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国民生活無視の焦点なき身勝手延命解散

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公開日付:2014.12.05

 内閣府が公表した本年7~9月国内総生産の速報値が安倍政権の予想以上に思わしくなく、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比で0.4%減、年率換算で1.6%減、名目では0.8%、年率換算で3.0%であったことを受け、これでは国家財政の健全化とデフレの解消、経済発展路線への転換を標榜したアベノミクスの効果に国内外から疑問が持たれ、絶対安定政権の維持にも悪影響が出かねないと懸念した安倍首相は、突如、伝家の宝刀を抜いて「アベノミクスの信を問う」と国会の解散権を行使した。
 安倍首相は、これは「アベノミクス解散だ」とその成果に依然として自信ありげに虚勢を張るが、目下のわが国を取り巻く国際情勢は、中国とロシアの世界覇権拡大への野心顕在化や横暴な一方的領有権の主張、アメリカの独占的世界支配への反発、その市場・金融資本主義に対するイスラム原理主義との対立先鋭化、経済・貿易戦争の激化、為替や株式相場の乱高下、地域・国家間栄枯盛衰格差の増大、地球自然環境の悪化に伴う資源や食糧の需要と供給関係の不均衡化と確保競争の熾烈化、低開発国・発展途上国での人口爆発的増加の反面で先進国の少子高齢化進展など、激動による不安定化と緊迫化の様相を深めている。
 国内的にも、アベノミクスの導入で大胆な無制限の金融緩和が実施されてもう2年余も経たというのに、一向にその肝心な第3の矢の経済成長路線への具体策が持ち出されないので、劇薬投与の応急処置の効能も薄れ始め、実体経済面でその成果が示されないばかりか、むしろ政策的恩恵を受けない中小企業者や、その皺寄せで福祉のカットや犠牲を強いられる社会的弱者にとっては、逆不公平さを有する消費税率アップのマイナス効果の方が強く表れた。税率アップ前の駆け込み需要の反動落の影響が3ヶ月程度で解消されるとしてきたのも、予想以上に遅れ、賃上げを上回る消費者物価の上昇で個人の実質所得は減少し、消費の低迷、貯蓄の取り崩しが続き、企業の国内設備投資もこの2四半世紀連続のマイナス、在庫調整に追われ、株高・円安、物価高・賃金安などというちぐはぐな経済混迷が続き、新規需要の拡大、景気回復の実感といったはかない期待も裏切られ、その上に異常気象に伴う天災の続発、放射能汚染除去対策の遅れからの東日本被災地復興の停滞、地方経済の衰退が重なるなど、アベノミクスの成果見通しが不明確な状況のまま、待ったなしで早期解決が要求されている内外の重要課題が山積みする下で、目標達成に万全の体制で臨むと内閣改造が実施されて間もないというのに、安倍首相はアベノミクスの成果見通しがついたと強弁し、零細企業や庶民にとっては越年の正念場に向かうこの切実な重要な時期に、突如、国会解散・総選挙の実施に踏み切り、歳末の最多忙時12月2日に衆議院選挙公示、そのどさくさの10日には特定秘密保護法が施行され、14日を投票日として、翌日には開票結果がまとまり党勢が決まり、年末も押し詰まった下旬に、特別国会召集、首相指名、組閣という段取りになっており、2015年1月には通常国会が開かれるまでのほぼ1ヶ月余は政治的空白が生じて停滞することとなる。
 首相は国民にその経済政策アベノミクスの信を問うためというが、今回の解散・総選挙は、事前に具体的なマニフェストを公示する暇もなく、消費税率10%への増税時期を1年半先送りするということで世論の批判をかわし、しかし2017年4月には必ず増税を実施するとし、相変わらず抽象的で具体策の裏づけのない地方創生という姑息な目先の対応策の提示というだけであり、国家の将来ビジョンや戦略的設計理念や方針が全く描かれておらず、争点が曖昧、焦点がぼやけているので、1強与党に対する多数弱小でまとまりが悪い野党は、意思統一で総力を結集した攻め手を欠いて闘い難いであろうし、国民としても理解し難く、是非の判断に戸惑うばかりであるから、まさに国民生活無視の身勝手な延命解散・選挙といえる。
 消費税の再増率に関しては、北欧福祉先進国のような生活必需品非課税や軽減税率適用の検討には触れず、原子力発電の再開、貧富格差の是正、TPPの締結、沖縄普天間基地、日米集団自衛権の行使など、わが国の将来に大きな影響を及ぼす諸問題に関しては、具体的な方針や内容、実施時期などを曖昧にしたままで、総括的にアベノミクスの評価を探り、信を問い、もし万一これが不成功に終わった場合の(内面では一抹の不安感を抱いていることの表れか?)一半の責任を他者にも担わせて分散しようとする強かさである。
 与党の圧勝となれば、今度は国民審判を正々堂々と仰ぎ信任・承認を得たとして、選挙時の柔軟な低姿勢を一変させ、独裁的強権のフリーハンドでやりたい放題、後はどうあれ、とにかく多少の人為的バブル経済やインフレの招来はあっても、一応のデフレ消滅とアベノミクスの成果の形だけはつけたいと、これまで棚上げとしてきた消費税率のアップや集団自衛権発動での自衛隊海外戦場への派兵、沖縄の基地移築などの諸懸案を強引に意のまま押し通そうとすることは間違いなかろう。
 それだけに国民としても、直接国家政治に関与し得る唯一の機会である今回の選挙には格別の関心を高めて投票率の向上を図り、もし投票率が60%を下回る低調さであった場合には、全国民の正当な審判を得たとはいえず、暗黙の抵抗や不満の表れであるから選挙無効と看做すぐらいの気構えで臨み、「国民の良識と判断能力レベル以上の良い政府は持てない」ということを自覚し、表面的な印象や言動、マスコミの煽動論調に惑わされ踊らされ、勝ち馬に乗ろうとしたり、芸能人の人気投票のようなお祭り気分を慎み、その腹中に秘めた真意を鋭く見抜き、国家の将来を深慮した冷静で賢明な選択・判断をしなければならない。
 安倍政権のこれまでの2年間の実績を振り返ってみると、当時の安倍自民党首が危険な賭けのアベノミクスを掲げて2012年の12月16日の第46回衆議院選挙に挑み、その結果、自公明で325議席というまさかの圧倒的過半数確保で政権与党の地位に返り咲き首相に就任、①大胆な金融緩和、②積極的な財政出動、③デフレからの脱却と経済成長路線への転換という3本の矢の経済政策を打ち出し、取り敢えず2013年1月には13兆円余の大型補正予算を組み、3月には中立的で慎重な日銀を抱き込み黒田総裁に入れ替えられてからは協調路線に転じせしめ、4月には早速に大幅で大胆な金融の量的・質的超緩和を決定したが、それは従来の国家財政の健全化に反して再び国債の大量発行をするというものであり、いずれはそれを国民への増税負担で解消しようという経済発展のアクセルと国家財政健全化のブレーキを同時に踏むという未知の危険な賭けに挑戦しようというものであった。
 しかしその後、肝心の第3の矢の経済発展戦略の具体的・効果的政策が明確に打ち出せず、実体経済面での成果が未だに見られないまま、10月に消費全率を5%から3%上乗せして8%に引き上げるという増税策が発行し、景気の回復が順調に進まなかったので、再度5.5兆円の追加経済対策を行い、更に総額96兆円と膨らんだ2014年度の予算を決定し、何とか大手企業主体の業績回復、賃上げにまで漕ぎ付けたが、それでも円高から円安への急転が進み、賃上げを上回る物価の上昇となって、実質所得の減少、物価の上昇も調整インフレ目標の達成、デフレの完全解消までには至らず、その上に2014年4月に消費税率8%の実行がされたので、貧富格差の更なる増大となり、再々の日銀金融追加的緩和の劇薬投与ショック療法の効果も次第に薄れ、7月には集団的自衛権の行使容認、9月には閣僚の相次ぐ政治献金疑惑・辞任もあって内閣改造に着手、第2次安倍内閣発足となったが、結局、二兎を追うものは一兎をも得ずというちぐはぐな混迷状態が拡大し、円安倒産が再び増勢に転じるなどで、今月に発表された本年7月~9月のGDPは2期連続マイナスという状態で、急遽、今回の選挙に突入することとなった。

 主要な数字で2012年末対2014年末見通しでその推移を追うと(朝日新聞記事)

  日銀が市場に流通させた資金量 138兆円→275兆円 (199%増)
  為替相場(対ドル)       84円79銭→117円56銭(加速度的円安)
  日経平均株価       10,008.0円→17,735.8円(大幅な高騰)
  消費者物価(除く生鮮食品)   ▼0.2%→1.0%
                  (着実な上昇を示すも調整目標値2%には未達)
  有効求人倍率          0.83倍→1.99倍(やや改善)
  実質賃金            ▼1.6%→▼3.6%
                  (名目ではやや上昇したが実質ではそれ以上に減少)
  家計消費支出額(実質)     ▼0.7%→▼5.6%
                  (消費税の増率を上回る負担増で減少)
  国・地方の借金         932兆円→1,010兆円(108.4%増)
  トヨタ自動車の営業利益     1.3兆円→2.5兆円
                  (約2.8倍に増加し過去最高利益を記録)

となっている。

 安倍政権が描く経済成長路線への軌道乗せ、景気好循環のシナリオは、基本的には、国際環境や市場の実状に裏付けられた実体経済構造の改造や、需給の均衡による経済の質的改善、安定的好況への転換というよりは、本来なら禁じ手の無制限な超金融緩和で市場に出回るお金の量を増やし、人為的にミニ・バブル経済やインフレ経済を演出しようとするもので、それが予定通り順調に運ぶと、企業や個人家計が使える手元のお金が潤沢になり、その旺盛な消費購買力に支えられて需要が喚起され増大すると、企業業績が向上改善し、それで賃上げや雇用の増大が図られると、更に個人所得の回復向上となり、増収それにつれ税収も増えると国家や地方自治体の財政事情改善にも連なり、そうなると財政支出も活発になり公共事業や福祉事業予算も増え、赤字国債の回収も進み、公的債務の減少、公的財政の健全化とのなるであろうとした、獲らぬ狸の皮算用そのものである。
 このシナリオが崩れると、全てが逆に悪循環となり、膨らんだ公的債務(借金)の返済は後世にまで引き継がれ、いずれ近い将来の大増税となって民衆の負担に転嫁されるだけである。
 政府が主張する大企業優遇策による富の増大が、時日的なズレはあっても、やがては漸次末端の中小零細企業や庶民にまで浸透するという政策意図も理解できないわけではなく、確かに政府の税制などの優遇政策の恩恵を多く受けた大企業の業績回復は認められるが、現代のアメリカナイズされた大企業の経営倫理観は従来の感覚とは異なり、やくざの親分制度のような富の吸い上げシステムとなっており、国益より自社収益至上の利己的生き残り策最優先であり、下請け苛めや冷徹なリストラは改まっておらず、海外投資、投機的マネーゲームに重点が置かれ、日本の経済・産業の招来を遠謀した国内生産設備投資や高度技術の研究開発投資、人材育成投資には無関心なようで、折角の超金融緩和による潤沢な資金が国内で有効に循環・活用されることは少ないようである。
 このようにこれまでアベノミクスの効果を総括的に評価すると、巧妙なマスコミ操作での情宣活動で、一時的にせよ閉塞感にあった国民に一抹の希望を抱かせ、未知に挑戦する勇気を喚起させ、景気は気持ちからということを感じさせたことや、政策的支援の成果が部分的に生じたことあるが、それらは多分に人為的なミニ・バブル政策に乗せられた投機的な思惑からの株高や為替相場であり、必ずしも実体経済や企業活動の健全な発展や業績向上を繁栄した実質的な数値的成果とは言えず、いわばカルメ焼きのように膨らませた景気上昇感でしかなく、地中にしっかりと根づいた結果の樹木の生長とまではいえず、脆さと不安定さは拭いきれず、何らかのショックが加われば直ぐにでも破綻し墜落しかねない。
 安倍政権ではっきりとしたことは、安倍首相が益々祖父の岸元首相に似て、狡猾で高圧的・独裁的な権力を行使する官僚型政治家になって来たこと、あくまでもアメリカ追従の亜流であり、ユダヤ系アメリカンの金融市場主義経済を信奉し、日本の事情に応じた独自性や主体性の発揮や、理念や政策を持たないこと、右傾化を強め虚勢を張った力による外交を進めようとしているが、アメリカの威光に頼るトラの威を借る狐に過ぎず、内弁慶であること、財界や富裕者優遇志向で、中小零細企業や社会的弱者、低所得層や高齢者には冷淡で、負担の皺寄せ先と考えていること、国情としては、あらゆる分野で明暗・貧富の二極分が進み、国体に亀裂が入り体質的に脆くなったこと、中流層が減少し、体形的にはふっくらとしたビーナス型の健康美の安産系でなく、腰周りが痩せ細った貧弱で栄養失調の虚弱体質型になったこと、財物的豊かさの反面で精神文明の荒廃、社会秩序の混乱が一層顕著になったこと、政治家が大志を抱かぬ小粒になり、政治不信が強まり、どの党が与党になり、誰が総理になっても対して変わりはないと国民がすっかりしらけきっていることなどである。
 今後の日本再建政策として留意すべき主要事項は、①将来ビジョンとそれに至る基本的理念と方針の明示、②国民生活の安定・安心確保、③そのための、将来を展望した長期的経済安定成長の基盤構築、④経済発展を牽引する産業や企業の探求と育成、⑤税制の抜本的見直し、⑥極端な貧富格差の是正、⑦少子・高齢化対策と公的福祉制度の充実、⑧これらの施策で国内政治・経済の安定を確保した上で、国際交流への協調的参加とイニシアティブの発揮、⑨世界恒久的平和と繁栄への積極的貢献を目指すことであり、これらの目的と手段を履き違えることなく、上記のような手順を踏んで着実に取り組み、実現させることが肝要である。
 例えば、経済の安定的発展についても、そのために必要なモノ・カネ・ヒトなどといった基本的諸要素がバランスよく整い、有効に活用され、需要に見合った供給体制を確保するかが大切である。過剰供給や供給不足は、デフレやインフレの要因となるし、身の程を弁えない無理な背伸びの成長は、どこかに歪が生じるので永続しない。
 しかしこれらの諸要素の全てに恵まれた国は少なかろうが、それぞれなりの持ち味や特性を活かす工夫と努力が要求され、また不足分を各国の互恵の精神で自由交易し融通しあう環境を整えることが先決であり、独善的な姿勢や適度を越えた巨大化も、いつかは巨大化の弊害、上方指向の破局を招くというのが世の中の真理である。増税についても、わが国は国家財政が緊迫し、増税しないと国家破綻だといわれるが、まだまだ税の無駄使いがあり節税の余地があるし、富の適正な再配分、応能負担、逆不公平の是正、脱税監視の強化など、知恵を絞れば改善できることはいくらでもある。好ましい政治や経済の原点、根本的目的は、最大多数者の最大幸福の実現にあり、そのための手段として、経済・産業の発展や金融の円滑化、税制などがあるのであり、経済や企業の発展、不適切な税制、特定者の財物的豊かさ追求などのために、知能や技術が悪用されたり、大多数の民衆が苦しめられるというのでは、本末転倒も甚だしい。
 洋の東西を問わず、人類の素晴らしい英知や文化的遺産ともいうべき言葉や文字の源を辿ると、そこには真理が込められており、先賢の思慮深さに畏敬の念を抱かされるが、例えば経済の「経」は、枠組み、即ち道徳の枠内で、物事の筋道を通してことを成すことを意味し、「済」は、モノやカネの取引の決済をきちんとつけることを意味し、英語の「Economy(経済)」の語源はギリシャ語のOikosNomia、すなわちその語は「良い家庭管理、人間生活の安定」を意味し、日本でも昔、仁徳天皇が、民家から立ち昇る夕飯支度の煙をご覧になり、「民の竈は潤いにけり」と満足されたという逸話が伝えられているが、これも正しく素晴らしい為政者の人間生活の充実に主眼を置く優れた経済感覚といえよう。
 アクセルとブレーキを同時に踏むような芸当技の運転では、スムーズで安全な交通は保証されず、乗客は安心して快適なドライブを楽しめない。
 アベノミクスも、目先の成果を焦った奇策より正道を辿ってこそ、良い成果が得られるものではなかろうか。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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