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新年度予算(政府原案)に関する講評

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公開日付:2015.02.20

 平成27年度(西暦2015年)の国家一般会計予算原案が本年1月14日に閣議決定されて目下国会審議中であり、多少の修正はあろうが、与党圧倒的という勢力下では大きく改められることはないから、取り敢えずその講評をしておこう。
ご案内の通り、本年度の政府一般会計当初予算原案では、総額96兆3420億円で、前年比+0.5%となっているが、冒頭にこの数値の語呂合わせで内容を評価し表現すると、「苦労(96)の末の超(兆)目先の人気取りを考えた、差し当たりには(3420)は無難な予算といえる。
 つまり、相変わらずというべきか、本年4月に実施される統一地方選挙対策や、既に予定されている法人課税の実効税率引き下げなど、上層部大企業や富裕層から先ず優遇・支援したり、農政改革や地方支援の強化などをすることで、そのトリックル・ダウン(Trickle・Down=液体が少しづつゆっくり下部に滲むように流出する様)効果で景気が回復するであろうことを念頭に置いた、目先の人気取りや政権の安定的維持を図るといった面に配慮し、飴と鞭、景気浮上のアクセルと財政健全化のブレーキとを散りばめた悪賢い抜け目のない政治家としての戦術的予算編成であるとはいえようが、景気回復の恩恵から取り残されて困窮する中小零細企業者や、庶民、高齢者など票と政治資金源とならず、声を上げない社会的弱者には皺寄せの負担と犠牲を強いるといった冷淡さと、貧富格差は自由・資本主義社会ではある種の発展の刺激剤になるといった固定観念を改めず、その是正には消極的であること、アメリカ追従とタカ派姿勢をより鮮明に打ち出し、世界平和の希求とは逆行すること、将来のわが国のあるべき姿を展望・深慮した未来先取り志向、国民意識の抜本的転換や国家体質の根本的改革を目指す予算(案)とは言い難いものであったことなどは誠に残念である。
 トリックル・ダウンといえば聞こえが良く、このまやかしの美辞麗句に惑わされて、アベノミクスによる景気の急回復に期待する向きも多いようだが、この語句には、「お裾分け」とか「おこばれに預かる」といった消極的な意味も含まれ、その実態は決して、水源の小さな渓流が下流に至るに従い支流の水流を集めて裾野を広げ大河となり、末端まで豊かにするといった「川の流れ」のようなものとはならない。
 むしろ、大きな樽に仕込まれた原酒が、醸成過程で樽板に染込んで次第に減量したり、酒税や流通過程での段階的経費などを見込んで搾りに搾り尽くされ、最後は新酒の風味もアルコール分も抜けてしまいかすかすの残り糟の酒粕となるように、末端にまで上層部と等量の富が公平に分配がされるものではないし、その浸透のテンポは鈍く長期間を要し、末端にまで好況の恩恵が及ぶようになりだす頃には、また次ぎの不況の波が、逆に一番早く襲いかかるということになろう。
 また、昔から「利は元にあり」といわれるように、現在の主流を成すアメリカ流の自由・資本主義、市場競争本位の金融資本主義経済体制の下では、恵まれた資産所得のある富裕者は益々不労所得を得て富むが、元手資本に乏しい貧窮者は、いくら努力し働いても報われず、下層部所得が1割増加した時には資産保有者の所得は約8倍も増加するといった構造になっており、だから余程の幸運に恵まれるか際どい手段を用いない限り、貧しい労働者が人並み以上に儲けることは不可能であり、一生浮かび上がれず、貧富格差は収縮しないばかりか、逆に増大することとなるのは明らかである。
 この点に関しては、近年、脚光を浴びているパリ経済学院のトマ・ピケティー教授が「21世紀の資本」という著書で述べられている、過去200年にわたる欧米経済の統計資料分析から導き出された結論が立証する。教授は、「だから近代の欧米自由資本主義には根本的な矛盾があり、これを是正するには、現代のフロー主体の税制をストックにも課税するように改め、富裕者への応能負担累進税率課税が、低所得者には減税が必要」とも述べておられるが、これは筆者が真理の経済論として20年来主張してきたこととも合致する考え方なので、賛同の意を表したい。
 にもかかわらず、安倍政権の基本姿勢は、さらにこの貧富格差の拡大を助長しようとするものであるから、「今は良い良い、明日が怖い」というものでしかないことを、どうして日本人には見抜けないのか、ちょっと冷静になれば、外観的に背伸びをした大きさや発展より、庶民生活の安定と向上が政治・経済発展の主眼でなければならなず、樹木や、国家や企業や人間も、根っこがしっかりとしてこそ、大きく元気に伸び育つものと誰にでも気づけるこおではなかろうか。
 国家予算とは、国家としての基本的・一般的な通常のお金の収入と支出の会計方針を計画・確定し、国民に明示するものである。
 国家の財政収支は、本来、一つの会計で管理・処理されるべきものだが、それだけでは状況の変化に機敏に対応できない場合もあるので、この他に当該年度に限り臨時的に必要な経費に備える特別会計や、不時に発生する事項に備える予備費ともいえる補正予算があり、この総計に基づき、国家の通常の運営や一般的行政に必要な経費や国民生活の安全・安心を保障するために必要な費用を予め策定し、経済政策や微税や国債発行などで収入確保の方法を計り、その資金を上記の目的に沿って有効に活用する支出の方策を図り、統制管理し、ムダや不正収・支を排除しようとする、いわゆる「入(必要)を計り、出を図る」ものであり、それを当該単年度内に限って、予定通りにきちんと収・支決済をつけるものとなっている。
 従って国家予算の組み立て方に、為政者や国家の基本理念や姿勢が表現されているといえ、また国民の全てが、生産・消費・所得分配・貯蓄や再投資などの国家経済活動、あるいは社会福祉や国防、外交などといった生活に直結する場面に、何らかの形で係わり、影響を受けたり与えているのだし、それに国家と国民生活の将来がかかっているのだから、決して無関心であってはならにのだ。
 本年はわが国の歴史で初体験という外国との戦いで敗戦した苦境から70年目を迎えることとなるが、その間に日本は、ほぼ10年節目で大きな周囲の環境変化と国内社会情勢の変化に見舞われ、それに対応しながら現代に至ってきた。
 まず終戦の1945から1954年の間は、前半の敗戦後の混乱・処理期と、後半の奇跡の復興期とに別れ、国際環境としては、1945年8月の日本の全面降伏による第2次世界大戦の終結と、一時の間とはいえ世界平和の復活、欧米列強の支配下にあった多くの弱小植民地国の独立が相次ぐ一方で、終戦処理後の勢力圏争いで、欧米自由民主主義国とソ連・中国を主体とする社会・共産主義国との間のイデオロギーと軍事的対立が先鋭化し、1950年には朝鮮動乱が勃発、その終結策として朝鮮半島は、北の社会主義国北朝鮮と南の民主主義国大韓民国に分裂統治されることとなるなど、世界は東西冷戦時代を迎え、国内事情としては戦勝連合国を主導したアメリカの占領下治世の時代となり、日本は自由民主義体制側に組み込まれることとなって、財閥解体、レッドパージなどで全てがアメリカ亜流に塗り替えられ、1946年に日本国新憲法の制定で戦後の新国家体制の基本が定められ、日本は非軍国主義の専守防衛・平和主義国家、自由・資本主義経済体制を志向、戦時に海外に派遣していた軍人の帰国に伴う第一次ベビーブームが出現、これが現在の一斉退職者の増大と高齢化社会の加速を招いた。
 後半の朝鮮動乱は、米軍補給基地としての恩恵による特需経済が戦後の復興を支えることとなったし、1951年にはサンフランシスコでの講和条約締結で一応終戦後処理と占領軍治世に区切りをつけて自主独立国家となり、国際的にも奇跡といわれた復興を果たした。
 敗戦から10年を経た1955年~1964年の間では、工業立国の体制が整い、経済系成長路線への離陸に成功し、経済白書のサブタイトル「もはや戦後ではない」が象徴するように、人口も1億人を突破し、世界的にも稀有な短期で急速な経済再建と順調な発展期となって、こういった戦後復興の成果を世界に披露する、東海道新幹線の開業や東京オリンピックも開催された。
 しかしこの年を契機に、オリンピックブームの反動不況もあり、1965年以降は大きく情勢が変化し、上昇一辺倒の国勢や経済にも大きな転機を迎えることとなり、景気の周期的上下変動が激しくなぢ、持続的経済安定成長路線への転換を余儀なくされ、また欧米先進経済諸国から、急追する日本に対する警戒と圧力が高まり、貿易戦争が激化、経済の独善的な急成長が許されなくなり、国際協調や経済成長率の鈍化も止むなくされるようになった。
 1965年~1975年の10年間には、田中角栄の国土改造論などがもて囃され、アメリカに次ぐ世界第2位にのし上がり、経済大国の仲間入りを果たしたが、アメリカの日本叩きも強まり、円の変動相場制への移行などがあり、末期には、中東戦争の煽りで2次にわたる石油価格高騰、諸物価の狂騰の試練を受け、戦後初の経済マイナス成長を見るに至った。
 1975年~1984年では、輸入物価高に対応する手段として、企業経営の徹底的な合理化・省力化や、省エネルギー政策が促進され、その結果、いざ苦境に立たされた場合の日本の国民の団結心や底力を覚醒させることとなり、欧米の不振を尻目に自動車生産でも世界一、医療技術でも一流国となって世界一の長寿国となるなどで、再び世界から日本の真価と実力が見直されることとなったのは良いが、それに不快感を抱く欧米諸国の狡猾な日本褒め殺しの戦略の罠に引きづり込まれ、末期には不動産・証券市場のバブル経済を招来することとなった。
 1985年~2005年の20年間は、日本が天国と地獄の両面を短期間で体験することになり、金融ビッグバンや郵政の民営化、国家財政危機の打破、消費税の導入など、重大な変革期を迎え、その挙句にバブル経済の破綻もあったが、その苦難を実体験され方も多いであろう。
 道に迷ったとき、「歴史は最もよき教科書」となり、「人間や社会は、失敗や成功体験を重ねつつ進化する」ものだが、さて日本の政治家たちは、過去の歴史や貴重な体験から、一体何を学び、どうその体験を活かしてきたのだろうか?
 それが端的に示されるのが施政方針であり、その具現化策が表示されるのが国家予算であり、その技法が最も効果的に発揮されるかどうかは、その政権の経済政策、とりわけ金融政策と税制である。
 例えば、日本経済の不動産や証券投資の過熱が頂点に達して反転期に至りつつあるのを見逃さず、それを監視して、先手を打って調整するのが行政の役割であるべきだが、銀行の不当な貸出競争を放任して超金融緩和を続けた挙句に、それが沸騰してから慌てて、今度は急遽、総量規制などの金融引き締めに転じるという急ハンドルを切り、急ブレーキをかけたのだから、まさに無謀で脱線転覆のバブル経済破綻の大混乱、銀行の不良債権急増、経営破綻続出が生じたのも当然であろう。
 よってこれ以降、日本経済は失われた10年、事後処理の失政でそれを一層深刻化させて失った10年が加わり、都合20年余という未曾有の経済低迷、長期デフレ不況の泥沼に嵌まり込むこととなったのである。
 それにも懲りず安倍政権は、今再び、アベノミクスという大胆な賭けに打って出て、実体経済の健全な発展の裏づけもないまま、アナウンスメント効果だけで株価を吊り上げ、円高への誘導といったバブル経済を仕掛けるアクセルと、財政健全化のための増税というブレーキを踏み、これを両立させるといきまいている。
 案の定その結果は、口火が実体経済の燃え上がりに繋がらず、既に燃え尽きようとしており、外国大手投資家依存の株高頼み、それも彼らの思惑で乱高下して不安定、円高修正のためが逆に予想以上の円安となり、税率アップは消費不振になり、景気のブレーキ要因となるのが常識なのに、物価高の中での消費拡大を図ろうという矛盾だらけのちぐはぐ政策で、全てが中途半端だから、一部大企業の賃上げは多少あったが、個人の実質所得は減少、誘導インフレ目標の達成は見込みが絶たず、従来なら円安は輸出依存型の日本では歓迎要因だったが、輸入依存率が高まり、主要産業の海外脱出、現地生産、逆輸入といった現代では、円安はそれほど有利な要因にはならないことを読み違えており、それに大手企業や富裕者の優遇税制による余裕金は、国内再投資より海外のマネーゲームに向かったり、企業の内部留で死蔵され、貿易収支のみならず、経常収支まで赤字に転じた。
 こういった観点で新年度の予算原案を分析すると、あちこちへの飴と鞭との使い分けなどで、人気取り・政権支持獲得への配慮は窺えるものの、基本のコンセプトやポリシーが明確でなく、重点施策は、防衛費の約5兆円、前年比約2%増という以外は、これといったアクセントが見当たらない。
 歳入・歳出総額としては過去最大、第2次の安倍内閣になって3年連続の過去最高額更新となったが、対前年の増加率は0.5%どまりで済み、なんとか予算編成の格好をつけた。
 しかしこれは政府の経済政策の適切さや財政圧縮の努力の結果というより、株式のバブル高や円安輸出好調の恩恵であるにせよ、とにかく民間企業の努力や景気循環周期による業績回復により、税収額を54兆5250億円、前年比9.6%増にまで見込めるようになったことも多分にあり、これでなんとか、新たな国家の借金となる国債の発行額も36兆8630億円、前年比4.4兆円減(△6%)で済み、総歳入に占める国債依存の割合は38.3%と久々に4割を割り込むこととなった。
 それでも借金総残高が増加し続けることには変わりがなく、本年度末には国と地方とで総額1035兆円、前年末比26兆円増、国民一人当たり約815万円もの多額な借金を背負うことになるし、国家信用の担保である個人金融資産総額に近い借金となるので、もうこれ以上の借金依存は続けられない状態になりつつある。
 歳出の計画では、行政政策の予算が72兆8912億円で、前年比0.4%に抑えられたが、そのうち最大が社会保障費約31.5兆円で総予算の約32%を占め、前年比3.3%増、2位が地方交付税の約15.5兆円(前年比△3.8%)、総予算の16.1%で地域再生への一応の姿勢は見せている。
 これに続くのが公共事業費約6.0兆円、対前年比±0、総歳出予算構成比6.2%、だが、但しこの使途が何に向けられるのか、果たして将来の日本再興隆に直接的に役立つ投資に回るのかどうかは不明確である。
 事業は人なりであるから、技術立国を志向する上で最も重要な先行投資と考える文教・化学振興費は、約5.4兆円、対前年△1.3%、総予算比5.6%でしかないが、防衛費は約5.0兆円、対前年比+2.0%、総予算比0.5%、この前年比の増加が目立つものの、それでもGDPの1%以内は堅守しており、中国やアメリカの国防予算構成比からすれば低く、わが国が諸外国が恐れる軍事大国になったとまではいえない。
 国債費は、過去の国債の満期到来分支払いと利払い費であるが、総歳出の24.4%を占め、前年比0.8%増となっているが、これは直ぐに解消し得る類のものではなく、孫子の代にまで引き継がれる負債である。
 総括すると、消費税の税率10%への引き上げを先送りしたことで、取り敢えず本年度は財源不足のやりくりで控えめの予算となったが、その分は高齢者の負担増加に付回しされたといった感が強い。
 しかし選挙で大勝利を得て1強他弱となり、自信と独裁力を強めたので、今後の消費税率アップは当然、公共投資の積極化などで安倍政権らしさを発揮させるものと予想される。
 賢明な経済政策と税制で、将来に向けた日本の国家体質の改善と品格の向上を目指し、国民性格の安心と安定を保障していただきたいものである。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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