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海図なき航海アベノミクスの行方

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公開日付:2014.04.04

長期デフレ経済で閉塞状態にあった日本経済を何とか立て直して欲しいという国民の切望に応えようと公言し、その期待を一身に集めて船出した安倍内閣は、アベノミクスという過去に世界でも試み成功した例を見ない、まさに危険な賭けともいうべき海図なき航海の経済政策に打って出て2年目を迎えた。

(1)走り出し順調に見えるアベノミクス

幸い、走り出し当初は、アメリカ景気の自立的回復傾向や新興経済大国中国の海外投資熱といった幸運にも恵まれ、世界の株価も日本の株価も、リーマンショック以前の水準にまで復元、行過ぎた円高相場の是正も所期の思惑通りとなった。
しかしながら、大手投資家筋のマスコミを抱きこんだ情宣活動の煽りによる心理的相場高や、無制限の超金融緩和策、積極的な公共投資などによる景気立て直し策は、あくまでもリスキーな劇薬投与による緊急対症療法であり、その反動の副作用が必ず伴うものであるし、根本的な経済の安定的・持続的な発展基調への構造転換となるものでもなく、国家財政の健全化や小さな政府・民間活動への期待にも反するし、この間に実体経済への点火に繋がらないと本格的に燃え盛り続けられず、また、「見えざる神の手に導かれて、やがて需給環境に見合った落ち着くべき経済の姿に・・・」といった自由市場主義経済の原点の理念にも反する作為的な苦肉の策でもあるので、恒常化すべき好ましいことでもなかろう。
従って今回の安倍総理の思い切った施策は、アメリカの助け船、入れ知恵として推奨された緊急手段を、先取り導入実施した勇気ある決断と賞讃されているようだが、その実態は、狡猾なアメリカの一部大手機関投資家筋が、日本を実験台にしようと仕掛けた煽てに乗せられたきらいがあり、実際、アメリカの経済学者や有識者の多くは、このような考え方や政策を危険視し、アベノミクスの長期的に見た成果に懐疑的であり、今後を慎重に見守る必要があるとしているのである。
だからオバマ政権は、日本の動向を見て大幅な金融緩和策を後追い導入したものの、早くもその修正・引き締め時期を虎視眈々と見計らっているのである。
この点はわが国においても同様であり、自信ありげに「絶対に・・・」といった言葉を多用し大言壮語する独善的な指導者、御用学者やマスコミの煽動にのせられ易い経済音痴で無節操な民衆は、「安倍さん、格好いい」とまるでタレントの人気投票のような軽薄な感覚で自民党政権の圧勝・復帰を招いたが、心ある良識者は、一党独占の政権や、そのアベノミクスに危惧の念を抱いて、慎重に見守る姿勢を示しており、連立与党内や官僚内でも、腹の中では反対・抵抗をする勢力も結構潜在して分裂しており、決して磐石の一枚岩ではなく、情勢次第で安倍総理は、いつ寝首を掻かれるかわからない不安定さを内蔵している。
このように、一見絶好調のように装っている、強気で独裁的な安倍首相が率いるアベノミクスには、まさに海図なき航海の危なっかしさがあり、いかに緊急治療策とはいえ、その効果が直ぐに現れると考える方が浅はか過ぎ、もう少し時期を待つ必要があるのは当然であり、今は取り敢えずの応急処置で、血圧の低下や脈拍の乱れが何とか落ち着き、体温の冷え込みが止まり一息ついたが、未だにICU(集中治療室)での厳重監視が怠れず、構造改革の大手術に堪え得る体力回復には至っていない状態といえ、今後の行方を慎重に見極める必要があろう。

(2)アベノミクスで放った「3本の矢」の効果はあったか?

安倍首相のこれまでの、過去数十年の歴代総理や、自身の第一期目とは一味違った、強気と自信、盛り沢山な内政・外交の難題に積極的に取り組もうとする意欲と行動、多弁で人当たりが良く、国民の理解を求めようとする姿勢は一応評価し得る。
しかし、いずれにしても、やや目先の対応策に追われ、その域でしかないこと、国家の将来を遠望した壮大で具体的なビジョンや、何を、いつまでに、どの程度までといった具体的で明確な目標の明示がないこと、あれもこれも早期に解決をと焦り気味で、重点施行策や優先順位、段取りが不明確なこと、抽象的な美辞麗句が多く、具体的な内容の妥当性がわかり難いこと、ここに来て、圧倒的な連立与党の勢力をバックとアベノミクスの滑り出しの予想以上の順調さを過信してのことか、独断専行、独裁性の強まりが気になること、タカ派の姿勢、財界や富裕者優遇、社会的弱者への負担の皺寄せ、経済優先・福祉の抑制の姿勢が顕になってきたこと、外交通を自認しているようだが、「国内が平穏であってこそ外交が成り立つこと」を失念し、内政より外交に力を入れるものの、国際情勢の見通しと、反応の読みが甘く、波乱を増幅していることいことなど、不安・不信な面が露出し始めている。
肝心の売り物のアベノミクスについても、案の定というべきか、昨今、国際情勢の激動もあって、わが国にとっては厳しい環境の変化、潮目の逆流の中での海図なき単独航海が強いられることとなり、威勢良く矢継ぎ早に①大胆な無制限の金融緩和、②積極的で機動的な財政出動による公共投資の実施、③デフレ収束への経済成長戦略の展開という3本の矢を放ったものの、まだその成果を評するには時期尚早であるが、第1の矢については、日銀を説き伏せて有史以来の超金融の量的緩和策を大胆に採用し、これで日銀の金融調整手段の公定歩合操作、公開市場操作、支払準備率操作の3つの手段、つまり市場に出回るお金の質・量調整の蛇口を全て開放したことになる。
つまり金融面からの景気対策の手立ては全て出し尽くし、もう他に打つべき手はないという退路を絶った背水の陣で望むといることだが、実際の経済取引が活発になったことでの通貨発行高の増加なら結構なことだが、その裏づけなき通貨量の増加は、過去のバブル期にあったように、放漫な浪費や投機的不要不急の高級マンションやレジャー施設などへの投資を招き、経済再生産に有効な建設的投資とはならず、マネーゲームを煽るだけにもなり、そのハンドル捌きを間違うと悪性インフレを招きかねない危険性も多分にあるし、一度膨張した通貨や、緩んだ人間の心や欲望を再び引き締め、抑制し、収縮させることは容易ではなく、その役割を担う時期の為政者は、不人気な損な役回りを覚悟しなければならない。
安倍首相が、華やかで格好の良い場面の演出だけで、実際の苦難の舞台での演技を避けて早逃げすることなく、国家と国民の運命がかかっているのだから、一応の成果を達成するまで、頑張り通していただきたいと願うばかりである。
今次も、この思い切った政策で豊富に市場に放出されたマネーは、期待通りの前向きで国内経済再生産に直接的に有効な分野の民間企業設備投資には向かわず、その投資採算の見通しがつけ難いことから、手っ取り早い相場差益稼ぎの国内外証券投資や投資用マンション購入に向けられ、雇用や消費の拡大、物価の健全な上向きによるデフレの解消、社会的資産の増強など、国策的な貢献度は少なく、株価の上昇により一部の大企業や銀行の業績回復にはプラスになているが、従業員の賃上げや、下層部の中小下請企業、家計にまでには、その恩恵が政府公表や御用マスコミ報道のようには十分に浸透はしておらず、お金持ちの投資用マンション販売は好調でも、庶民の住宅事情は悪化するばかりというのが実態である。
第2の矢の公共投資に関しても、相変わらず目に見え、選挙の票集めになる、政治家の自己顕示用銅像ともいうべき箱もの(公用建造物)建設、軍事力増強などには積極的だが、目に見えず票にならない、本当に必要だが地味な社会インフラ、近未来の経済牽引産業の育成投資、新エネルギーの探求、科学技術や医療の研究開発、安全インフラの整備、教育や社会福祉施設の充実には消極的である。
アベノミクスの最重要課題である第3の矢は、第1第2の矢が、その目的達成のための地ならし手段であったのに対し、これこそがアベノミクスの目的であり、仕上げの成果を決定づけるので、その具体策の内容に期待をかけてきたが、肝心のその設計図や再建の工程表がなかなか明示されず、抽象的な表現に終始していることは、誠に心もとなく、期待はずれで残念である。
空元気付けのアベノミクスブームや人気の一方で、緊急救済課題である東日本大地震津波被災の救援・復興は、被災地の方々には申し訳ないが、全国的・大局的視点で冷静に見ると、全国力の約3~5%の損失であったにもかかわらず、未だに被災地の復興どころか復旧、残材・跡地整理さえ遅々として進んでおらず、多大な有形・無形の悪影響を及ぼし復旧の阻害要因となっている東電福島第一原子力発電所に至っては、未だに核心部に立ち入れず、その被害状況の実情も確認でず、根本的な放射能汚染除去の技術さえ未開発というお粗末な状態であり、激甚被災地人口約250万人の約15%、38万人が仮設住宅住まい、約12万人が被災地県外の他都道府県に仮移住で、そのお世話は地方自治体任せという悲惨な状態にある。
それにもかかわらず、事後3年目にしてもうすでに国民の防災意識は風化していること、その陰で、各地原子力発電所の再稼働だけが、着々と画策されている状態に至っては、まさに政府の無策・無力さの曝露、日本国民の恥というべきであろう。
第3の矢の経済成長戦略の柱は、原子力エネルギー、軍事産業、アニメ産業、観光資源頼みにすり替えて良しとし、それでは不満だとの声が出始めると、領土紛争問題の危機感に国民の目を逸らそうとしたり、第4の矢を準備するという。
果たして第4の矢で、何をどうするという具体策が明示されるのであろうか?。「下手な鉄砲も数多く打てば当たる」という感覚で、この国難が克服できるほど甘いものではないはずであろう。
救急治療は、危篤状態を脱するための非常手段であり、短期集中重点治療策が要求されるからこそ、副作用が伴うことも承知で劇薬投与が許されるものであり、そう簡単に成果が表れるものでもなく、焦りも、何もかも一度に、全てのがん細胞を除去するような解決をと考えることも禁物だが、さりとて、そうだらだらともしておれず、一発必中の矢のような、的確で有効な手立てと、それで取り敢えずの危篤状態からの脱出、病状悪化や体力低下の防止が出来ると、劇薬に頼らずリハビリに努めることになるべく早く転換し、一段落すればその回復状態を見て、将来の国家再構築のための抜本的な体質改善の大手術(国家の政治・経済・産業、国民の意識改革など)に着手すべきである。
安倍首相の勇気ある決断によるアベノミクスの表明が、今後の成果はどうあれ、それまでバブル破綻で失った10年、その後の失政・無策続きで失われた10年、都合20年にわたる長期のデフレ不況と閉塞状態にあった日本経済に、たとえもし一時的で終わったにせよ、国民に一抹の期待感を抱かせたことは事実であるから、もう暫くはそのお手並みを慎重に見守りたい。

(3)アベノミクスが次の手で心がけるべきこと

今後ともというより、これからこそ、安倍首相が背負う責任は重く、外交面では、東アジアにおける中国の覇権拡大と軍事力の強化、中国・韓国・ロシアなど近隣諸国との領土・領海問題、アメリカとの政治・軍事・経済関係の調整、北朝鮮の動向と拉致問題の解決、TPP参加の是非など、国内的には、1千兆円を超えた財政赤字と国家財政の健全化、国家機密の保護、自衛隊の海外協力派兵の是非、東日本被災地の復興、貧富格差の是正、消費税率アップと税制合理化、原子力発電の再稼働と新エネルギーの探求、異常気象と産業・食料資源の枯渇化対策、天災の頻発と国土の安全インフラ整備、加速する少子高齢化対策、大学生の学力低下、国際化に伴う教育改革、伝統的精神文明の荒廃、悪徳商法の横行や凶悪犯罪の増加など、外憂内患の重要で難しい課題が山積しており、これらの円滑な処理のためにもアベノミクスの成功による経済の建て直しが鍵となる。

そこでアベノミクスに続く次の手として心がけるべきことを、先ず第1に、未来の世界を展望しつつ、将来の日本をどのようなものにするかという国家像とビジョンの確立と国民への明示である。
世界的なグローバル化の進展、国際的なモノ・カネ・ヒトの交流活発化という流れは今後も止まらないであろうから、ここでは旧来のナショナリズムの強化ではなく、世界国家・世界民族の一員といった意識の革新に基づき、自国だけの利益や繁栄より、地球規模の視点で、エゴな国際競争より国際協調を重視し、こういったことは実現不可能な理想の空論だと無視せず、むしろ平和主義の日本が、そういった人類の意識刷新と実現化のイニシティブをとり、モデル国家になることを目指し、そのためには自らが国際的にも信頼される理念と品格、物心一如の繁栄を実績で示す国家となることが肝要である。

第2に、地球全体としての人口増加と諸エネルギー、産業・食糧資源の有限性との将来予測から、需給関係が過去とはがらりと異なり、「需要>供給」に逆転したことを認識し、自然環境の保全に留意し、その譲り合いと節約、有効活用を図り、自然と国家・人類の共存・共生・共栄を図ること。

第3に、加工製品に関しては、近代世界の科学技術や大量生産システムの進化から、経済先進国においては基礎資源とは逆に、「供給>需要」という状況に転じたこと認識し、成長過程の経済政策より成熟社会の経済政策に切り替え、背伸びの経済成長、リスクテークの財物的豊かさの無限の欲求追及より、人間本能の原点に立ち帰り、安全・安定的な経済成長社会の実現、量や価格の競争より、質の重視と協調に重点を置くことに切り替えること。

第4に、各国それぞれなりの置かれた環境や立地、国内の諸条件や事情に差異や特性があるのは当然のことなので、特定の先進的大国のレベルでの自由化や画一的グローバル化の押し付けでは逆不公平となるので、真の自由化や国際協調なら、それぞれの事情を斟酌し、認め合うこと、新規需要の創出は、低開発国の経済成長支援で生み出すことと、それと例えば、農業・食糧、水産漁業の生産基地国、工業・機械生産基地国、保養地域国といったような国際分業化体制を整備すること。

第5に、わが国は、基本的な国土面積の狭さや資源自給不足力、労働力不足といったハンデを背追っているので、その点についての国際的理解を求める努力をすると同時に、異質の特性を発揮した国際貢献に努め、世界の高度精密技術、医療技術、情報処理技術などの研究開発国と、精神文明の先進国をめざすこと。

第6に、アベノミクスの経済成長戦略や公共投資においても、こういった分野の国策的育成に重点を置いた金融支援、税制上の配慮などといった、重点志向のアクセントをつけること。優遇を受けている産業や企業に、一定員数の新規雇用や昇給を義務付け、雇用と消費拡大の刺激を図ること。

第7に、現行のような、自助努力の余地を有する大企業や富裕資産家の優遇より、本当に切実な資金支援を必要としている中小企業や輸出貢献企業、生活必需物資の購買意欲が潜在する中・低所得者層の実質所得の向上を図ることにより、底辺からの消費需要の拡大、経済成長力の盛り上がりとする「頭寒足熱政策」に行政方針を転換すること。

第8は、目先の景気対策で原子力発電の再稼働を認めるのは、安全体制を厳重審査した上での必要最小限度に止め、それより未来の無限天然新エネルギーの開発に努めること。これなら日本の地理的特性も生かせる得策であろう。

第9に、国策に則った新規起業化の促進と支援で、経済成長と雇用の拡大を図ること。

第10に、東日本被災復興特別税(毎年2.1%の上乗せ課税、24年間継続実施、推計延べ約25~30兆円の税収増見込み)の、直接的復興目的への完全投入と、多段階下請け丸投げ制度の弊害とコスト高是正を図ることなどを提言しておきたい。「逆境は進化へのチャンス」、「必要は発明の母」であるから、この国難を未来に向た旧体制からの脱皮、新日本再構築への好機に転じたいものであり、そのためには為政者に、「国民の理解を求めるに、言葉と努力を惜しむな」、「民衆の支持なき改革は成功しない」ということを肝に銘じ、強力なリーダーシップを発揮していただきたい。

セットアッパー安倍総理の健闘、アベノミクスの成功を祈念して止まない。


著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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