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消費税増税の論理の日本経済への影響

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公開日付:2014.04.18

(1)税制が示す国家の性格と政策方針

予てから関心が強く社会論議の的になっていた消費税の3%増税がいよいよ今月から実施され、合計8%の消費税となった。
本年には、3月の平成25年度確定申告期に、それまで国民の十分な周知徹底が図られていたとはいえない東日本大震災からの復興を目的とした「震災復興特別所得税・法人税(注:平成23年11月に復興財源確保特別措置法に基づき創設され、同年12月に施行された、所得税で2.1%の税率で、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの25年間、納税負担が義務付けられるもので、これで25年間の所得税だけの税収総額で25~35兆円の税収になると推計される)」が上乗せ課税になっているのに驚かれた方も多かったであろうから、アベノミクスの行方への不安や福祉の抑制に加え。優遇税制の恩恵に浴さない一般国民や中小零細企業にとっては非常に厳しいものがある。
その上本年の消費増税だけに止まらず、これはあくまでも段階的ステップの税率アップでしかなく、来年10月からはもう2%の税率アップ、都合10%への消費税増税が予定されているというより、既成の事実とさえなっているのである。
しかしこれが消費税増税の最終目標税率ではなく、少子高齢化社会が進展する下で現行の社会保障制度を維持するには、近い将来更に、北欧並みの25%程度まで税率を引き上げる必要があると早くも宣伝・画策する税調委員や政府の御用有識者、財界人も結構存在するというのが実情である。
にもかかわらず、安倍首相に巧妙に丸め込まれた主要マスコミは、駆け込み需要で百貨店やスーパーが賑わい、マンションや高級外車、白物家電の売り上げ好調、ブランド品や貴金属店が活況を呈し、大手企業の賃上げも順調などと、増税し易い環境醸成に都合の良い情報を垂れ流すばかりであり、その影で、欧州並みの生活必需品や医療費の消費税非課税制度の導入、逆累進性の更なる増大是正、富裕者優遇税制の不公平さ見直し、きめ細かな多段階所得税率、応能のアクセントつけた税制への抜本的改革を求め、社会的弱者切り捨て、福祉負担増の冷酷さへの不満など、庶民の切実な苦痛の声には耳をかさず、増税後の需要の反動落、危険な賭けのアベノミクスの脆さ、万一これが期待はずれになった場合の日本経済の悲惨さや、その対応策の準備状況、地方実体経済の深刻さなど、不都合な点については一切触れようともしない。
東日本地震災害の復興特別税のような特例法に関しては、緊急対策の目的税であり、その互助の必要性を国民も十分に理解し得るから、与野党共に賛同し、すんなりとこの痛みを分かち合う税負担増を容認したように、大部分の心ある日本の民衆は、なんでもかんでも公権力への反発からの不満や抵抗ばかりではなく、いざとなり、十分で正直な事前の事情説明があって納得すれば、良識を支持、協力もする。
ただし、事前に公明で率直な情報の開示や説明、十分な国会討議がされなかったり、「民は由らしむべし、知らしむべからず」という先賢の名言を曲解して、不都合な点は秘し、都合の良いことだけを強調し、民意を無視し、多数の力に頼って抜き打ち的に強引に法案を押し通そうとする卑劣な手段を講じたり、税金の使途の不正・流用や、結果報告の不明朗さがあれば、不満で我慢がならず無言の反抗を示すのだ。
今次の、復興特別税の創設時や政権交代を狙う選挙時には、消費税増税を強調せず曖昧にし、増税なき景気回復を訴え、美辞麗句の目先の経済政策、対話による平和外交などを掲げて選挙の人気取りをしながら、圧勝で政権を得るや、露骨な大手企業や富裕者優遇、弱者切捨ての姿勢に転じたり、国家機密法の導入や軍事力の強化による空威張りの力の外交政策を示すようになったことなども、全てこの類であるといえよう。
現段階でのアベノミクスは、麻薬投与の対症療法による一時的な、実体の伴わない資産の膨張による不安定な景気回復でしかなく、将来を展望した持続性と抜本的な経済体質の強化のまでは踏み込まれていないので、この程度の好景気で浮かれることなく、来年の消費税率アップの反動も含めた上で、危険な賭けである安倍首相の経済政策の成果を、冷静且つ慎重に見極め、評価すべきであろう。
そういった面からも、税制の適否は、その目的や機能が、①国家や地域社会を管理・運営・維持するに必要な「国家財政の歳入確保と健全化」(平成26年度の予算では、税収が約50兆円と久々に国債発行収入約42兆円を上回り、歳入総額の約54%を担っている)、②そのために必要な「経費の国民分担金」、③これにより形成された道路や水道など公的社会インフラの利用や、老後生活の保障、医療福祉など、「公益サービスの利用料、受益のための権利金」、④国家的な「経済・景気の調整手段」、⑤国民が総出で稼ぎだ「総所得の適正再分配」と、これによる不適切な貧富格差の是正手段、⑥国民が健全で安心出来る生活を維持し、ある程度の資産形成を可能にするための「国民生活の支援と調整」、⑦これらを通じて憲法で保証されている「国民の権利」を守り、⑧そのためには国民(法人、個人)に、事業所得や給与所得、資産所得、金融所得など10分類の所得に応分する「納税の義務」を課すとし、その他の教育、勤労の義務を加えた3項を国民の3大義務として憲法に明記されており、国家の性格や体格づくり、将来の運命にも大きな影響力を与える重大な政治的課題である。
とはいえ、これこそが絶対に好ましい永久不変の税制だといった絶対的論理やワンベストの徴税手法はなく、時代背景や置かれた環境条件、年代や生活態様、職業、所得・生活水準、税の徴収側と納税負担側などでその評価の尺度や受け止め方が異なり、常に変化するものや、功罪の両面の存在するものであるから、時代や状況に応じた臨機応変で柔軟な適用が望まれる。
ただ断言できることは、①特定権力者に都合が良い徴税策を、徴収される側の立場も考慮せず、納得も得ないで、一方的、強制的な手段で押し付け奪取すること、それを有効に万人のために活用せず、使途を公明にもせず、私的な栄誉や権力の誇示に濫用、浪費すること、公私の混同をすることだけは厳しく慎まないと、納税者側の不満が鬱積し、いつかは必ず爆発して反乱が起こり、徴税権力者の地位を追われ、その栄華も永続しないということと、②たとえ大義名分や必要性があっても、過度な増税策をとる為政者は、国家の権力と富は政治家と官僚に委ねられて、大きな強い政府となり、思い切った大胆な政策も実施しやすくなり、一部その恩恵を多く受ける者からは歓迎・支持されるが、やがて賄賂や汚職が横行するようになり、民間の姿勢が政府依存で、自主性や活力が低下し、利得の恩恵に浴さない大多数の納税で苦しむ民衆から嫌われ、離反するので、政治生命が短命で終わるという損な役回りとなること、③逆に、過度な減税策をとる為政者は、その当時は大多数の民衆からは歓迎されて人気を博するが、その反面で、将来に必ず国家財政の危機、経済・社会の繁栄から停滞・衰退への転機を迎え、国民意識の増長と弛緩、精神文明の荒廃を招くということ、④先にも述べたように、税には必ず功罪の両面があるので、その時代や環境条件に応じた税制こそが、その時期における適切な税制といえ、常に環境の変化や時代の進歩に応じた見直しと適切な改正で、国際社会との協調性や国民の納得と支持を得ることが絶対に必要ということである。
現在の世界の主流をなす欧米流の行き過ぎた自由金融資本主義市場経済や、それに追従するわが国の政治・経済理念や税制は、不変の真理、大自然の摂理、好ましい政治・経済の原点からも逸脱しており、だから世界は平和と安定、幸福感から見放され、物質文明繁栄の反面で、精神文明の荒廃を招いている。
人体の健康維持が頭寒足熱にあり、老衰が足腰の弱体化からであるように、国家や経済の発展策も、税制も、今一度、こういった原点に立ち返り、根本的な意識改革を必要としているのではなかろうか。
まさに「税制とマスコミの姿勢に、その国の性格や実態が如実に表れる」ということであり、どうも将来の日本再興への手順が、最初から間違っているように思えてならない。

(2)消費税増税後の需要反動落動向と、その後の日本経済

次に、今次と来年に予定されている消費税増税に伴う、増税前の駆け込み需要とその反動落、増税後のアベノミクスの影響と日本経済の行方についての所感を述べておこう。
今回の第1次消費税3%の増税前、本年2月のわが国の景況は、政府筋の公表では、「予期した通り順調に上向き路線に乗り、たとえば都内百貨店の売り上げは前年比3.7%増となり、それも高級貴金属類の売り上げが好調、物価の回復も、昨年同期の1.3%が3.1%の上昇で、いよいよ長期間続いたデフレから脱却の見通しがつき、雇用の改善も15ヶ月間連続し、6年半ぶりの高水準で有効求人倍率は1.05倍になり、完全実業率は、最悪期2007年の5.8%が3.6%(女性は3.3%)と半減に近い改善となり、新規求人数は前年同月比で7.1%増、就業者総数も6,332万人と前月比で13万人増となって、被災地の建設業などでは人手不足で復興の遅れが懸念され、外国人の緊急雇用増さえ検討するようになったし、昨年末の個人家計の金融資産は総額1,644兆円に達し、過去最高を更新した」などと誠に誇らしげに自画自賛している。
しかし注意深く見ると、都内の主要百貨店は、平素から景気に左右されず、それでも資産相続税などで優遇されている富裕層や、新興成金国外人客が状得意先であり、宝石貴金属の売り上げ好調の原因も、景気回復の影響というより、株式や為替相場の反動を懸念したリスク回避や思惑投機によるものであったり、雇用の回復についても、正規社員の雇用安定化というより、景況に応じて調整しやすい非正規労働者のパート、派遣、契約社員の採用比率を高めて雇用の回復を引っ張り上げたものといえるし、個人家計金融資産増も、多分に株式や投資信託の価格上昇が牽引したもの、賃上げ状況は、政策的優遇の恩恵が強い自動車など好況業種の大手企業が主体の調査であるなど、都合の良い分野の数値だけを強調したものといえ、優遇政策の恩恵も受けず、下請け企業いじめの合理化の結果での大手企業の業績回復の陰で、この種調査に協力するゆとりさえ未だに見出し得ない中小零細企業や低所得層の悲壮な苦痛の声がこの種調査に吸い上げられることは少なく、しわ寄せを受け、見捨てられた下層社会的弱者の実態認識が甘いといえる。
日経新聞が増税直前の本年3月下旬にまとめた「社長100人アンケート」によると、「消費増税前の駆け込み需要は、想定通りか、多少それを下回っている」との回答が全体の3分の2に達し、「駆け込み需要や増税後の反動減による本年年間売り上げへの影響」に関しても、「5%未満」と「ほとんどなし」との回答の合計が7割を超え、総じて「影響は軽微」との見方が多く、「国内景気は一時的に停滞しても、9月ころにまでには上向く」との回答が55%であったと報じられている。
これとても調査対象者は、国内主要企業の会長・社長・頭取などであり、当然、マクロな鳥の目の目線、消費増税分の価格転嫁も容易で、便乗値上げも可能になりやすくなるので、増税景気回復刺激大歓迎との受け止め方であり、現場実地観察調査や庶民感覚からのものとは到底いえない。
庶民生活現場での実態は、3月になってからはスーパーや大型ディスカウント・ショップなどの駆け込み買いだめ来店客が増加し、駐車・駐輪場は連日満杯続き、レジの第数と係員の臨時増加を図っても、その行列は通常の約3倍の長さとなって混雑し、客一人当たりの購買量も価格も2倍近くで、カートの商品は山盛り、保存がきく商品の品切れさえも出ているというのが実情である。
しかし過去の石油ショック時の石油やトイレットペーパーの買い占め、消費税初導入時ほどの殺気だったパニック状況でなかったことも事実だが、それは過去数回の体験からの慣れと冷静な対応、どうせ抵抗しても無駄との空しい締め感、来年もまた増税されるので、その時に改めて計画的買いだめ利得戦略を考える、小刻みな段階的税率アップによるショックの緩和戦略に乗せられたことなどによるものであろうか。
感情的にならず冷静に考えると、国家が徴収する税金は、国家が国民からお金を強制的に取り上げ、一部の人に収奪されてしまうものではなく、国家の歳入・歳出予算に基づき、徴税コストを差し引いた後に、直接的か間接的かにしろ、何らかの形で再分配還元され、単年度単位でその収支決算がされるのである。
にも関わらず昔から税にかんしては、日本人にはとりわけ、時代劇の悪代官の名演技の影響からか、「権力者により頭から力まかせに取り上げられる」といった「税」の意識が強く、租税公課の「租」の社会のために貢献するといった意識が薄く、税への正しい認識を欠いており、だから税金負担が重いと不満を言い、取られまいと脱税などの悪知恵を働かせ、それでいて、納めた税金の使途の公正さの追求には疎い。
しかしスエーデンなどの北欧諸国では「租」の意識が強く、50%を超える高率の租税公課負担であるにもかかわらず、応分の社会福祉の充実などで直接的にも還元される実感があるので、国民は不満を抱かず、脱税をしようともせず、安心な生活が保障されているので幸福だと感じている。
税に関しては、わが国は税率の高い低いより、徴収した税金の再分配や使途の公明さを欠き、不適切、不公正さに大きな問題があるから、今回の増税を機に、先ずこういった税に対する正しい認識を高める啓蒙や、非適正分配の是正に努め、国民の十分な理解と支持を得ることが、アベノミクスの精工と国家経済の将来のためにも肝要であろう。
最も優れた国家像は、江戸時代の日本社会のように、厳しい法の規制や刑罰がなくても、国民の良識と自律心に支えられ、社会秩序が健全に維持され、行政は、最低必要元の国防、治安、公的福祉、国策的に重要不可欠な社会インフラ整備のための公共事業などの役割を果たすに足りるだけの徴税に抑え、公正・公明な国民所得の再分配がされ、地方自治に大幅な権限を移譲し、それでも国民の自由で自発的意思と努力で、効率的な経済・産業振興や生活の安定的向上発展が可能な、適度な規制と自由さがあり、その代償として自律と自己責任が重んじられる品格ある国家である。
非常事態に直面し、たとえ危険が伴う未知への挑戦であっても、少しでも可能性があればそれに賭け、劇薬投与の緊急対処荒療治に着手した安倍総理の勇気ある決断は一応評価できる。しかしこういった処置は、一時的には効果はあっても、根本的な病気の原因排除や、健全な体力・体質への改善には至らず、また副作用の弊害はつきものであるから、小康を得て手術に耐えるだけの体力が回復すれば、なるべく早く劇薬投与を止め、正常な治療に戻し、将来の理想国家づくりに着手すべきである。
だが、超金融緩和の輸血に頼り、投資金融によって支えられ、意図的に形成された株価高騰の結果の空元気の景気が、これを打ち切った場合、アメリカでもそれでオバマ人気が凋落したように、急に萎むことともなりかねず、この燃え上がった景気の火を、本来の実体経済の好況にまで早く引き継ぎ、燃え上がらせねばならないのだが、その手の打ち方が遅く、国際的競争力に強い新産業の開発など、具体的で効果的な方策が未だに見られないことや、企業の本格的な賃上げが思い通りに進まないこと、米・ロ間の緊張など海外情勢が不安定化傾向にあることなども気がかりであり、そんな中、景気刺激のアクセルと消費増税のブレーキを同時に踏むような危なっかしい運転ぶりへの不安感は残る。それに、安易な小刻みで段階的な消費増税と、作為的株高相場に頼る政府の景気演出に、国民が馴らされ、あるいはあるいは今更空しい抵抗をしても無駄と諦めてしまうことが最も危険だ。
思い切った対処療法の結果、本平成26年度の国家予算の歳入・歳出規模は過去最大の約96兆円と記録を更新、国債…国家の借金総額もついに約1,200兆円とGDPの約2倍に及んだ。これでは「今は良いが明日が怖い」となるので、消費増税後の今後の舵取りこそが、崖っぷちに立つ安倍政権の正念場であり、よって楽観論に踊らされ、浮かれていてはならない状況になるものと予見する。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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