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もはや奉公民従、武力戦争の時代ではない

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公開日付:2015.06.26

 目下国会で、将来の国運を決定づけ国民生活にも重大な影響を及ぼす、崇高な平和憲法の根本理念にも深く関係する戦後最重要な改変ともいえる、国家安全保障諸法案の改訂問題が「“鋭意”?」審議されている。
 しかしその実態は、肝心な国家の未来のあるべき姿や根本理念、基本方針などにまでは鋭く深く踏み込まれず、与野党共に、無味乾燥な法案改訂の語句表現にばかり拘って、不毛な論戦をただ延々と長時日かけて手続き上のセレモニーのように続けられているようで、国民には一体何が、どういう場合に、どのように改められ、その結果、どんな影響が生じるのかが具体的に説明されておらず理解し難いので、筆者はあえて鋭意でなく、ただ長々と不毛な論議が続く“永易”な審議と称したい。
 ただ長時日をかけただけでは決して慎重で有意義な審議が行われたとはいえず、その論議・検討の過程とその結果の内容こそが重要なのだが、本当の民主主義議会政治やディベート(肯定と否定側とに分かれた対決的討論方法)に未熟なわが国では、中央政治から地方行政に到るまで、どうもこの種の審議手法が、根回しやロビー外交の段階で得られた感触から、初めから落としどころの結論ありきであり、その後の大切な公開討議は、為政者が期待する結果に導く手続きと、国民に正規の方法で慎重審議をしたと印象付け、後から不正手段と追及されないための責任回避のセレモニーと化している。
 わが国の国民性としては、多数の圧力で持論を押し通し少数意見を無視することが多数決の民主政治、優れた政治手腕と受け止められたり、多勢に反論したり群れに入りたがらない者は非協調的異端者と敬遠され仲間はじきにされ、黙殺されたり、権力を有するお上には弱く、強きにおもねて反抗しないのが従順で良いこと、声が大きい(音声の強大さだけを意味せず、愚衆でも多勢の反応を正義とみるような質的レベルやマスコミなど情報発信・影響力の強い者などを意味する)者が民衆を主導するなどといった風潮が蔓延し、没個性、抑自己主張が歓迎されがちであるが、たとえ少数でも、傾聴に値する貴重な見解(少数異見)を尊重する寛大さこそが真の民主主義であり、偉大な器量のある指導者といえるのではなかろうか。
 近年の歴代総理と比較して安倍総理は、就任早々から危険な賭けに挑戦した決断力、国内外の難題に積極的に取り組もうとする勇気を示したこと、表面的印象だけで判断しがちな愚衆と、勝ち馬に乗って利を貧ろうとする財界の支持を得ていることは一応評価できようが、昨今は、与党の圧倒的勢力の一方で、まとまりの悪い弱小野党、強力な政治的ライバル不在という環境に驕り、マスコミを抱き込み、功を焦った独断専行や、美辞麗句による発信量の多さの割には、その内容が抽象的で具体性を欠くこと、アベノミクスの成果を自画自賛するが、国民の大部分はその成果を実感してないこと、国体の根本を成す憲法を、数の論理で圧して解釈拡大だけで実質的に骨抜きに改定し対外軍事的影響力の強化を図ろうとする右傾化、狡猾なまやかしの政治姿勢などといった暴走ぶりが危惧されるようになって来た。
 安倍人気に乗っかっているので面と向かっては反発しないが、その独裁・独走を嫌い、決して一枚岩とはいえない巨大与党の自民党と安倍政権に、安保法制の大転換という重大問題を、はたして野党議員たちも有識者たちも国民も、我関せずで安易に委ねて良いものだろうか?このままでは勢いに乗って憲法第96条(憲法改正の要件)から更には第9条(戦争放棄、軍備及び交戦権の否認)の改訂で海外での武力行使可能にまで突っ走りかねないので非常に危険である。
 アメリカの元国家安全保障会議(NSC)のメンバーで現在も外交問題評議会上級フェローである国際軍事問題の権威モートン・ハルペリン氏もこの点を懸念し、「日本の安倍総理がアメリカの国際軍事外交戦略に理解を示し、『アメリカの集団的自衛権行使容認を行わないと日・米問題が揺らぐ』といったような趣旨の発言を国内的にしているようだが、それについては、日本がアメリカとの協調姿勢を示してくれることは結構なことで、アメリカとしては、その必要はないとは否定しないが、現時点では米中、日・米・中のデリケートな関係に影響する微妙なことでもあり、アメリカ側から圧力をかけてそれを早急にと要求したことではなく、集団的自衛権行使は、国際情勢を睨んだケース・バイ・ケースで判断・処理すべき問題と考えており、緊急の最優先重要事項ではなく、貿易問題の方が優先すると考えている」と本音を漏らし、日本を牽制すると同時に、阿吽の呼吸でデリケートな国際軍事・外交の奥底が読めない安倍外交の未熟さを婉曲に皮肉り、批判をしているのである。
 日本を代表する経済学者で、日本以上に世界でより高名な東大名誉教授、昭和天皇やローマ法王ヨハネ・パウロ二世にもご進講された宇沢弘文先生も、「過去の歴史を振り返っても、各世紀の末期になると必ずといっていいほど、その世紀の世界を主導してきた大国や考え方や政治・軍事・経済・社会的諸事項の進化に披露からの歪が生じ、その弊害が露出するに及んで、それを打破し、新たな道を模索する「レールム・ノヴァルム(Rerum Novarum、ラテン語で新しいものの意味で、革命と訳されることが多い)の気運が高まるが、今世紀への転換期では、資本主義の弊害と社会主義の幻想、武力戦争の予防と絶滅、恒久的世界平和の探求が主要課題となった。
 従って今更、軍備強化の競争や軍事戦争への参加是非を云々すること自体が、世界から歓迎・支持されるはずがない時代遅れの発想や認識であり全くナンセンスである。だからこんな空脅しに乗せられて軍事拡大競争に付き合ったり、怯えて対抗姿勢示すことは相手の思う壺にはまるだけだから、その必要はなく、専守防衛体制だけは整えて無視し、世界の多数国を味方につけた外交・情宣で対することの方が賢明というものである。アメリカが、中国の日・米離反を策する罠に気づかない日本のこの辺の読みの浅さや外交の未熟さを憂慮する所以もここにある。
 むしろ日本こそが他国に先駆けて、未来の世界や人類、国家のあるべき姿の模範を示し、核軍備拡大競争や戦争反対、世界恒久平和実現を表明し、その主導役を果たすことこそが、世界から信頼・支持され、国策的にも有益であり、それは単なる理想論ではなく、強い信念さえあれば決して実現不可能なことでもない。
 ましてや集団的自衛権行使で、刻々と状況が変化する修羅場の戦場で、ここは安全な後方兵站地域だから出兵OK、ここは危険な第一線だから派兵はNOなどといった選択や決断、本国の訓令待ちなどといった悠長な自国都合だけの勝手な行動が連合国軍の一員として許されるはずもなく、それが通ると本気で考えているのなら、狡猾なアメリカの本質を見抜けていない愚かなことだ。
 「本来は厳格な保守的姿勢で尊重すべき国家の基本法である憲法の、都合の良い解釈の拡大や部分的改定で、自衛“隊”を他国派兵も可能な攻撃的“軍”にすり替えようとする姑息なまやかしの政策の改悪などは問題外だ」と述べられ、日本が今後の辿るべき針路まで明確に示唆されている。
 民主主義国であり自由民主党の党首でもありながら安倍首相は、本年度当初に、世論調査では国民の約6割が反対の意思表示をし、賛成は2割程度でしかなく、その他はよく判らないと回答し、連立与党内にも慎重論が根強く潜在し、野党は反対といった状態にあるにもかかわらず、与党圧倒的多数という力の論理で押し切れるとの自信からか、安全保障政策を「諸外国の脅威に切れ目なく対応するため」にという名目で大転換することを閣議決定し、「日本と世界の平和のために、私はその先頭に立って新しい時代を切り開く覚悟だ」と大見得を切り、目下、その国会審議が進めれれている。審議を通し安い条文の解釈から改定し、その後で憲法の本格改正にもって行こうという魂胆であろうが、本質的な国家の未来像や理念より、大切なのは目先の国会運営と成果だけということであろか。
 それにしてもわが国の為政者や指導的立場にある者の行政手法やリーダーシップのあり方は、全ての面で順序が逆になっており、こういった過った手続き手法が中央から地方、上層から下部の官庁まで、更には民間の企業経営にまで浸透し、似て非なる未熟な自由民主主義国家や企業、社会となった感が強い。
 国家から地方行政、ビジネス、家族旅行、友人とのデートなどまで、何事につけでも、もの事を成すための正しく合理的な進め方の手順は、

 先ず第1に、「正しいコンセプトとビジョン「全体を貫く総括的で統一的な主旨や概念、視点、基本的理念、考え方、見通しなどの概要の設定と明示・公開」、つまり「どんな思いから、何を、どんな目的で」といたことを真っ先に明確に設定し、それを説明し、国民の理解と信頼、賛同と支持、協力を得ることである。
 これがあってこそ国民も部下も、強制しなくても、共鳴し、協調・協力し、その実現に参加・努力しようという気になり行動を起こすという、トップダウンでなくボトムアップの真の民主主義であり、その信託に応える公僕としての為政者や官僚、良き指導者であろう。
 たとえば、家族旅行をする場合でも、いきなり父親から「明日、旅行に行くから皆黙って俺について来い」といわれても、どんな目的で、どこへなどといったことが事前に説明されていないと、それが純粋な善意の誘いであっても、「突然そんなことを言われても…」と困惑し、「はい。どうぞよろしくお任せします」と素直に受け入れ従うことは出来ないであろう。ましてや「イエスかノーかの意思表示をすぐに」と迫られ、「文句を言わずに言わずに従い、喜べ、感謝しろ」というのでは、判断に苦しみ、不満が生じ、反発もしたくなるというものであろう。
 封建的で独裁的なら「お上のいうことだから仕方がない」で済んだかもしれないが、情報の伝達手段が多様化し、国民の教育水準が高まった民主主義の現代、更には民衆・人道主義的国家・社会を志向すべき今後は、「奉公民従主義的」なこういった手法や、武力により威圧的な支配は通用しない。
 しかしわが国の現実では未だに、トップが得意なことは独断専行でさっさと進め、不明で困難・不得手な事項だけは有能な官僚や部下任せで丸投げし、協力・服従を求め、それをもって権限の移譲とか参加的運営と考えているようだが、実際は、権限の移譲ではなく責任の分散や転嫁による自己保身策でしかなく、期待する結果は既に決めており、諮問機関や専門検討部会などは、為政者の意向に従う御用有識者やイエスマンで固められ、株主総会や全体会議などは、愚衆を手なづけ抵抗分子を懐柔し、賛成裁決を得るための手続きとしてのセレモニー化し、そういった策略に長けた者がやり手の実力者と受け止められる風潮があるが、これらから根本的に改めないと成熟した真の民主主義は定着しない。

 第2は、この第1の正当性を裏づけ自信を強め、説得力を高めるための、科学的・論理的な「情報や資料の独自の努力による収集と分析と公明な開示」、つまり情報公開と共有化である。
 正しい判断や行動は、先ず正しい現状の認識と将来予見があってこそ得られるものであり、この認識→判断→行動、リサーチ・ファースト&フォローイング・アクション(先知後行)の手順を間違い、逆であってはならない。
 湾岸戦争に後方支援で参加したときも、日本は独自の外交や努力による情報収集力が劣っており、アメリカから受ける情報を信じ、それに乗せられた誤った判断と行動でフセイン政権打倒に間接的ながら荷担したといえるが、戦争はそんないい加減な情報や動機で起こしてよいものでないことは、過去の体験からも痛感したことであろうに、日本は歴史から何を学び、その結果の責任は誰が、どのように取ったのであろうか。

 第3は、これに基づき、具体的に、何を、何処までやるといった「適正な目標の設定と周知徹底」である。
 目標は成功に導く磁石であり、明確な目標を定めた努力や練習でないと、国家運営も事業経営もスポーツの練習でも、効果的にいい成果は得られない。これが目標による管理の長所であるが、ここでは終局の目標と、それに至る過程での段階目標をちょっと努力と工夫をすれば実現可能と感じさせる少し高めに設定することが潜在能力の導き出しにも連なり効果的であり、着実なステップを踏んで小さな成功連続を積み重ねることが肝要である。

 第4は、これらに基づく適切で具体的な戦略・戦術などの「綿密な計画の確立」である。豊富で正確な情報、科学的・論理的根拠に基づいてこそ、実現可能な適切な計画が立案でき、それを迷わず自信を持って遂行できる。
 わが国では、トップの地位を得るものは、確たる哲学的理念などの論理性や管理実務遂行の真の実力者、創造的改革型の所謂切れ者より、保守的で無難な調整型で、浪花節的で情緒的受けの良い者が概して長期にその座に君臨しえる傾向があり、やり手は敬遠されがちで、国家や企業運営の根幹を成す魂ともいうべき最も肝心な理念、基本方針、社是・社訓・社則から、長期経営計画、具体的営業戦略、自社製品の販売方法、実務遂行マニュアルまで、その構想をまとめて草案を立案できず、外部の有能な専門家や有識者に委託して原案を作成してもらい、それを叩き台にして、無能な素人が検討し修正するので、モノは出来ても魂入れずで、すっかり骨抜きの得体の知れない妥協の産物になってしまうことが実際に多いが、これを有能な専門プロに失礼なことであると思わず、その真の功労者ともいうべき有能者は、陰の存在として使い捨て放逐され、成果は自分の功績と吹聴するといったケースがほとんどだが、これも全く順序が逆で異常なことといえよう。

 第5は、計画の実践遂行と目標の必達成であるが、ここでは進捗状況の途中確認と必要に応じた計画の微調整も配慮すべきだが、朝令暮改的頻繁な修正や大幅な転換は、混乱を招き信頼をなくするので好ましくなく慎むべきだ。

 第6は、「結果の確認と評価、反省」であり、この反省結果を次ぎの方針や目標、計画の設定に加味して役立てるといったPlan・Do・Check・Actionの連続的繰り返しが、継続は力なりで、大目的を実現させる上で重要である。

 このように考えると今次の安倍政権の安保政策の大転換への取り組み方には、国家の未来像に関する哲学的理念やビジョン、基本方針などが抽象的で、具体的に明確にされていないこと、平和を希求するというなら、平和憲法の理念は尊重すべきであり、安保政策の改訂による対外軍事影響力の強化とは相容れないので納得できず、その政治哲学理念が定まっていない事、右傾化が強まりつつあることへの危惧の念と不信感が払拭できないこと、対外軍事影響力強化に踏み切ろうと判断した安倍政権の、国際情勢の現状認識と将来展望の説明が不十分なことと、その判断に疑問があること、アメリカ迎合、大企業・富裕者優遇、鷹派の姿勢がより鮮明になったことへの不安、圧倒的優勢の与党といった力に頼る驕りと、国民の声なき声に謙虚に耳をかさない独断先行の暴走が懸念されること、与党連合内にも反対意見や慎重論があることにも、もう少し謙虚さを持って対処して欲しいこと、有識者、とりわけ法務専門筋からの憲法違反の見解や警告は大いに尊重すべきであり、黙殺したのでは国体が根底から揺らぐと懸念すること、諸野党の見解や足並みが揃わず、その審議における追求に核心を突いた正鵠を得ず鋭さを欠くことない、与党独走を牽制する勢力が育っていないことも不甲斐ないことで残念なかぎりであるが、小数たりとも傾聴に値する貴重な見解は受け入れるぐらいの寛大さが望まれ、それでこそよりよい解決策が見出されると考えること、現代の地球環境を思量すると、最早「奉公民従事の時代」でも、「大国のエゴや武力の威圧で国際的な難題が根本的に解決できる時代」でもなく、社会・共産主義も自由・民主・資本主義も、軍事政策も経済政策も、抜本的な修正を余儀なくされる時代になっていることを認識すべきことなど、まだまだ時間をかけて慎重に検討・論議すべきことは多く、不意打ち見切り強行採決といった将来に禍根を残すような愚行は厳に慎んでいただきたいと強く念じ、土壇場に追い詰められた時の日本人の良識復元力を信じたい。なぜなら世界から「秩序正しい風格あるモデル国家」といわれるような誇りある日本でありたいからだ。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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