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アベノミクスの真価と成果が問われる年

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公開日付:2015.01.23

 本年は、その世相を予感させるかのような、全国的に不順な暴風雪か曇天という厳しい冷え込みで、身の引き締まる思いの元旦を迎えることとなった。
 昨年末には、安倍政権が掲げた長期デフレ不況からの脱出と経済成長路線への転換を目指すための大胆な賭けの経済政策「アベノミクス」に対する国民の信を問うという名目での内閣解散と総選挙が突如として実施され、虚を突かれた諸野党の対抗準備不足もあって、自民・公明与党連合が改選前の勢力を更に上回り定数の3分の2以上を制するという安定的多数の圧勝をみて第3次安倍内閣を発足させた。
 しかし今回の改選総選挙は、アベノミクスへの取り組み途次のことで、一部閣僚の政治資金を巡る不祥事の発覚があったとはいえ、緊急に政権改善の必要に迫られるほどの必要性も大義名分もなく、その争点がはっきりとせず曖昧模糊としたもので、あえて言えば、安倍総理の利己的な政権地盤固めと独裁の強化、多分にリスキーなアベノミクスという奇策の経済政策導入に関して、国民にもその是非の踏み絵を踏ませて責任の一端を転嫁し担わせようとする狡猾で巧妙な思惑が秘められたものであり、差し当たりの選挙対策として、取り敢えずは景気回復策に相反すると抵抗が強い消費税率10%への再増率は一年半先送りし、経済成長路線への軌道乗せを優先し確実なものとすることを前面に押し立てているが、政権地盤固めを果たした後の2017年4月には、事情の如何に係わらず国家財政健全化のために消費税増率を実施し、これまで通りに金融緩和政策などでのアベノミクスを推進することや、どさくさに紛れ、選挙中は触れずにいた集団的自衛権の行使容認、そのための憲法改正、特定秘密保護法の制定、TPP参加、原子力発電再稼働などを強力に進めることなどを一気に押し通そうと図り、しかもそれは総括的に国民の信任と支持を問い、その承認を得たものとすり変えようと意図したものであろう。
 これでは選挙の大勝に奢った与党政権の思うがままで、その暴走を牽制・抑制することが不可能になりかねず、わが国の将来に向けての進路を踏み間違いかねないと懸念する。
 とはいえ、最早や今更、未知の世界への挑戦や危険な賭けのアベノミクスに歩を進めることの是非を云々するというよりも、もう既に矢が放たれ後戻りできない道に突き進んでしまったのだから、なんとしてでも本年は、適切な具体策を考案・実践し、その着実な成果を問うという年にしなければならず、いよいよ安倍政権の正念場といえる重要な分岐路に立つこととなる。
 しかしながら、この世紀の大転換期にありながら、わが国のみならず世界的にも、新しい世界のあるべき姿を探求する国家や人類の理念や価値観、それに至る筋道が未だに明確にまとまらず、提示されないで混迷状態にあるばかりか、世界を主導する立場にあるべき諸大国が、その良識を発揮するというより逆に、目先の自国本位の世界覇権欲に駆られているということが大問題である。
 従って残念ながら本年もまだ、時流変化の過渡期としての大激動と混乱が世界的に渦巻き、地球規模の不安定感や精神文明の荒廃が進み、国際関係は政治、軍事、経済、金融、貿易、産業、技術革新、情報などの国家間競争が一層激化し、国家・地域、民族間の明暗・貧富の格差が増大し、このような理念や思想、経済、教育水準などの二極化や多極分化の混乱傾向が一層明確になり、まだ数十年間はこのような破滅的な混迷状態が続き、その間には最悪の事態では、世界規模の戦争が発生する可能性も否定しきれず、その挙句には、双方共に疲弊の極限状態に達し、勝ちも負けもない混乱・衰微状態に立ち至り、そこに至って始めて人類は、その過剰欲望の愚かさに気づかされ、好まし政治や経済の原点に立ち帰り、自然環境を人為的に破壊し財物的な豊かさを追求するだけでなく、自然的との調和的な共生・共栄・共存の重要性を認識し、物質文明と精神文明の発展とのバランス感覚や、経済的収益至上主義や自由・市場万能経済の修正だけでなく、理性によるある程度の自律的規制、一方に偏重しない中庸、物心一如の程合いの良い経済の重要性に着目するように悔い改めざるを得なくなるであろう。
 こういった観点から本年は、大胆な未知への挑戦、危険を承知で着手した緊急対症荒療治であるアベノミクスへの着手からもう3年目を迎えることとなるので、今更その判断と決定の是非を云々することより、その真価の着実な成果を確認評価すべき時期に至っているといえよう。
 今回の危険な賭けのアベノミクスは、銀行業務の証券化という金融ビッグバンや、公的金融機関であった郵貯の民営化といったような、悪政病因を根本的に切開手術で除去するといった外科的治療ではなく、内科的な劇薬投与の治療法で、その痛みを和らげ、病状の悪化・進行を抑制しつつ、輸血や点滴投与などで体力の回復と自己治癒力による自然回復と体質の強化・改善を持つというものである。
 従って副作用が伴う危険な劇薬投与、一部への集中的刺激や応急処置策を講ずることで一時的な成果を見るが、投薬や点滴輸血を投与を中止すると、直ぐにその効果が薄れたり反作用が生じ、下手をするとかえって体質が脆くなるということになりかねず、もう少し長いスパンで見て、将来的にも好ましい日本の国家体質の強化や品格の向上にも連なる成果をあげ得たかどうかなどを含めて評価すべきであろう。
 そういった面からは、わが国だけでなく全世界的にも、現代の地球規模の環境や時流の大変化に対する受け止め方や風潮、それに対応しようとする思考法や手法はまだまだ甘く、近視眼的で、目先の自国の利益や生存本位的であり、全地球、全世界、全人類的な大きな観点からの長期的展望や深慮に欠けている。
 地球の自然環境が荒廃し、異常気象を招来、天然埋蔵資源の有限性と、近い将来の世界的な人口爆発的増加と食糧難の到来が明確になり、その需要と供給環境のバランスが根本的に崩れ、需要と供給力のミスマッチや人類の富の再分配の不適正さが部分的に顕著になって危機状態に達し、民衆の不満や不安感が頂点に差し掛かりつつある現代、人類が従来のような見苦しいモア・アンド・モアの過剰欲望の追求に走り、利己的な富の独占的収奪と、排他的過当競争での勝利、優越性の発揮と覇権欲に拘り続けようとするなら、それは近い将来に、全世界の荒廃と滅亡、全人類の共倒れという「過欲なる貧窮」の愚かな悲劇を招くこととなる。
 今こそ全世界各国、全人類が理性ある人間としての良識に目覚め、目先の財物的利欲の追求を捨て去り、全地球・全世界の恒久平和と、全生物の共生・共存・共栄を図ることを希求し、それに向かう意思統一と行動を起こさねばならない。
 本年は第2次世界大戦の終戦で、世界が一応の平和をとり戻してから70周年目を迎えるが、これだけの長期間、部分的な紛争はあったが、概して世界的な平和が維持され、それゆえに世界的な経済水準が向上発展してきたことは有史以来初めてともいうべき、文字通り古来まれなる貴重な体験をしてきた。
 それを過当競争での勝利や特定者による富の独占や覇権の確保、富の分配の不公正・不公平さから、大多数の民衆の不満・不安感を喚起させ、再び戦乱の苦難を招き、財物分物質文明発展の一方で、精神文明の荒廃を招くような過ちを再び繰り返してはならない。
 アベノミクスの真価と成果の正しい評価も、こういった観点から、正しい未来の国家像が描かれ、その理念とビジョンが明示され、この正しい道を踏み外さない具体的な政策が打ち出され、具現化されつつあるかどうかを確認して評価することが先ず肝要である。
 このような大きな構想での世界秩序の再構築や平和の実現を、単なる理想に止めず具現化するためには、全ての変革は人間の意識の変革からであり、正しい人間意識があってこその正しい判断や意思決定、正しい人間の行動があるのだから、人間間意識や価値観の刷新への正しい教育を根底に据えること。それも目先の利を追う悪知恵的ハウ・ツーの学習より、好ましい政治や経済の原点に立ち帰った、根本的魂や理念と道徳倫理感の教育に重点を置くこと。
 景気回復・浮上を本格化し、経済を安定した成長路線の軌道に乗せるには、①輸出、②民間設備投資、③個人消費の3本のロケットを①~③へといった順番で順調に燃焼し続けさせることが大切である。
 先ずは国内での自給自足体制を整え、国民生活の安心と安定を確保することが重要であるが、わが国は基本的には、国内での生産基礎資源やエネルギー資源の自給力が乏しいので、これらの輸入に頼らねばならず、そのためには多方面な他国との安定した友好通商を維持し、その輸入量の安定的確保と購入に必要な外貨を獲得する必要があり、その輸入資源の高度加工で付加価値を高めて輸出し、その差益で外貨を稼ぐという加工貿易立国を目指さねばならない。
 従って、全ての製品の国内生産を図ろうとするのでなく、普遍的な産品の生産は国際分業と輸入に任せ、国際輸出競争力に優れた製品の生産・輸出に重点を置いた産業の育成を国策とすることと、同時に為替相場の調整・安定化にも注力すること。
 この生産経済の充実では、雇用の安定化、若者の失業率の改善、高度技術開発力の向上にも役立つこととなる。この①輸出がGDPの推力の約12~13%を占め、輸出優位性が確保され好調となれば、次に②の民間企業の国内新規生産設備投資も積極的になり、海外から投資も呼び込めるようになるし、設備のフル稼働で雇用の増大にも連なる。
 企業設備投資が活発化すれば、この第2エンジンのGDP推力は約15%~18%であり、当然、これに関連する建設業や機械製造業、下請け部品製造の中小企業にまでも裾広がり的に好影響が及び、初めてその富が末端の低層部にまで浸潤して行くという安倍政権が主張するトリックル・ダウン(滴り落ちる)が見られるようになる。
 但し、末端部まで富が浸潤して行くには時間もかかり、その間で大企業の下請け苛めや富の独占的搾取が改めれ、富の分配の適正さが政府により監督・指導されて保障される必要がある。
 企業設備投資が積極的になり、設備のフル稼働が活発になると、雇用者の賃上げや新規採用の増大、有効求人倍率の改善、失業率の低下、雇用者所得の増大という好循環に連なり、初めて③のGDPを引き上げる力の約6割を占める最も大きな推力である個人消費購買力が活発に燃え上がることとなる。
 以上の①輸出、②民間企業設備投資、③個人消費の3本のロケットが揃って、この順序で順調に燃え続けると、その①~③の合計GDP推力は約90%~95%となるが、まだ100%の全推進力には満たず、ロケットは失速して進路からズレて落下しかねなくなるが、それをカバーするために必要なのが④の補助エンジンを燃焼させて軌道修正を図らねばならない。これが財政出動という政府の干渉・支援である。
 今回のアベノミクスという危険な賭けの経済政策は、この正常な手順の①~③のエンジンの燃焼が不調で、思うような推力が得られず日本経済が失速しそうになったので、緊急応急処置として④の補充エンジンに大幅に頼るという、超金融無制限緩和と思い切った財政投資の積極化と調整インフレの導入、デフレからの完全脱出という大胆な未知の政策に打って出たというものであるが、これはあくまでも禁じ手の緊急避難応急処置といえ、恒常的に実施が許されることではなく、短期的に劇薬投与効果を出して非常事態から脱し、早く正常な姿に戻さねばならないことである。
 わが国は常に中立的で慎重であるべき物価の番人や経済の見張り役である中央銀行の日本銀行自らが、総理の意向を汲んで、これまでにない大胆な姿勢を打ち出し、既に日本銀行の金融調節手段の①公定歩合操作(金利の上げ下げ面からの金融・景気調整手段で、既に世界で最低というゼロ金利政策を永年にわたり継続実施している)、②と③の市場に出回る金融の量的面から調整手段である、公開市場操作(売りオペ、買いオペレーション)、支払準備率操作の全ての蛇口を開放しきった未曾有の超金融緩和政策を実施済みであり、後に残された奇策はもうないし、これ以上の国債の乱発や通貨の増刷はスーパーインフレを招き、国際的信頼の下落にも連なるので要注意である。
 金融操作面からの人為的な株価の吊り上げ好景気の演出にも、もう限界が見えてきたということであり、それで繋いでいる間に、早く実体経済の本格的な燃焼を図る具体的根本策や、下層部への間接的な富の浸潤を待つより、緊急支援必要部門への直接的・効果的な刺激策、例えば特定大企業偏重でなく、輸出貢献優良中小企業への直接的投資や融資支援、近い将来大化けする可能性のある有能ベンチャー企業の発掘と育成支援、石油や原始力発電に変わる新しい無限・無公害エネルギーの開発・実用化支援、明日の経済牽引産業や製品の研究開発促進支援などに焦点を絞った重点的支援を強めるなどといったアクセントをつけた政策を講じ、日本の特性を発揮することが必要であろう。
 民間設備投資の積極化による景気刺激策といっても、海外大手機関投資家の投資物件とされる高級住宅建設への投資は、彼らの転売利ざや稼ぎに利用されるだけであり、今後は、消費税率8%への増税前の駆け込み需要の反動減、不動産バブル破綻も予想されるし、わが国実体経済の健全な成長発展への貢献といった面でも些か疑問である。
 2014年7~9月のGDP成長率が2四半期連続のマイナスとなり、昨年4月の消費税率5%→8%への増率の反動悪影響だとされたが、2013年10~12月期の実質成長率もマイナス1.5%であったことからすると、過去一年間の日本経済はほとんど成長しておらず、アベノミクスの劇薬投与のアナウンスメント効果は既に薄らいでしまい、限界に達していたと見るべきであり、消費税率だけで景気が悪化しただけとはいい難い。
 急激な円高を輸出にマイナスだと騒ぎ、今度は急激な円安に転じると輸入物価高でマイナスだと嘆くが、経済には常に2面性があり、それぞれの立場で利害が相反するものであり、日本は輸出大国であると同時に輸入大国でもあるので双方で相殺効果ということと、企業の海外脱出が進み無国籍化が進むと、円高円安が問題というより、為替相場の不安定な乱高下の振幅の大きさこそが経済計画を狂わせるので大問題だし、もはや円安になっても思ったほど輸出は増えず、経済全般としては消費物価高となり、経済的にはマイナス悪影響要因として作用するようになってきた。
 雇用の状態をみる完全失業率では、昨年の10月で3.5%と1997年のバブル絶頂期の水準にまで戻り、先進国中でも低い好ましい水準になったといえなくもないが、これには低賃金の派遣・非正規社員雇用の増加、雇用形態の多様化の影響もあり、また物価の上昇が賃金上昇を上回り、むしろ実質所得は減少しているとというのが実態であり、決して好ましい雇用状態に回復したとはいい難いものがある。
 大企業や富裕者の優遇策の恩恵を受け、高額所得者の絶対数は増加を示してはいるが、その顔ぶれは従来からの常連が姿を消し、浮沈の新陳代謝が激しくなっている反面で、庶民生活の窮状実態は、生活保護世帯が急増の傾向を強め、消費性向も貯蓄性向も低下し、貯蓄をとり崩して何とか生活を維持している苦境の実態が、貯蓄額ゼロの家庭が2割強にも増加したことなどからも窺え、貧富格差増大の二極分化社会、富の偏在と所得再配分の不公正さの是正など、今後の日本国家再興隆や経済体質改善への課題を示唆する。しかし、またもう一方では、世界の中の日本の、超微細精密加工技術の精巧さやものづくりの優秀さ、社会的秩序や道徳観念、精神文明の健全性などがまだ残存し、潜在発展力が秘められているなどといった明るい材料も多々ある。
 アベノミクスの真価や成果の評価が、目先の人気や功労だけで捉われ左右されることなく、たとえ今は嫌われ憎まれ、認められなくても、未来の世界や日本のさらなる繁栄のためにも、あの時の日本の壮大な構想、勇気ある正しい選択と決断が、明日に向かう世界を動かし、人類の意識を刷新せしめたと、将来になって高く評価されるようなものとなることを期待したいものである。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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