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正体を顕現した安倍自民党経済政策の中間評価

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公開日付:2014.08.15

(1)正体を顕現させた安倍政権

 無定見で権力迎合色が強いマスコミを巧みに操ったアベノミクスの煽動で、自民党が総選挙で大勝し安倍政権が発足した当時から、筆者は「自民党を独占的に大勝させ過ぎた弊害を危惧する」、アベノミクスは「糖衣錠劇薬投与、小手先対症療法の危険な賭けであり、目先の効果があったとしても、投薬を打ちきった後の反動と副作用が怖い」、「わが国の将来のあるべき姿を展望・明示した長期計画的で永続性のある根本的な国家の体質・構造改革や再興隆への具体策が見えない」し、安倍総理は、日米安保条約批准を曖昧な説明のままで強行した「鷹派官僚政治家であった岸信介の血を濃く引く、柔和な仮面を被った親米の鷹派、財界優遇志向」であると見通し、「この暴走を牽制する良識派野党の結束と出現が必要である」とも訴え、野次馬による一時的な人気を諸手を上げて歓迎せず、一抹の慎重さと警戒心をもって今後のお手並みを注意深く見守り、評価すべきだ」と主張してきた。
 案の定ここに来て、アメリカ追従姿勢と財界大企業や富裕者優遇・優先による政権安定策、憲法条文の拡大解釈により自主国防軍事力の強化や、同盟国と連携した自衛隊の海外派兵、武器輸出への道を拓くといった強気の言動、確実な景気浮上重視を大義とした原子力発電所の再稼働促進、多方面外交による中国牽制などといった鷹派の姿勢を露呈することとなった。
 安倍総理だけでなく、国会議決の過半数を制する多数の力を駆って、これを好機として矢継ぎ早に思い切った新政策を打ち出し、重要法案を成立させて、インフラの整備、国家経済・産業の振興、財政の健全化、国民福祉の向上などを図り、国際外交においても影響力を高め、国威を世界に示そうとするなどの行為は、政治家なら誰もが採るであろう常套手段といえる。
 従ってそういった政策を志向する安倍政権の全てを、一概に多勢に奢った不当なものと批判するものではなく、善意に解釈すれば、多少のリスクを覚悟の上で大胆な長期不況から脱却するための荒療治策としてアベノミクスの導入を決めたこと、長期不況で沈滞していた国民に、その効果を自信ありげに表明し、将来に夢を抱かせるように催眠術的に誘導したことなどは、安倍総理の奇抜な発想力と決断力、本気でやる気の改善志向、積極的実践行動力、第1次の政権担当時とは一味違った進化を見せた政治家としての巧妙な手法、また、アメリカ一辺倒でない自主的多方面国際外交の積極的展開なども妥当なことといえよう。
 確かに、大過なく無難にとあえて政治生命をかけ苦難な課題の解決や国家体質の構造改革に着手しようとしなかった、近年の歴代首相(小泉元首相は例外として除く)の短期内閣よりはましで、真面目に良く働いている部類の総理と一応評価されよう。

(2)起死回生の奇策アベノミクスの中間評価

 しかしそれはあくまでも、その内容と成果が伴ってのことであるが、とにかくこれまでの段階は、喫緊の重要課題であったデフレ脱却と景気浮上路線への転換、国家財政の健全化という対処療法を最優先し、内政の安定化を図ってから、次いで対外問題や将来の日本再興隆に向けて本腰を入れて取り組むという手順の過程だとは斟酌する。
 そういう面では、安倍政権の経済政策の柱とするアベノミクスの実施表明は、バブル破綻後の長期デフレ不況で栄衰の瀬戸際に立たされたわが国の窮状を、率直・公明に全国民に伝えたこと、その上で、行政、産業界、国民などの関係各方面それぞれに、多少のリスクと苦難の応分の分かち合いと協力を素直に訴求したこと、このアナウンスメント効果で、閉塞状態にあった産業界や国民に、国家の将来への希望の火を灯し、やる気を起こさせたこと、これまでのわが国行政の通例であった政策の段階的小出しや後出しでなく、3本の矢を矢継ぎ早に一斉に打ち出し、特に資金的手当てとして、日銀とも呼吸を合わせて、危険な賭けであることを承知で思い切った無制限の超金融量的緩和と、一時的な国家財政の悪化を覚悟で積極的な財政出動政策を実施し、政府自らが経済再建への本気度と背水の陣で臨む姿勢を示したこと、こういった心理的な効果だけで、これまで低迷していた株価が上昇に転じ、それが海外大手投資家にも好感を抱かせ、火勢を一気に燃え上がらせ、投資金融経済を主導的として、目先の景気を再上昇に転じさせた。
 それに、これらと時期を合わせ、アメリカ経済の復調と自動車輸出の好調さという環境好転の後押しも伴ったが、こういった安倍総理の運気の強さも、能力と功績のうちといえようから、これまでのアベノミクスの中間総括的評価は、先ずは「順調な滑り出しであった」といえるが、今後は、最後の仕上げとなる第3の矢の経済政策の内容と成果次第にかかるので、現段階の中間評価としては、「出足は良い良い、今後が正念場、将来が不安」とまとめられようか。

(3)安倍政権の今後の課題と問題点

 安倍政権がアベノミクスの最後の仕上げで成果を上げ得るかどうかは、その肝心要の第3の矢である経済政策の具体的内容の打ち出しと実践の適否にかかるが、これについては、未だにもう一つこれといったキメ手とする具体的な施策が見えず、現時点では、第1、第2の矢の緊急治療策としての劇薬投与で、取り敢えずは病状悪化が止まり、やや回復に向かいつつあるが、まだ手放し安心でき、投薬をやめても大丈夫、実体経済が自立的に元気差を取り戻したという状態にまでは至っておらず、むしろ実情は、緊急諸施策から派生した諸問題の弥縫策に追われている感がある。
 それよりも心配なことは、その成果、とりわけ実態経済の自立的回復・好況感を末端の中小企業や庶民が実感する前に、もうすでに第1の矢の異次元の超金融緩和政策、第2の矢の財政出動の薬効が薄らぎはじめ、さらにここまでほぼ順調に推移してきた景気浮上にも力強さが失われはじめ、GDP構成比で約75%を占め経済成長推進力の主要エンジンともいうべき民間企業設備投資と個人消費の両者の伸びが鈍化傾向に再び転じ、目下は株価の維持と、輸出入に大きく影響する円相場だけが頼りという状態になってきたが、その株価や為替相場も、中東・西アジア諸国の内紛増発で原油価格の高騰が続き、海外投資家の買い越しで支えられてきた相場価格が、その思惑次第で一斉売り逃げ、反転急暴落といった危険性が多分に生じてきたことである。
 その上に多数の力に奢ってか、十分な本質的問題の審議も国民への説明も、当初より曖昧・不十分で形式的通過儀礼のようになり、日本の将来を左右する重要問題である国防やエネルギー問題などを、憲法条文の都合の良い拡大解釈だけで、同盟国と連携の下でとはいえ、自衛隊の海外派兵・戦闘参加を可能にすることや、領海・領有権を巡り関係国に刺激的な言動を強めたり、放射能漏洩・汚染被害の甚大さを承知しながら、その解消策も未開発なままで、財界の要求を受け入れて原子力発電の再稼働を促進させるなど、重要法案を次々に通そうと画策する強引な国会運営を展開するようになったことで、これまで付和雷同しやすい民衆の大人気を得てきた安倍政権の支持率が、その希望と期待のしぼみから60%近くに低落することとなり、このままでは来年に見込んでいる消費税10%への再増率も危ぶまれ、アベノミクスによる安定的経済成長路線への転換が腰折れし、何もかもが中途半端で挫折しかねないと危惧する。
 それに、国内・外の環境情勢にも、変化の兆しが覗える。国内的には、安倍自民党政権は、大企業や富裕層優遇・支援を優先し、その好況の恩恵がやがては徐々ながらも下請け中小企業や下層の庶民生活にまで浸潤して行くであろうといった考え方の政策をとっているが、現実にはその思惑通りにはならず、社会的弱者は、不況の影響は一番早く受け、好況の恩恵を受けるのは遅く最後になるというのが通例であり、大企業や富裕層は優遇を受けて豊かになった手元資金を、富の再生産に有益な国内企業設備への投資や、新技術の新エネルギーの研究・開発などには、回収に期間を要し資金の回転が悪いので投資せず、目先の巨利を狙う海外のマネーゲームに向け、その利益金はタックスへブン国で管理するだけで、国家経済への直接的な寄与度は案外低いというのが現実とされ、貧富格差は益々増大するばかりで、その犠牲にされた中小企業や庶民の不満が鬱積し爆発寸前で、アメリカや中国、韓国、EUの弱小国と同様、国内争乱発生の危機警戒ラインに達しつつあること、国政の基礎データを提供する統計調査の手法に政治的作為が入り込み、しかもそれでアウトプットされたデータを、欧米のように中位数や加重平均値主体で処理・認知せず、わが国は単純平均で判断する傾向がるので、雇用・賃金・所得・消費者物価・預貯金の保有高など、多くの面で下層庶民の実態と乖離した感覚の治世おなっていること、東日本大地震・津波での原子力発電所放射能漏洩・汚染被害が想定外に甚大で、その処理や復興策が後手後手に回り、大幅に遅れていること、自然環境破壊の結果としての異常気象や天然災害の増発、エネルギーや産業基礎資源、食料資源の確保難、総人口・労働力人口の減少化に伴う雇用のミスマッチや、少子高齢化社会の加速化と、その対応政策の遅れ、これらによる国民の将来不安感増幅、国民の学業知識水準や産業技術、社会秩序遵守意識の低下傾向、勤労意識や幸福に対する価値観の多様・複雑化、財物文明の発展の反面での社会秩序や遵法意識、公衆道徳心などの精神文明の荒廃、犯罪発生率の増加傾向など、国家経済発展の基礎となる要素から根底的な大きな変動が生じつつあり、表層的なシステムの改善だけでなく、根本的な国家構造や体質の大改革、国民意識の刷新が要求され、長期計画的に取り組むべき難題が山積している。
 国際環境としては、近代世界を主導してきた主役の交代期で、新世界秩序再構築の過渡期としての混迷、世界を主導してきた単独超大国アメリカの威信低下で、世界のポリス国家が不在になること、これまでの世界経済を支配してきた欧米流自由・資本主義、投資金融・市場主義経済の綻び、その間隙を突くような従来の被支配植民地国が発展途上国として独立志向を強め、ナショナリズムが台頭すること、これらによるイデオロギーや宗教、イデオロギー対立と局地的紛争の増発などで軍事的緊張が高まること、崩れたミリタリー・バランスの再構築、経済グローバル化に伴う経済・貿易競争激化、経済ブロック化で世界の勢力図が塗りかえられること、世界の生産工場国として急発展した中国・韓国のバブル経済破綻の兆し顕著化、東南アジア諸国の発展、地域別経済格差の増大、経済後進国での人口爆発的増加の一方で、先進国では少子高齢化が加速するなど世界の人口構造に大きな変動があること、地球自然環境の破壊が進み、異常気象もあって、地球の需要と供給環境が逆転、近い将来、天然埋蔵鉱物資源や食料資源の枯渇化が深刻化し、飢餓で困窮する難民が増加する傾向にあること、環境汚染の防止上から新エネルギーの開発が共通的課題となり、国家間でこれらの確保競争が激化することなど、いずれも予断が許されない厳しさとなるので、自給自足率が低く国際取引に頼る日本、それに成否が係るアベノミクスにとっては大きなマイナス要因となる。
 このような大局的視野で考察すると、安倍自民党政権とアベノミクスの重大な問題点は、こういった内外情勢の激変動向を先読み・先取り感覚がかけていること、その上で未来に向けて、それに対応し得るどのような日本国にするかの根本的理念と将来ビジョンが確立されていないこと、そういった長期的展望に立つ日本再構築の目標と、それを実現するための設計図が明確且つ具体的に描かれていないこと、目先の選挙対策人気取りや政権維持、経済的成果に捉われ、長期戦略的な将来への布石が打たれていないこと、これらを整備するに当たり、未だにアメリカ追従の亜流で良しとし、毅然とした日本独自の主体性のある国家像や、その運営哲学がないこと、行過ぎた昨今のアメリカ流のグローバル・スタンダードを、世界の主流をなす正しいもの、近代化の最先端を行くものと勘違いし、各国それぞれなりに置かれた環境や条件への適応や、その特性を最大限に発揮した国際貢献などといった生き様、大自然の摂理や好ましい政治・経済の真理や原点を見失っていることなどである。
 上記したようなことからの地球環境や世界を深慮すると、もはや自国だけの利益や安全を主張したり、自己の権力誇示から、領土や領有水域占拠のための軍備の拡大競争や武力戦争、経済・貿易競争での勝敗に拘わったり、力に任せて諸資源の醜い奪い合いをすることなどは愚かなことであり、ましてやそのために謀略の罠を仕掛け、特定他国を敵国視して讒言で陥れようと画するような卑劣な行為は、国際的に許されないし、それでは結局、勝ちも負けもなく両者共倒れ、いや全世界・全人類の滅亡に連なる悲劇を招くこととなろう。
 21世紀の近未来時代は、なにごとにつけ利己的なナショナリズムを超越し、グローバリズムの観点に立ち、世界一国家・全人類一家族といった理念で、地球ぐるみの平和と安全・安定・幸福の実現、人類のみならず、全地球生物の共生・共存・共栄を志向すべきであり、これを異端者の非現実的な単なる絵空事、永遠に実現不可な理想像に過ぎないと黙殺してはならない。
 強大国に陸続きで囲まれながらも、専守防衛力だけで永世中立を貫き通し、恵まれない環境条件下でも、その特性を活かし、立派に個性と風格のある国家を運営・維持し、国民一人当たり所得でも世界の中で高水準にあるスイスや、経済的にはまだ小規模で貧しくも、心豊かに生き、国民の満足度が98%で世界一といった山岳国ブータンのような国も現実に存在しているのだから。
 そのためには、アメリカ一辺倒の追従、亜流を改めること、行過ぎた自由・資本主義経済の欠陥を修正した新しい経済理念やシステムを探求すること、極端な貧富格差を、税制や社会福祉制度の見直しなどで富の分配の適正化を図り、消費需要を多分に潜在する中間所得層や下層庶民を元気にし、潜在需要を顕在化させる頭寒足熱政策に発想を転換すること、日本を世界の高度技術開発研究室、高度精密加工貿易立国、物心一如の品格のある専守防衛の平和志向国家とすること、積極的な財政投資金を、従来のような不要不急で非生産的な箱者やレジャー施設の建設から、石油や原子力発電に替わる新天然エネルギーの開発や最先端技術や製品の研究・開発投資に向けること、生産性の向上や省資源、高効率化に更なる努力をすること、先進主要国は、経済後進国や発展途上国から、更に資源や富の奪取を図ることより、むしろこれら諸国の成長発展を積極的に支援し、豊かなマーケットに育てあげることで、新規需要を生み出す努力をすること、それには国民の教育と技脳水準を高め、意識革新を図る啓蒙教育の重視と実施に努めることが肝要であり、お金儲けのためにカジノ娯楽施設を建設することなどは論外である。
 安倍政権が、アベノミクスで差し当たりの経済安定成長路線への軌道乗せた見事に成功した後には、再び、奇抜な発想と思い切った決断で、新時代を主導する世界のモデル国家先行あるべきだといったような品格ある日本への再興隆を目指して尽力していただくことを期待して止まない。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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