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今次の内閣改造は将来日本の再興に有効か?

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公開日付:2014.10.10

(1)今次の安倍内閣改造の評価

 第2次安倍晋三政権発足後1年8ケ月を経て初の内閣改造が実施され、改めて経済発展優先でその実行・実現を目指すことと、目玉政策としては地方創生と国家安全保障体制の法整備が打ち出された。
 安倍首相は組閣直後の記者会見で、今回の内閣改造の主旨を「地方の活性化と、切れ目のない安全保障の法整備を加速し、心機一転、元気で豊かな日本の将来を見据えた、有言実行・政策実現を目指し、新閣僚総数18人中で初入閣は8人、内女性閣僚も過去最多の5人を登用、新設の地方創生担当相に石破氏を任命、連合与党の公明党からも1名起用し、挙党一致で、さらにこれを大胆かつ強力に推進するために内閣改造をし、長期安定政権で国難打破を目指す」と胸を張って表明をした。
 しかしながら、相変わらず弁舌は滑らかだが、抽象的な美辞麗句の羅列で自画自賛をするが、その内容には具体性が欠け、新味がなく、新閣僚の顔ぶれを見ても人心一新の新鮮さが見られず、どの分野に重点を置いたかも不明であり、また、まだアベノミクスによる経済成長路線への軌道乗せ成果も確認できない途中の多事多難なこの時期に、なぜあえて内閣改造に着手したかの必然性や妥当性が理解し難い。
 いくらまやかしで大義名分の理屈をつけても、所詮は、政権与党の圧倒的勢力と自己の政権維持を磐石にし、政治生命の保全・延命を図り、独裁専政力を強め、アメリカが執拗に要求する集団的自衛権の行使や極東戦略への協力体制の強化と具現化、更なる消費税率アップによる国家財政健全化、大企業や富裕者優遇による経済成長主体のアベノミクすの成功などの目先の難題克服への法制改正や政策を強引に押し通し易くするための体制づくりとして、自分に盲従するイエスマンだけで周囲を固め、ライバルを取り込み、党内不平分子をなだめるガス抜きとしての初入閣者選定などといった程度の内閣改造でしかなかたといえる。
 明確になったことは、当初から予感した通り、安倍首相の政治姿勢が、アメリカ偏重追従でタカ派的であること、圧倒的多数の与党勢力に奢った傲慢さ、祖父である岸元首相に益々似てきたが、岸ほど読みの深さがないこと、マスコミや官僚の抱き込み、支援ばら撒き外交の展開、議会運営が、最初から消費税率アップなどの結論ありきで、手続き的にセレモニー化した審議でしかないこと、大企業と富裕層優遇、社会的弱者の福祉カット、原子力発電再開への変節、欺瞞的自己演出が巧妙になったこと、目先の小手先対応しか考えず、壮大な遠謀と構想で、未来の日本再興隆の姿や新世界秩序構築への積極的指導力発揮の具体的ビジョンも長期戦略的思考も持っていないことなどであり、とても明日を見据えた抜本的な国家大改造などは期待できそうにない。
 従来から、より良い未来のためにとか、環境変化への適応のため、マンネリの打破、人心一新、淀んだ水の腐敗防止、易姓革命(古代中国の政治思想で、天命による有徳者の選出による政権浄化)などといった美名の下で政権の変革は行われることが多いが、実際は、バブル経済破綻後の混迷期や江戸末期の幕政の混乱、プロ野球の監督交代などの例からもご理解いただけるように、政権トップや幕閣人事の交代が頻繁に行われる時は、環境が急変し、その適応に迫られた時、種々の難題を抱え政権が適応ができず手詰まりで、青果が上がらない時、国民の不信を招いた時、政権が弱体化し、その補強改修の危機に立たされた時、権力闘争や理念の相違などから内部亀裂や対立が生じ、その相手勢力を弱め、一掃を図る荒療治策、時流の変化や社会変動が激しく将来が見通せずに混迷し、経済優先から国民生活の安心優先か、物質文明重視か精神文明重視か、戦争か平和か、鎖国か攘夷かなどといったように、理念や方針、価値観などが揺らいで二分し、これらのどちらを大多数の者が選択し信任するかの判断がつけ難く、その審判を問う時などであり、概して、あまり前向きではなく、国際・国内経済社会情勢、国民生活などが順調で平穏している恵まれた状況や、政権への信頼・支持が絶対的で安定している時期とはいえず、さまざまな分野の構造、人間の意識や価値観、時代をリードする思想や指導者、国家、産業、企業などの主役が交代するなど、世の中が大きく様変わりする前兆期ともいえる。
 したがって、あまりにも頻繁な政変や為政者の交代は、国際・国内的なイメージの悪化や不信頼、信用失墜、社会不安や混乱などの因ともなるし、諸種の制度や計画の見直し変更を余儀なくされなどの無駄も生じるので、いずれにしてもあまり好ましく歓迎できる事態とはいえず、為政権力者にとっては特権を行使し得る得策であろうが、安定を好む一般庶民にとっては、今この重要な時期に、必要性がある「徳策」とは感じられないことが多い。
 しかも、第2回目の安倍政権発足当初の組閣で、既に、「圧倒的安定多数の支持を背景に、最強・最善の適材適所内閣を結成した」と述べていたので、今回はその後に後継人材を育成したということもなく、それ以上の党内逸材は望むべくもなく、むしろ今次の組閣では、過去の実績不詳の小粒揃いで無難な人選、当選5回以上という不文律の大臣該当者の順送り在庫整理的入閣となったので、いよいよ大勢力の自民党も人材が払底し、後継人材不在であることや、自民公明連合与党内も、総理の功名の焦り過ぎや独断専行、アメリカ一辺倒のタカ派姿勢の危なさを懸念する異分子が潜在し、磐石の体制に亀裂が生じつつあることを露呈したので、強力な内閣への改造というより脆弱な改悪内閣となったとの印象の方が強い。
 期待がかかるアベノミクスも、その迎え火といえる第1の矢の超金融緩和、第2の矢の積極的財政出動の火が燃え尽きそうだというのに、仕上げの第3の矢の火が実体経済にまで点火して燃え盛らず、肝心の最重要課題である経済安定成長を確実とする、なるほどと納得できる具体的な長期戦略的な政策が未だに打ち出せないままで、財界優遇策や消費増税、原子力発電の再開などだけは粛々というよりひそひそ着々と進めら、東日本大地震からの復興は3年半を経てもまだ30%以下と遅々として進まず、大部分の中小零細企業や一般庶民、高齢者などの社会的弱者には、その恩恵に浴さないばかりか、とても景気回復の気配さえ感じられず、逆に円安による消費物価高や福祉のカットなど皺寄せの犠牲とされ、富の偏重で貧富格差は拡大する一方であるのに、政府は旧態依然として、問題が生じてからの後追いで、小手先の弥縫対症療法に振り回され、事前の予防策や、未来に向けての国家再興隆や戦略的な国際外交の布石は打てず、責任回避と中央財政負担軽減のための口先だけの地方分権による創生や、民間の活力、国民の自主性尊重でしかなく、それでいてお金儲けのためなら、精神文明の荒廃や犯罪の増加などが危惧され反対意見も多いと言うのに、それは黙殺して賭博施設の開設まで公認しようとするなど、とても安倍首相が公言するような「遠大な構想で、将来の豊かで楽しく明るく、安全・安心のできる、品格ある日本への再構築と世界平和実現への貢献」といった政治姿勢や国家構造の改革にはほぼ遠いものであったといえる。
 故に当分はまだこの経済混迷と厳しい道程が続き、もし2025年頃までに将来の国家像に向けての路線が整備されないとなれば、少子高齢化が進み高度技術的優位性が弱まる日本は、世界の先進国から、特性も品性もない並みの国家に成り下がりかねない。

(2)今後の日本のあるべき姿

 わが国がこういった状態にある中においても、世界は常に変動を続けており、たとえば、①20世紀の後半から21世紀当初の世界をリードし独占的覇権を制したアメリカの繁栄が、借金による大量生産、大量消費、大量信用により支えられていた結果、貿易赤字と財政赤字の双子の赤字を抱えて限界に達し、峠を越えて下り局面に入ったこと、②その自由資本主義市場経済に歪や矛盾が露見するに至り、行過ぎたマネーゲームや市場万能主義、過剰な競争社会、グローバルスタンダード、収益至上の拝金主義が批判され、修正を求められるようになったこと、③世界的信頼と威圧力が低下し、国際的紛争を仲裁するポリス国家不在となり、この間隙を狙って④新興中国が急速に台頭し、その人口の巨大さから2025年にはGDPでアメリカを抜いて世界一になると予測されているし、⑤ロシヤの国際政治・軍事・外交・経済的復権、⑥欧米・旧ソ連などなどの植民地化や支配下にあった東欧、西アジア、アフリカ地域を主体とする諸国の自主権の要求や独立運動が激化すること、発展途上国だけでなく、⑦ソ連に続きイギリス、中国など成熟した連合大国の分裂気運さえ高まること、⑧これに伴う領土や領海、資源開発権などを巡る紛争の顕在化と世界規模の争乱への拡大が懸念されること、⑨世界的な貧富格差の増大と不安定化、⑩キリスト教圏国に対するイスラム教圏国の対抗意識激化など、まさに筆者が予てから主張し警告を発してきた「世紀の移転期は、前世紀の残滓の大清算と、主役交代の大激動期となる」、「物極必反」、「大きいことだけが良いことか?」が現実のものとなったが、これからはスモール・バット・スマート・アンド・ストロング、つまり「小さくとも高品格、高品質の優等生」といった国家が世界を主導する時代になるであろうが、わが国は今後の舵取り次第で、その候補国となる資質や潜在能力を秘めている。
 日本もこの時流変化の波に乗り遅れてはならないが、その潮流は上記のように従来とは確実に変様しているので、従来のような漸進的な発想や手段でなく、思い切った根本的な意識や発想、政策や手法の劇的な変革をしなければ対処し得なくなるし、降りかかる当面の問題処理に注力することももちろん大切だが、将来への布石や地盤固め、路線の敷設も忘れてはならず、改造内閣にはそれが期待され、それによってこそ、国民のやる気や、元気も明るさも、国家の明るい未来が拓けるというものである。
 そのためには、正しい現状に認識と、状況の判断があっての正しい行動であるから、その順序を間違えることなく、先ずは現在の日本の実態を、わかりやすく人体の体格・体力・体質に例えて見てみよう。
 体格に当たる外観的国家の規模の大きさでは、わが国の国土面積378千平方キロメートルは世界陸地総面積の0.3%に過ぎない狭さであるが、それでも世界15位で、未開の海洋資源が眠っている経済水域を加えた領有面積では、オーストラリア並みの世界ベスト10以内の大国となる。地形的には南北に細長い島国であり、そこで約127百万人、世界総人口の2.2%(世界7位)が生活し、経済規模を示すGDPでは約520兆円と世界の約10%を稼ぎ出し、米・中国に次ぐ第3位であるから、いわば細身で小柄なようだが、機敏に良く働く運動力があり、重い荷物も担げるし、将来の潜在成長力を秘めた丈夫な体格といえよう。
 体力的には、輸出で世界の12%、輸入で世界の9%を占めるが、天然埋蔵エネルギーや産業基礎資源が乏しく、食料自給率も低いので、いずれも海外貿易依存度が高く、その上に火山帯で地震・津波・台風・火山噴火などといった天然災害の発生も多いが、勤勉で効率よく働き、不時の災害に備える貯蓄性向も強いという国民性があり、高密度社会を形成しており、いわば家庭内食事より外食で栄養素を摂取・確保する傾向があるものの、秩序正しい生活態様であるので、怪我を負うことはあっても、大病を患うことは少ない世界一の長寿国(女性87歳、男性80歳)、事故や犯罪の発生率も低い安全な国家であり、いわば粘り強く健全な体力を保持しているといえよう。
 体質的には、国民一人当たりGDPでは世界第8位で中国の約14倍、可住地面積1平方キロメートル辺りのGDPでは世界第1位、中国の約32倍といったように非常に高密度な発展をしており、国防予算額では約5兆円と世界第4位ではあるが、その対GDP比では1%を厳守し、核武装も対外侵略戦争も厳禁しているといった世界平和を志向する国家であり、所得分配の適正さを示すジニ係数が主要経済大国の中ではアメリカ、中国に次いで高く、貧富格差の大きさや、欧米の影響を受けて市場経済の感染病に罹り易い(為替や株価の市場価格変動リスク)という難点はあるものの、概して健全で強靭な体質、総じて体格・体力・体質が比較的にバランスよく整った国といえる。
 ゴールドマン・サックス社の予測調査では、2020年のGDPが1位アメリカ約18兆ドル、2位中国が約12兆ドル、3位の日本が約5兆ドルで、中国は日本の約2倍になるとなっており、その成長率が1位中国8.2%、2位インド6.0%、アメリカ5位で2.2%、日本が11位で1.1%であることから、2030年には、中国がアメリカを抜いて世界一位になることは間違いなく、所謂BRICs5カ国が躍進・台頭し、この5カ国合計で世界経済の約30%強を占め、日・米の合計を上回るに至るとしている。
 世界有数の広大な国土面積と資源、人口に恵まれながら、これまで出遅れていただけに今後の伸び代が大きい中国と、人口飽和から減少に向かい、少子高齢化が進む日本とでは、このままの勢いが続けば、やがてGDPで中国が日本を追い越し逆転することは当然のことであろうが、自由資本主義が主流の世界経済体制の中で、多種の民族混合、貧富格差の増大を抱えながら、一国二制度の複雑な使い分け、情報統制や独裁制、世界との協調や整合性を貫くことは至難であろうから、やがては急成長の反動、バブル破綻の時期を迎えるであろうし、もう既にその兆候が顕著になっている。
 この点についてはアメリカのCIAも、中国は巨大でも脆弱な国であり、今後はバブル経済の収縮も必至となろうが、出来るだけ緩やかな軟着陸を考えており、そのためにも、内政の不調さや不満を、外政の厳しさに民衆の目をそらすことで乗り切ろうとしているに過ぎず、だから本音では対外戦争や防衛力の強化にあまりお金は使いたくないので、日本と今、本気で争い対決する気はないとし、その点は隣国の日本が最も良く理解しなければならないこと、日中関係の先鋭化をアメリカは懸念し、望まず、従って積極的介入も日本支援もしたくない。中国の共産党支配や官の統制は加速度的に弱体化し、昔は圧倒的だった国営企業従業者は現在では3%にまで低下するなど、党・政・軍の分離が進んで統制が利かなくなっており、内部分裂から経済成長が鈍化し、国内混迷、崩壊リスクも高まっているが、世界の工場として海外輸出依存が強いから、経済不振、外国からの投資減退、株価暴落、外資企業の一斉引き上げを最も怖れている。北朝鮮や韓国の事情もこれに近いと読んでいる。
 EU経済も、加盟国間の経済格差があり、決して一枚岩の磐石な体制とはいえないが、牽引国ドイツ、フランスなどが比較的健全な思考力を有し、アメリカ流の投機的市場経済にも煽られず冷静に対処し、核武装の抑制、脱原子力発電、自然エネルギーの開発、環境保護や福祉行政にも積極的・進歩的である。
 よってこれからの日本も、アメリカ一辺倒の従属・亜流姿勢を改めること、外交近攻の虚勢の対中・韓外交姿勢より、現代の戦争は過去のような武力の直接的衝突という、いわゆるハードの熱い戦争でなくソフトの闘いが主体になっているので、武装は対抗上の威圧的牽制に過ぎなくなり、それよりも話し合い外交の闘い、それも感情より勘定に訴え、事実に基づく説得力のある主導的外交に転じること、内政の安定と充実優先に努めること、ドイツ、オランダ、北欧諸侯に見習い、脱原発も含めて、自国の特性を活かした独自の長期戦略的政策を確立し、近未来世界のモデル国家建設を目指すべきである。
 道に迷った時、焦りから新奇を狙った近代化は近代「禍」、一発狙いの博打経済は大怪我のもとであるから、今こそ、「自然は最も良き教科書」、「真理に基づく好ましい政治や経済の原点回帰」が肝要であり、「敵を知り(相手の実態や手の内をよく研究して理解すること)、己を知れば(自己の実情や実力を冷静に認識し、その特性や利点をフルに活用すること)」、百戦するも脆うからず(なにごとも失敗せず、良い成果を得るということ)」を肝に銘じた新安倍内閣の良識覚醒と尽力に期待したい。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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