の国内権力紛争が続いた結果、北方騎馬民族系の漢民族が南方系民族を制した。
 歴史的事実からも、軍事や物質文明は北から南に波及し、精神文化は南方で発祥し漸次、西・北へと移行し普及するといったベクトルが働くとされる。
 常夏の南洋諸島のような、いつでもその気になれば自然の果実や魚類といった食料資源が得られる恵まれた環境、生活にメリハリや刺激が少ない地域に生息すれば、その民族も、自然と共生し、物事に拘らずのんびりと安楽に暮らせるので、近代的な物資的文化の進化が鈍くなる。
 こういったことは、南米エクアドル領のガラパゴス諸島のように、南海の中で孤立し他地域からの影響や刺激を受けないところで棲息する動植物は、世界でここだけといった固有種類が多く、太古から現代に至るまで、ほとんど進化していないことや、気温や天候の変化を避けて安隠と生活しよう洞窟に逃げ込んで生きる大山椒魚、人が潜って近づけない海底奥深くに棲息する深海魚の進化が見られないこと、また、大きく広い島や大陸で生息する動植物は大きく育ち、狭い小さな地域や島で密集して生息する動植物は、大きく育たず小さく、広大なユーラシア大陸系民族は大柄だが、小さな狭い島国に過密状態で棲む日本人は小柄であるといった「島の掟」という自然環境への適応法則にも通じるものである。
 人間は、周囲の環境や日常最も多く接する者(母親など)の影響を、最も多く受けて育つといわれ、家庭や地域生活環境、家庭での会食の仕方、住居の構造や住まい方が人格形成に大きく影響する。広大な自然に恵まれ人口密度が低いゆったりとした環境の下では、雄大で剛毅な人間に育ち、逆に、物質的には恵まれ便利だが、自然が少なく過密な都会では、視野が狭く、短気、他者を押し除け一歩でも先に進もうとする競争・闘争心と、自己中心、自己顕示的で落ち着きのない人間しか育たない。
 家屋の居住環境や住まい方では、心理学的に個体としての快適占有空間域である一人当たり最低30平米(約20畳弱。台所やトイレ、風呂、廊下などの共用スペースで、大人・子供も含めた単純平均値)を下回る狭い居住スペースで、各自鍵のかかる個室を有し、一家団欒の機会が少なく、パソコンやスマートホーンと睨みっこといった環境で育った者は、自己中心的で、孤独、人間関係が苦手で他者との協調性を欠くといった鍵っ子人間しか育たず、昔の田舎家やお寺の本堂のような広いゆったりとした家屋で囲炉裏を囲んでという一家団欒の共用スペースを有し、床の間や縁側といった一見無駄なようだが公私生活の緩衝地ともいえる有益な空間(ニッチェの)ある家屋で育てば、家族思いで、大らかで、誰にもやさしく互譲・互助の精神に富み、他者との協調性や人間関係も巧みな立派な人間に育つといわれる。
 食事の仕方においても、みんなで一つの鍋を突っつくといった雰囲気が大切であり、欧米では本来、家庭での食事のパーティーの会食でも、参集者一同が同じ部屋で食卓を囲んで揃って会食し、所謂バイキング形式で、大皿に盛り付けられた料理を、各自が全員に行き渡る量を配慮しながら、各自の好みと完食できる適量を考え、取り残しの無駄を排除して、銘々の皿に取り分けて食するのが通例だ。日本でも、昔の風習や庶民生活はこれと同じであったものが、貴族社会や豊かになった現代社会の弊害というべきか、近年では、その階級差別的風潮を引き継ぎ、銘々膳に、当人の好みや適量も配慮せずに、前もって盛り分けられた料理を、同席者との会話もせず、それぞれがメールやTVを見ながら黙々と食べ、残さずに無理をしてでも完食するとさっさと自分の部屋に引き籠もるといった変な風習が庶民家庭にまで浸透し、主流として罷り通ることとなった。
 その結果、土地でもお金でも持ち物でも、全ての面で「これは自分のものだ」と独占的に囲い込む習性が身につき、独善的・排他的で互譲・互恵の心、他者と会話をし交流・共働・協調することが苦手な社会適応力のない、限られた小さな仲間以外とは付き合えない若者が増加することとなってしまった。
 このように自然から学ぶべきことが多いとはいえ、自然界には弱肉強食で自然淘汰の適量維持を図るといった冷徹な厳しい面があると同時に、生態系秩序保持のためのサイクル機能や共生・共存・共栄といった好ましい点があるので、この善悪の両者を見分けて活用する判断力をこそ学ばねばならない。

(3)自然に親しみながら学ぶには?

 そういった面からは、近年、TVの見知らぬ街の探訪番組に刺激されてか、各地で任意グループでの街歩きや山歩きが盛んだが、中には無目的な物見遊山での時間つぶしで、ただ自然と親しめ、初めてで珍しく面白かったというだけの参加者も多いようであり、これでは自然から学ぶことは少ない。
 同じことなら、ただ漫然と歩いて疲れるのでなく、事前に目的を明確に決め、多少の予備知識を得て現場に臨めば、単に映像的に景色を歩いて「見る」だけでなく、ちょっと意識して「観(察)る、診(察)る、看(破)する、洞察する(先を見抜く)」こと、興味のあることや疑問点についてどんどん質問することとなって、自然環境や周囲の環境から、楽しみながら学ぶことがもっと多くなり、積極的参加意欲や興味も、知識も増大するであろう。
 すなわち、これこそが筆者が常に主張する「心で歩き、足で観る」こと、「学問は新鮮な興味を持って質問する“学問”」であるということの大切さである。
 また、「学ぶ」という言葉は、良き手本を注意深く観察して謙虚に見習い、そこから自分なりの新しい発想やヒント、技能の勘所を見抜いて習得するという「真似る」が訛ったものといわれ、これは日本の伝統的武道や芸能の学習法である「守・破・離の原則」、即ち、「守」とは基本原則や知識・技術を謙虚に忠実に守ること、次に「破」は、それを突き破った応用動作が無難にこなせるように練習を重ねること、最後の「離」は、さらにこれを引き離した自分なりの独特の創造的知識や技能を見出し身に着けることに通じるものである。
 そのためには、同じことの繰り返しで面白味のない基本の習得を馬鹿にせず、さりとて「ま…マンネリにならないよう、常になぜそれが重要か、どうすれば更に良くなるかを考え、新鮮な興味心を忘れない」こと、「ね…粘り強く諦めない、さらなる改善・向上策を研究する」こと、「る…累積的な研究努力を根気強く続けて自己独自の境地を見出す」ことが肝要である。

(4)厳然たる自然界の原則

 平素は穏やかで美しい大自然だが、時には人知を超えた無限の可能性や、恐ろしさ程の威力をわれわれに味合わせるが、このことは東日本大地震・津波の想定外の苦い災害体験からもご理解願えよう。
 これは厳然たる大自然の摂理を軽視し、核放射能漏洩被害の処理対策も不十分な状態でありながら、科学技術万能や、商業主義優先、好ましい経済発展の原点を忘却した人類の驕りや行き過ぎによる地球自然環境の秩序破壊への反省を求める自然からの警告や試練と受け止めるべきではなかろうか。
 自然界の大原則としては、

  1.  適者生存の原則
      …自然界で生息する人類も含めたあらゆる動植物はすべて、自然界の摂理の偉大さや、その原則を尊重し、これに謙虚に従い、それに適応した生き方をしないと永続的に生存や繁栄を許されず不可能だから、刻々と変化する環境の変化への適応努力と能力を身につけ進化を図ること。これは政治・経済・産業活動・企業経営・人間生活など、すべての面で重要なことであり、「事業は環境適応業だ」といわれる所以もここにある。
  2.  適量安泰の原則
      …自然界が生存を受け入れられる量には供給と需要の関係から自ずと限界があり、それを逸脱して過剰になれば共倒れになるので、必ず間引き現象が生じる。
     現代の地球経済の混乱や閉塞感、豊かさの中での困惑と不安定感などは、全てこの点に根本原因があり、これを根本的に解消しない限り混乱や争いは絶滅し得ない。これには自然界の供給力や生産能力と、生活者欲望の充足、消費という「供給と需要の均衡」の必要性や、過度な貧富格差の是正などもバランス感覚の是正といった意味から含まれる。
     需要と供給との均衡が、人口の急速な爆発的増加や少子化による激増、災害の発生、阿漕な欲望の過熱、実需が伴わない投機的需要などで崩れると、物価の高騰や逆のデフレなど、さまざまな混乱と弊害が生じ、不満が募り、分捕り合いの競争が激化し、秩序が乱れて、不安定で安心できない荒んだ社会となる。
  3.  生者必滅の原則
      …あらゆる生命体には天命ともいえる寿命があり、永遠の安泰・生存は許されず、経済大国や時代を牽引する花形産業、経済を主導する企業にも、いつかは寿命が燃え尽きる時期が訪れるので、マンネリ化の排除と次世代に引き継ぐ新陳代謝による活性化を図る必要がある。
  4.  弱肉強食の原則
      …冷徹な弱肉強食も、ある程度は許される適量安泰維持のための間引き手段であり、このことで有力な強者が、より強い後継者を育て、バトンタッチして各種族の活性化と存続発展を図るのだが、さりとて皆殺し根絶をすれば今の欲望は満たせても明日の餌物が無くなってしまうので許されず慎むべきだといった節度は、無敵といわれる百獣の王であるライオンでさえ理解し守っていることである。
  5.  恵み分配公平化の原則
      …自然界は、その恵み(富や恩恵)の分配の公平さ公正さにも配慮しており、特定分野だけを優遇し、恩恵が偏重することを避け、たとえば巨大で力強い動物は走力が鈍く、小さく弱い動物には逃げ延びるため走力に優れ、危機察知の視力・聴覚が鋭敏、物理的体力では劣る人類には他種より優れた知能を与えるといったように、万物それぞれに一長一短を持たせてバランス良く配分している。
  6.  共生・共存・共栄の原則
      …自然界はこういった原則を遵守するなら、多様な動植物や種族の適量安泰を保証し、共生・共存・共栄を可能にもしてくれている。

(5)動植物の生存の知恵

 知能の発達では人類に数段も劣る動植物でさえ、阿漕な独占的支配欲を抱かず、自然界の摂理に従い、秩序を守る節度を弁えている。
 動きが鈍くのんびりと一日のほとんどを木の枝に逆さになってぶら下がって寝ているので、人間の尺度では無能で怠惰と思えるナマケモノだが、これは外敵に対する攻撃的反抗能力を持たない動物なりの専守防衛の知恵なのであり、この外敵に目立たない姿勢を保つため、体格の大きさの割には小食で体重は軽く、それを完全消化し排便量も少なく地上に落とさず、雉も鳴かずば撃たれまいで、大声で吼えることもなく、危機管理は180度回転する首と360度が見える眼という特性を有して万全である。ワニは、巨体でも水中を静かに泳いで音を立てず獲物に近づき、捕食する顎と歯の力強さは牛を丸?みにするほど強力だが、陸に上がってはその特性が発揮できず不利なので、決して上陸して深追いしない。
 背が高く伸びる樹木は落葉樹が、背の低い中・低木は、高木の隙間から差し込む太陽光を出来るだけ多く吸収するために広葉の常緑樹が多いといったように樹木でさえ光合成を防げない他者への配慮と互恵を心得ている。
 このように注意深く観察すれば、自然界は知恵の宝庫、最も良い教育者ともいえよう。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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