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本年の回顧と将来への課題

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公開日付:2014.12.26

 本年も、明るい将来への道がはっきりと見通せず、脱出口を求めて必至に雑木林の中をさ迷っているかのような混沌とした状態のままで、多くの国民は空虚な気持ちで歳末を迎えることとなった。
 そんな重要な時期にもかかわらず、ちゃっかりと民間企業に先駆けて賃上げやボーナスを受け、恵まれた年金制度で安定した老後生活の保証まで得ている公務員達は、9連休となる年末年始冬期休暇の楽しい計画に胸を膨らませ、また中央の政治家達は、政治の空白を顧みることなく、突然に争点と焦点が不明確な国会解散・総選挙戦を打ち出し、こういう時期だけは低姿勢で、何をどうお願いされるのかが不明だが、ただ「お願いします」の一点張りで、文字通り「師走」の街を飛び回っている。
 本年を振り返ってみると、予てから長期的展望として「世紀の変わり目は、前20世紀の歪の大清算・大修正と主役交代の大動乱期」だと主張してきた通り、いよいよこれが、わが国のみならず全世界的にも、待ったなしで必至の状態になり、その対応の適否で将来の命運が左右される重大な分岐点となる年であるべきであったが、残念ながらこれが手間取り、主役国や産業の交代の方は進んで現実のものとなってきたが、肝心の、戦争の絶滅と世界平和の確立、非人道的な大量殺戮・破壊兵器の廃絶、特定大国の覇権拡大や特権的支配、エネルギーや食糧などの諸資源の独占排除、地球自然環境破壊の禁止と保護、人類の過剰欲望と過当競争の抑制、行過ぎた自由主義経済や投機的市場経済主義の見直し、物質文明や科学技術進歩の反面での精神文明荒廃の是正、地域・国家経済や貧富など各種格差の増大の修正、これらを具現化するための人類の理念や手段の根本的な刷新などが予想より大幅に遅れてずれ込み、未だに今21世紀の世界や日本のあるべき姿や進路が明確に定まらず、新しい道に踏み出すには至らなかった。
 むしろ、その変動の時流に逆らおうとする保守的意識の障害も多く、また道に迷い、新しい時代像の描き方や、それに向かう進路や手法を誤れば、暗夜の山中で谷底に転落したり遭難し兼ねず、注意を要する重大な転機なので、この両者の理念や価値観並立の衝突、抵抗、最後の悪足掻き、過渡期の混乱など、生みの苦しみとでも言うべきか、地球の荒廃と世界秩序の混乱、経済の不安定さが頂点に達しつつ歳末に至った。
 したがって総じて、「新時代への転換・過渡期」として、勝ち組と負け組み、貧富・明暗などの「二極分化」が世界的規模でより明確になり、その過程で、株式や通貨相場の乱調、エネルギー資源や食料資源の獲得競争激化、諸物価の乱高下が生じ、インフレとデフレの並存といった混迷状態の年となった。
 わが国でもアベノミクスの実施段階で、優先順位や焦点を絞り込まず、超金融緩和のアクセルを踏むかと思えば消費税率のアップといったブレーキを踏むといった目先の彌縫策的後手対応という政治的ミスリードも加わって、政策優遇の恩恵を受けた大企業や富裕層は好景気謳歌で、高級高層マンションやブランド品・貴金属類の売れ行き好調、輸出型大企業業績急回復の反面で、消費税率の滞納が増大したり、見捨てられて皺寄せを受ける中小下請企業の苦境が一層深刻化し、庶民生活は住宅ローンの返済遅滞や、供給ミスマッチからの都心中古マンション、地方住宅の空室増加とか、賃上げを上回る生活必需品物価の上昇で実質所得は相対的に減少、公的福祉の負担増、更には国際外交面での領有権や旧属国の独立を巡る軍事紛争の激化、国内的には異常気象に伴う天災の頻発、危険ドラッグの濫用による衝動的無差別凶悪犯の続発などもあり、ノーベル賞の受賞などといった明るい話題もあったが、概して明・暗入り混じるも暗いニュースの方が多く、政治・軍事・経済・社会の不安定化と緊迫感が増大した「不安定・不安心の年」、新体制を希求する風は吹き始めているが、まだその具体的な胎動を実感するには至らなかった「戸惑いと難渋の年」であったといえ、まさに本稿年初号で予見したように、新しい時代に対応する新たな挑戦を試みようとするものの、蒔いた種子(甲)が直ぐには定着して発芽するまでには至らず、それに忤う(午)ような状況や難題が多く、その具体的な成果を見るには至らなかった「混迷と苛立ちの年」でもあった。
 本年の流行語大賞に「ダメよ、ダメ、ダメ!…」が選ばれ、「ありのままで…」といった歌詞の曲が大ヒットしたのも、こういった矛盾した世相を反映したものであろう。
 「愚か者は失敗に懲りず、同じような過ちを繰り返し、凡人は苦い体験をして、初めて過ちであったことに気づき、賢者は歴史に学び、未然に危機や問題点を察知して、それに先手を打って対処し、苦難を回避する」といわれるが、日本人は概して、「歴史や体験から学ぶことが少なく、喉元過ぎればすぐに熱さを忘れる一過性」で、「先知恵も、後知恵も出せない」とも言われる。
 では、上記した本年の回顧と反省から、このような時流の大転換期にはどうすべきかを考え、新年への国家的課題として供しておこう。
 世の中を動かすのは、全て自然環境と人間の意識・行動態様であるが、現代の世界人口と宗教人口の構成は、人口では、欧米系白色人種が約11億人(構成比17%)、アジア系黄色人種が約39億人(構成比60%)、ラテン・オセアニア系褐色人種が約6億人(構成比9%)、アフリカ系黒色人種が約9億人(構成比14%)、合計65億人である。
 これを主義別で見ると、自由・資本主義国の人口は約48億人(構成比74%)、共産・社会主義国の人口は約16億人(構成比25%)、その他の国の人口が1億人弱(構成比1%)であり、宗教人口では、1位がキリスト教で約21億人(構成比33%)、次いでイスラム教で約13億人(構成比20%)、ヒンズー教約8億人(構成比13%)、仏教が約4億人(構成比5%)、その他が19億人(構成比29%)でるが、今の世界を支配しているのは欧米系民族、主導している思想はキリスト教民族が主体の自由・民主主義であり、それが主唱する資本・市場主義体制であるが、所得階層別の人口構成比では(資料は世界銀行の調査による)、低所得国が約13%、中所得の下が約56%、中所得の上が約15%、高所得国が約16%であるのに対して、GNPの分布では、同じく約1%、14%、13%、72%となっており、自由・資本主義体制の国が主体の先進的高所得国が富の大部分を制し、この体制下では、優越的な恵まれた環境にある国が益々富み、厳しい自然環境条件にある地域や国は富を得難く、このままでは、今後とも世界的に貧富格差が一層増大すること、地政学的には、これまでの東西の対立より、南北の対立問題が深刻化するであろうこと、国際政治外交的には、主として北半球に勢力を張るキリスト教諸国、自由・資本主義諸国に対する南半球に勢力を張るイスラム教諸国の対抗意識が強まるであろう事などを示唆する。
 17世紀の英国における産業革命に端を発する工業化社会の進展を支えた資本主義経済や、他からの制約や支配を受けず、自由に自己の自発的意思や人並み上の努力で知識や技能を身につけ、才覚を発揮すれば、それ相応の富や賞賛を得る自由主義経済の有益性は十分に認められ、これを全面的に否定する人は少ないであろう。
 しかしその本来の目的や基本理念は、地球自然の資源潜在供給能力が需要を上回っており、潜在需要の開発余力もあったという時代環境を背景とし、故に苗株を持ち寄り立派な防風林を築いて、産業の発展や生活の安心に役立てようとするように、土地や資金といった資産に余裕のある者は資産を、知能や技術を有する者はその特性的能力を、汗をかいて働く意思と能力のある者は労働力をとそれぞれなりに持ち寄り提供しあって、担当を分担し、組織的に統合してシナジー(相乗・集積効果)効果を発揮し、国家や社会、国民の生活向上に役立つ価値ある事業を支援して育てるといった篤志家的投資という崇高な思考のものであり、それにより経済のパイを大きくすれば、その恩恵が皆にも適切に分配され、人類がより豊かで幸福になれるとしたもので、そこではノブレス・オブリージュ(優越的高貴な地位にある者に要求されるリーダとしての品格と義務、社会貢献責任)が重視されたものであった。
 それが近代になり、地球の人口が爆発的に増加する一方で、地球埋蔵資源の枯渇化が進み、経済が成熟期に入り、経済潜在成長力が鈍化するに至った上に、アメリカ流自己本位の収益至上主義経済、株主利益重視主義、市場競争原理主義が主導するようになり、行過ぎた自由勝手さや、力任せの優位性確保競争、資源獲得や貿易競争の激化、短期投機的収益狙いの思惑投資、大手機関投資家主体での人為的市場操作などが横行するようになり、経済倫理感の欠如、弱者への配慮などを失念し、本来の理念や使命から逸脱・暴走し、資本主義が大手投資家や企業主体の自己利益本位、収益至上、自己の優越的地位確保競争主義の「利本主義、自優主義」になったことで歯車が狂い始め、相対的にこれを批判・否定する独裁的・統制的な社会主義経済思想を、そしてその代表的な国である中国・ロシアを再び覚醒・台頭させ、新たな軍事・経済冷戦を芽生えさせることとなり、世界的秩序の大混乱や不安定さをもたらし、自由・資本・市場主義経済体制の問題点が露見したことから、この根本的な見直しと修正が余儀なくされるようになった。
 今後の世界や日本が取り組むべき重要課題としては、今再び、好ましい政治・経済・事業経営の原点に立ち帰り、その抜本的な理念やシステムからの再構築に取り組むことと、アメリカの独占的主導を排した中立的国際連合や国際司法機構の充実と、その監督・指導機能の強化を図り、世界秩序の安定化に努める必要があろう。
 目下、アベノミクスの信を問うといった大義名分なき解散・総選挙の真っ最中であるから、その勝敗結果の予見は慎むが、今回の選挙に関しては、争点と焦点が曖昧であり、沖縄の米軍基地や集団自衛権問題、TPPなど、与党が選挙戦で不利と考える重要な点については一切触れずに秘しているが、現自民・公明の連立与党が勝利しても敗退しても、国民にとっては不安と日本の政治への不信感と貧困さに失望感を抱かせるだけであり、不幸であるし、勝たせ過ぎても、堂々と国民の審判を仰いだと開き直り、強気で大暴走しかねないし、さりとて受け皿野党の足並みも不揃いなので、負けさせても不安といった状態なので、厳しい選択が求められており、我々の未来がかかる政治や、選挙に無関心であってはならない。
 国民が直接的に政治に参加し得る選挙の投票権を放棄する無責任・無関心な者には、政治や経済を批判する資格も恩恵を受ける権利も放棄したものと理解すべきであり、わが国も昨今の投票率の低さを憂い、ドイツのように棄権常習者への罰則制度の適用を検討する必要があろう。
 アベノミクスについては、筆者が、二度目の安倍内閣発足しアベノミクスが表明された当初から申し上げてきたように、「安倍首相のみがクスッ!とほくそ笑むアベノミクス」で、危険な賭けでもあり、したがって差し当たりの緊急対応策としてか、将来の日本を展望した政策かで評価も分かれる。
 安倍総理や与党が自覚自賛し、財界筋が一応評価しているアベノミクスの中間成果の評価に関しては、あくまでも目先の小手先対応、取り敢えずの応急劇薬投与対症療法の効果、政策的に演出されたミニバブル、インフレ誘導により支えられた株価の高騰や円安への転換、一部の好況感の成果でしかなく、また、その政策的優遇の恩恵を受けた勝ち組側の評価が主体であり、決して経済体質や産業構造の改善から実体経済が底堅い上昇軌道に乗った結果の経済基調好転といえるものではなく、その反面で、恩恵を受けるどころか、皺寄せの負担を強いられ苦難に耐えさせられている大多数の中小企業や声なき庶民が存在していることを見逃してはならない。
 このような危険な賭けや劇薬投与の緊急対症療法には、必ず逆目や、副作用、反動の揺れ戻しが伴うのが常であり、「今は良い良い、明日が怖い」といったものなので、つけ回しの清算や後始末に長期間の苦難が残るなどの大変さを覚悟しておく必要があるし、市中に流出させた膨大な資金が、海外のマネーゲームの流出することなく、国内の未来への再生産的投資に有効に回っているかの管理・追求にも留意するなど、将来の日本再興隆への長期戦略的視点からの評価も忘れてはならない。
 パレスチナ・シリア・イラン、イラク、ウクライナ、アフリカや中南米諸国、チベット、モンゴル自治区、香港などの独立運動や民族間の対立、領有権問題、政治体制やイデオロギーの対立などは、全て17~20世紀の欧米諸国や旧超大国のエゴで有色人種蔑視的な意識、植民地政策や、第一次・第二次世界大戦のご都合主義的で曖昧な戦後処理に問題発生の要因があり、日中、日韓の領海紛争の遠因もこの類であり、それが今に至るまで尾を引いているのである。
 このことは世界知事を見ると、こういった地域の国境線が幾何学的直線で仕切られたり、点線で暫定的に描かれている事からも明らかであろう。
 領土・領海問題、核兵器などの大量殺戮兵器廃絶問題や、南・北大陸、宇宙開発の問題、水産資源の保護問題、目下話題のTPPなどについても、そういった先進大国が先鞭をつけ、その既得権益を保持しながら、発展途上国がこれに見習い追尾しようとしたり、自分たちが不都合になれば、それを身勝手に規制しようとするというのでは、説得力も弱く納得が得られないから、核兵器廃絶や戦争放棄などは先ず自ら率先垂範すべきであり、彼らの責任によるこういった前世紀の残滓の一掃処理を今世紀前半の重要課題としなければ、今の世界の不安定感は払拭できない。
 唯一の被災国である日本は、こういう面で積極的に世界を主導し貢献すべきであり、そういった平和外交で世界から信頼を得るなら、経済規模の外観的大きさより、内容や質、品格の面での世界のリーディング国に君臨し得る可能性を有している。
 経済政策については、民は「乏しきを憂えず、等しからざるを憂う」ものであり、最大多数国民の最大幸福の実現は、好ましい政治や経済の原点であり最重要課題でもあるから、先ず国民の「生活の安全・安定・安心の保障を得たい」とか「人並みに公平な生活をしたい」といった人間としての本能ともいうべき基本的欲求を満たすことを最重要視することが肝要で、それが満たされ国内政治・経済の安定成長があってこそ、次ぎの段階の他より優越的地位を占めて認識されることを求め、更には自己なりのより高い目標実現を目ざそうとする高次元の欲求段階へとステップアップし、競争における勝利や、業界・市場制覇の目標を追求することが可能になり、外攻や国際外交に力を注ぎ、主導性を発揮し得る「内平らにして外成る」という「平成」の年号に秘めた壮大な理念や目的を達成することとなる。
 アベノミクスはこういった点からも、内政も外交も、国家財政の健全かもデフレからの脱却・経済成長も同時に一気にと功を焦り欲張り過ぎの危険な賭けといった不安感と、実体経済の裏づけの着実さを欠く、自己満足の嫌いがある。
 人体の健康に見立てた診断では、上層部の大企業や富裕層優遇政策で、頭部に重点的に血液を配給し、第2の心臓部といわれる足元は貧血で冷え込んだままといった状態であるから、いわば高血圧で脳卒中の怖れが多分にあり、輸血による血液循環が円滑に行かず、万一金融バブル破綻ともなれば危篤状態に陥るといった要観察注意の患者といえようか。
 わが国は、GDPで世界第3位の経済大国であるが、国民の幸福度といった面では世界で16位に成り下がって、貧富格差の増大や所得分配の不適正さが社会動乱発生の要注意水準に達しつつあり、憲法の基本的理念にも反する重大問題であるから、その是正を緊急の最重要課題とすべきであろう。
 そのために必要な政策は、①経済活動の分野で、これまでの生産・消費・貯蓄重視から所得分配の合理性に重点を置くこと、②それには税制の根本的手直しで、富裕層優遇より中流層に富の直接的還流を図り、雇用の促進と安定化で元気付けること、③内外生産比率を適正化し、世界的な需給関係の緊迫化を意識し自給自足体制を強めること、④これで為替相場など外敵環境の変化から受ける影響の軽減化を図ること、⑤お上から身を切り庶民と苦しみを分かち合う姿勢を現実的に示すことが肝要である。  来年こそはアベノミクスの頭寒足熱政策への修正転換で、その成果が実感できる年になることを祈念するばかりである。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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