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揺らぎだした中国経済の行方

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公開日付:2015.05.29

(1)「温故“奇”新」の現代中国

 生命科学分野の研究で、「人類も含めた諸生物は、従来、数万・数億年の長期間をかけて新陳代謝を繰り返しつつ徐々に進化(Metabolize)してきたように考えられてきたが、最近では、その間にもホップ・ステップ・ジャンプといったリズムの変化があり、長い期間でほとんど目立った進化を示さないエネルギーの蓄積期と、比較的短期間で、何らかの刺激を受けて、ある時突然に見違えるような画期的な変容・進化(Metamorphic)を遂げる時期があり、これは朝顔の開花、小魚のようなオタマジャクシから手足が伸びて陸に上がり蛙となること、水中のヤゴが空を飛ぶトンボに変身することなどからも理解できることである」との説が主流になったというが、これは国家や事業の発展においても当てはまることであろう。
 現在の国際的正式名称での「中華人民共和国(以下中国と略称)」、第2次世界大戦期に国内政争があり、毛沢東が率いた共産党系が蒋介石が率いた国民党政権を台湾に放遂し、その終結後の1949年に成立した単独政党共産党が支配する社会主義体制の国家であるが、古代中国からの通しでは、今から4~5千年前の石器時代からの世界で屈指の歴史を有する、黄河中流域に住んでいた漢民族が主体となって開いた国で、アジア大陸東部地域の大分を占める広大で肥沃な領域を有する恵まれた環境もあって、当時から既に世界最大規模の国であった。
 その後も、ほぼ400年周期とされる東西文明交互栄枯盛衰の波の影響を受けたり、国内争乱の春秋・三国時代を体験するなど、常に権力闘争を繰り返し、それを易姓革命(天子は天命を受けて治世の任に当たり、不徳があれば別の有徳者が天命を受けて交代するもの)と正当化するなど、幾多の混乱や明暗・浮沈はあったが、国家の歴史では一貫して、その国名が示すように、「われわれ漢民族こそが天子を頂点として世界の中心として君臨し、華(繁栄)する最優秀民族・国家である」という「中華思想」の下に、周辺の少数民族を支配下に併呑・統合したり、近隣弱小国に、皇帝に敬意を示し貢物を献上すれば、それらの国の守護を引き受け通商権も与えるといったように、常に尊大で独占・独善的な覇権支配欲が強く、プライドの高い国であった。
 もちろんこれは古代中国の歴史のことであるが、こういった傲慢な中華思想や意識は、現在の中華人民共和国になっても、一部自由主義的経済体制を採用する一国二制度導入に変革し、周辺諸国の自主独立尊重、善隣友好、平等互恵、世界各国との協調と全方位外交を標榜しているとはいえ、その心の奥底には依然として根強く存在しており、幾多の艱難辛苦や雌伏の時期、浮沈、変節の歴史を経て現在にまで、しぶとく変幻自在で命脈を保持してきた国なので、芯が強く、なかなか本性が見抜き難い、奥深いと同時に強かで不気味な国であるともいえる。

(2)巨大な再興隆国家中国の現況

 現在の中国の国土面積は9,597千キロ平米で、ロシア、カナダに次ぎ世界第3位、世界陸地面積の約7%を占め、アメリカと肩を並べる広大さ、人口は13億2,400万人で世界第1位、全世界人口の19.5%、すなわち5人に1人は中国人が占めている上に、肥沃で広大な食糧・産業生産地、豊富な天然埋蔵諸資源や希少金属、豊かで安価な労働力などといった環境条件にも恵まれて、世界の生産工場としての投資も相次ぎ、経済規模においてもGDPでついに日本に追いつき、あっという間に追い越し、アメリカに次ぐ世界第2位にのし上がる急発展を示し、目下のところは世界一の経済成長率を誇示し、世界経済の牽引役としいて脚光を浴びている。
 国際社会・経済における中国の存在感は、自動車の需要が世界第1位、携帯電話の生産・販売も、海外旅行客や、その買い物消費支出額も、一人当たり平均170万円ともいわれ、俗に「爆買い」と称されるほどで世界第1位、貿易黒字額も、外貨保有額も、海外投資額も、アメリカ国債の保有額も世界第1位を占める盛況振りであるが、その急速な高度経済成長が故に、産業公害の発生率も世界第1位であり、日本に降り注ぐ酸性雨物質の50%強は中国からのもの、世界の鉄鉱石の50%超を中国が消費し、日本の貿易相手国は既にアメリカを凌駕して中国が第1位になり、アメリカの対中貿易赤字額は約2,600億ドルと対日赤字の約3倍に達し、石油消費でも世界第2位の国となったし、アメリカの名門ハーバード大学の留学生全体の約1割強が中国人の学生で占められるに至り、世界の諸般への影響は大きく、現代社会は中国抜きでは成り立たない。
 しかし経済的取引の上得意であるから面と向かっては非難し得ないが、その反面では、安かろう悪かろうといった中国製品の流入と品質管理への不安感や、政策急変による信義なき変節、海外投資や観光客、留学生などが自己都合次第で、まるで津波の襲来のように押し寄せるかと思えば、状況変化で急退潮するといった変わり身の早さを危惧し、節度やマナーを弁えない買い焦り(爆買い)などに反感を抱く傾向も高まりつつあり、とりわけ近年になって、資金力による軍事・産業経済・金融面で暴走する中国への脅威や警戒論、更には抑制必要論が噴出するようになってきた。

(3)中国の発展は永続し得るか?

 本来的には上記したような恵まれた環境条件にあり、潜在的な発展能力を有しながらも、近世になってから20世紀末頃までの間の中国は、国内の権力闘争や政争、雑多な構成民族間の対立、急速に増大する人口増加に伴わないインフラ整備や経済発展、需要と供給のアンバランス、一般庶民教育環境の未整備、封建的階級社会の弊害による所得格差の増大と国民の士気低下、独自での資源や技術開発力の欠如、農業生産や小規模家内工業主体で近代工業化の出遅れ、先進西欧諸国の南・東アジア植民地化侵略の圧力、北方大国ロシア(ソ連)南進政策への防禦などに追われ、その秘められた潜在力をフルに発揮し得ず、とりわけ17世紀の大航海時代、18世紀の産業革命以降は、陸のシルクロードに変わる海路のシルクロードを開拓した西欧諸国や、西欧化の近代工業立国を志向し経済列強の仲間入りを果たした日本の後塵を拝することとなってしまっていたが、第2次世界大戦では欧米諸国やソ連の支援を得て日本に対抗して勝利を得ることとなり、社会主義体制国家となったが、21世紀になってソ連邦が崩壊し、東西冷戦の緊張が終結したことで、その潜在的国力を内政の安定化と国内経済発展に向けられるようになり、国際的な復興支援もあってそれを一気に顕在化させ、急速な経済繁栄を成し得た。
 だがそれは、戦後奇跡の復興を果たした日本と同様、経済規模の分母が小さく伸び代に余裕があり、未成熟状態にあったので、これまでは順調な2桁台の高度成長路線を突き進むことが可能であったともいえ、この永続は保証されない。
 米国ハーバード大学名誉教授で、ジャパン・アズ・ナンバーワンという名著で高名なエズラ・F・ヴォーゲル氏は、「毛沢東が国内紛争に勝利して、中国の共産主義化への改革を成し遂げたものの、その後の厳しい締め付けの圧制と覇権国としての再建志向、強制の文化大革命の行き過ぎを内部批判した同志の鄧小平を失脚させた。現代のような活力のある中国に復興させたのは、毛沢東の死後に復権し、その政治運動や圧制で疲弊し萎縮していた中国を開放政策による繁栄への道に導き、基礎路線を拓いた鄧小平の功績が大であった。その当時、彼に会って相談にものった私は、中国は決して覇権国のように振舞ってはならないと助言した」と、後日出版された「現代中国の父、鄧小平」の中で述べておられる。
 ちなみに長い日・中交流の歴史において、中国の代表として平和友好条約締結のために訪日し、謙虚に日本の優れた点も学ぼうと首相や天皇、財界人、学生、一般市民などとも浸しく直接対話したのは鄧小平だけであり、それゆえに鄧小平、それを引き継いだ胡耀邦の当時の日・中間は非常に円滑であった。
 戦後の中国指導者は、第1世代が毛沢東、第2世代が鄧小平、胡耀邦で、第3世代、第4世代を経て、現在の第5世代に至ったといえるが、第4世代以降の元首達は、勝者も敗者も悲惨な戦乱や、厳しい大革命などの生々しい実際体験がなく、要領の良い処世術と財力でライバルを排除して権力の座に着いたタイプの者達といえ、従って功を焦り、謙虚さや相手の立場も尊重する複眼志向を欠き、保守・保身的で、弱者には冷淡、上から目線で空威張りをして物事を処する傾向が強く、徳川幕府に例えると5代将軍徳川綱吉型といえ、平治には向くが乱世・逆境に対処する担当実力は乏しいので不向きとされる。
 戦後70年を経て、こういった戦後第5世代のタイプに政権の主役が一斉に交代するという傾向は、中国のみならず日・米にも、全世界的にも見受けられる傾向である。
 21世紀に入っての中国は、その領土や人口の巨大さの上に、長期間低迷し欧米や日本などの先進発展国に大きな差をつけられ出遅れていた経済にまで火がつき、急成長を見せるに至ったのだから、これが世界の政治・外交・軍事・経済・産業・市場・物価・相場・文化などあらゆる分野に及ぼす影響は計り知れず、同じ1%の経済成長率の増・減といっても、その総額規模の差は非常に大きなものとなるので、このままの状態が続けば、現代の第1位アメリカとの差を詰めて追い上げ、追い抜き、首座を奪い取るのも数年後のことということになるし、逆に頂点に達して反転・崩落した場合の落差も甚大なものとなる。
 大きいだけが良いことではないが、その利点もあり、その点を似通った預金金利(預入期間1年間の定期預金元利自動複利継続契約)の例で説明しておこう。
 戦後の貯蓄奨励・殖産振興期の金利は年率6%であったが、これを元利継続で複利運用すれば、12年で元利合計が約2倍になったものだが、現行の金利0.025%では元利合計が2倍になるには、なんと2,880年も要することになる。
 この金利が0.026に0.001%上昇しても、元金10万円なら1年運用で得る金利収益は250円が260円と10円増加するだけだが、元金が100億円なら金利収益の差額が1年で100万円にもなるのだから、その増・減の影響は大きなものとなり、これでは貯蓄意欲が薄れ、お金が投資や投機に流れるのは当然、資産家の不労所得が益々増加し、資産収益のない者との差は増大する一方であり貧者一生浮かび上がれないこととなる。これを近年になり、現在のアメリカ流の自由市場資本主義経済の下では、貧富格差の増大は解消されない当然の帰結だと立証したのが、フランスの経済学者トマ・ピケティーの「r(資産収益伸張率>g(経済成長率))という「利益は元資により決まる」との主張である。
 経済成長率は同じだとしても、人口が3億人ほどで、しかも将来は減少すると見込まれるアメリカと、人口13億人強で今後の増加を必至で抑制しようとしても、海外に脱出してまでも子供を出産しようとする中国とでは、量的経済規模のGDPでは10年以内にアメリカを凌駕するようになることは、国民が米・中等しく年間で1万円の所得増を見たとすると、アメリカは3億円のGDP増、中国は13億円のGDP増となるのだから当然だ。しかし現在のところ、この人口差をカバーする質的な面の国民一人当たり所得(GHI)では、中国はまだまだアメリカの5%弱、日本の20%強どまりの水準といった差がついており、この差を縮めるには、設備の近代化や経営合理化、人的能力の向上と効率意識の啓蒙、技術と士気の向上、労働コストの抑制などによる収益生産性の向上が必要であるが、これを短期間で実現することは容易でなく、10年間では困難であろう。

(4)揺らぎ始めた中国経済の実情

 以上のように、これまでどの国も実施したことがない「一国二制度」といった矛盾した政策を、時期や地域や対象に応じて巧妙に都合よく使い分けて、安い豊かな労働力による単なる世界の生産工場から、有望な世界の販売・投資取引市場にまで体質を改善し、年率2桁台の脅威の急成長・再興隆の実績を示してきたさしもの中国だが、ここにきてそのまやかしの歪や弊害が露呈することとなり、その成長周期(短期3~5年、中期10~15年、長期40~60年、超長期100年の波動があり、いずれの場合でも、頂点に近づくと成長率が鈍化し、上り坂の期間の方が緩やかで長く、頂点越え後の下り坂の方が短期で急落する傾向がある)が頂点に近づくにつれ、成長のスピードも成長率も、経年披露から鈍化傾向を示すようになってきたなど、国内外共に大きな転機を迎えることとなってきた。
 過去の日本のバブル発生とその破綻の悲劇と同様、中国もまた同じ道を辿るのか、「物極必反」、「財貨多きは徳傷(やぶ)る」とあるように、急激に豊かになったことの弊害や反動としての、権力者の権力闘争激化、為政者の精神的墜落や腐敗と、汚職や不祥事の増加、地域経済格差や階層貧富格差の増大、勝ち組と負け組みに二極分化する社会、財物的文化繁栄の反面での精神文化の荒廃、社会秩序の紊乱、これらに対する民衆の政治不信・不満の増大と爆発の危険性が強くなってきたこと、愛国心の低下、諸外国の対中警戒心と姿勢の変化などが生じ、スピードを落とした自転車の操縦が不安定になるように、政治、経済体制が揺らぎはじめ、全ての歯車が逆スパイラルに転じる不安感が高まりつつある。
 それに対して政府や党は、こういった不満の目を対外危機を煽ることで逸らそうと躍起になっているが、国際的情報交流が自由になり、情報統制が困難になってきた近年では、それもあまり有効でなく、かえって国際的不信の原因ともなりかねないので、庶民個々人の対米・対日感は意外に冷静に受け止めており、政府が喧伝するほど悪くはなく、むしろ親米・崇日的である。
 従って今の中国は、札束を見せびらかしながら、笑顔とピストルを使い分ける内政と外交を展開しているようだが、バブル破綻ショックを受けた日本というモデルもあるので、もう既に自身でも内心では危機感を抱き、先手を打って経済反転の落差をなだらかなものにしようと考え、着手し始めており、世界覇権の夢は心の奥に秘めてはいるが、これは焦らずに機が熟するのを待つこととし、これまでの過激な発言や頑固な対抗姿勢を見直し、控え目に転じようとしており、対米、対日政策も本気でこれ以上荒立てようとは思っておらず、ジャブを出しながら相手の反応を覗いつつ、今後とも硬軟な対応を模索し、将来への布石として「一帯一路(陸のシルクロードと海路のシルクロードの新開発整備)をテーゼに打ち出して、ここではアメリカの参加を牽制し、日本の取り込み、日・米離反を画策、とりあえず段階的にアジアでのリーダーシップだけは確保したいと望んでいるというのが偽らざる現状といえよう。

(5)これから中国はどう動き、どう対応すべきか日本や米・露

 このような大きな転機を迎え、今後の中国はどう動き、それに対応する日本やアメリカ、ロシア、その他諸国は、どう動こうとするのだろうか?
 先述したエズラ・ヴォーゲルもチャイナ・アズ・ナンバーワンになってはならないと警告したというが、現代の世界では、世界の政治的理念や経済の牽引役、紛争の調停役を担う特定の信頼される国の存在とその理性と良識ある指導は望まれるが、最早、武力と経済力に任せた独占的支配は、地球自然と人類の危機が問題視され、国境を超越したグローバルな管理が必要とされる時代の要望にそぐわないものであり受け容れられない。軍事力の強化と、それにより威嚇も同様で、今や目に見える武器での闘いで勝敗を決めても、勝者も敗者も得るところがなく、ましてや不当な核兵器や生物兵器などの使用は、当事者だけでなく全人類・全世界の破滅となるので断じて許されない。但し当面はこれに変わる形のない政治、外交、経済(金融・投資・相場・産業)、技術開発戦争の激化は予想され、ブロック別の囲み込み競争などは強まるであろうが、それも過渡期の縄張り争いの駆け引き手段でしかなく、いずれはグローバルな問題として処理されることとなるであろう。そうなれば、昨今の米・中、日・中、中・露の緊張関係やキリスト教国とイスラム教国との対立などもナンセンスということになる。現在の世界規模の疑心暗鬼と混迷は、物質文明が急速に進歩した中世以来前世紀までに蓄積された豊かさの弊害などの残滓や問題の大整理、総決算の大清算の混乱と苦難であり、その後に全人類の協調で開拓すべき近未来の理想的世界国家再構築への過程としての、楽しみと期待が込められた悪阻や陣痛の苦痛や試練と受け止めるべきであり、売られた喧嘩に付き合う必要はない。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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