ホーム > 企業倒産関連記事 > 時局レポート > 2013年 > 乱気流で凧揚げままならずで終わる本年

乱気流で凧揚げままならずで終わる本年

  • RSS
  • お気に入りに登録する

公開日付:2013.12.27

 まさに「光陰矢の如し…」で、今年も文字通り明暗・悲喜交々、さまざまな出来事が発生し、課題を抱え、後僅かで歳末を迎えることとなったので、本稿ではその総括的な回顧と、主要な事項や問題についての評価を述べることとしよう。
 恒例となっている本年の流行語大賞では、従来のようにどれか一つに絞ることが出来ず、①じぇじぇじぇ、②倍返し、③今でしょう、④おもてなしの4項が並立的に選定され、これに引き続きアベノミクスなどがノミネートされたが、このことはそれだけ世の中が複雑・多様、激動と不安定で混迷状態にあったといえ、科学技術や社会体制など周囲の環境変化に人間の意識や能力の変革がついて行けず、それ故に、「じぇじぇじぇ」と驚き慌て、その倍返しの対策や対抗を焦り、今すぐの彌縫策や小手先対応に追われ、将来を遠望した長期的視点や理念の根本的な刷新を疎かにし、かえって問題を複雑にし、こじらせてしまったので、この辺で一度立ち止まって冷静になり、人類の幸福や豊かさの原点を見つめ直し、財物的な豊かさの追求競争のあまりに、自己利益本位で排他的・闘争的になったことを反省し、理性ある人間としての崇高な、そしてわが国の伝統的な美風良習であった、他者のことも思いやる謙譲・互恵・互助の「おもてなしの心」の素晴らしさを再び大切にし、これを全世界の共通的理念にすべきとの良識復興(物質的所産主体の進歩であった文芸復興のルネッサンスに対し、哲学的理念の革新としてイデオロギーのルネッサンスであるイデオロネッサンスと称することを提唱したい)を希求する兆しが芽生えはじめたことの象徴といえようか。
 本年の主要な出来事としては、先ず第一に、昨年末の総選挙で画期的な無制限の超金融緩和策によるデフレの解消と景気回復をスローガンとした自民党が、単独で過半数を制する大勝をして政権与党に復帰し、安倍内閣が誕生し、その「三本の矢」の基本方針の具現化が始動し出したことである。
 しかし連立内閣を組む公明党と合わせると、重要法案の議決を制する3分の2以上という勢力に奢ってか、安倍内閣の議会運営には、勝ち過ぎたことの弊害ともいえる横暴さや強引さ、独裁政治的な面が目立つようになり、首相は「決められる政治を目指す」と意気込み、内政の景気回復、物価の上昇によるデフレの解消、公共投資の積極化、大企業や富裕者優遇、行過ぎた円高の是正などというアクセルを踏む政策を打ち出す一方で、同時に消費税の増税や高齢者福祉のカット、国家財政の健全化などブレーキを踏むような矛盾する政策を展開すると宣言し、更には外交面でも、TPPへの参加表明、独立国としての自主外交、とりわけ東南アジア・アフリカ諸国との交流促進、固有の領土である尖閣諸島などに対する近隣諸国の今頃になっての一方的な領有権主張や干渉行動に対しては毅然たる態度をとり、そのための自主防衛力の強化も図ることなど、盛り沢山の課題に取り組み、従来の内閣より外交にウエイトをかけ、ほぼ毎月というほど頻繁に外国を飛び回り、経済支援のバラ撒き外交を展開した。
 このことが一般民衆には、近年の歴代首相にはなかった積極的行動力と実行力だと評価され高支持率を保持することとなったが、冷静に評価すると、多く宣言の具体策は今後慎重に検討して着手するというに止まり、内容が乏しく、その実践には難しい両刃の剣といった問題や困難が伴い、一抹の不安感が払拭されないことと、いずれも目先の人気取りや彌法的対応策でしかなく、国家の将来や世界の未来を先取りし、それを先導し得るような根本的な政治哲学や政策理念、国家再興のビジョンや長期計画が明示されず、その布石として有効と納得できるようなものが欠けており、それらは来年以降の今後の問題とされていることである。
 自民・公明党を勝たせすぎたことの弊害が生じはじめているが、その責任はAKBの人気投票のような気分で安倍政権を選んだ愚かな国民の側にもある。
 圧倒的多数の力で可能となった「決められる政治」が決めたことは、大企業の優遇、消費税率アップ、福祉の削減、諸種の負担の弱者や庶民への皺寄せ、TPP交渉への参加表明、特定秘密保護法などを強引に可決させることだけに終わったが、もしその公約の実現が期待はずれとなった場合には、反動は大きいものとなろう。
 第2は、安倍首相が打ち出したデフレの解消と経済再建を目指すアベノミクスが実践段階に入ったことである。
 アベノミクスの発表は、そのアナウンスメント効果、アメリカの景気回復や国際的な行過ぎた円高の見直しなどという追い風に恵まれた幸運さもあって、確かに株価を上昇に転じさせ、企業業績やわが国景気の好転を期待させるものとなり、若干の物価上昇ともなった(不当な便乗値上げもし易い状況となったことも含まれる)ので、してやったりとばかり「安倍のみくっすっと(アベノミクス)とほくそ笑む」こととなったであろうが、これは日本の国際影響力や経済信用力が高まったり、実体経済が好転したり、企業の本業収益力が回復した結果ではなく、中小企業の窮状は未だに解消されず、サラリーマンの給与所得の上昇より物価の上昇率の方が高く、富裕層の消費購買欲は旺盛になったかもしれないが、庶民にとっては、懐具合は寂しいままで見捨てられ、上がったのは公租公課負担と血圧だけといった実体でしかないので、昨今の株高は、いわば安倍首相が仕掛けたバブル経済に煽られたり、超金融緩和で増大したマネーが実体経済の投資重要不足で行き場を失い、投資市場での運用に向けられた結果という、実態経済の裏づけに乏しい思惑相場によるものでしかないので、いつまでもこの状態が持続するとは到底思えず、今後の外国大手機関投資家の売り逃げ如何では暴落しかねない危険性を多分に含んでいる。
 本格稼働しだしたアベノミクスも、肝心の第3の矢である景気浮上の具体策の実効性が疑わしく、もう既に円高が円安に転じたことで、輸出依存率の高い大企業はともかく、多くの企業にとっては輸入物価高のマイナス要因ともなり、更には来年になると、消費増税や、国債の乱発と日銀の買収といったまやかし政策にも限界が来るので、まだ景気回復感の熱が冷めないうちに、その火を実体経済の場面にまでうまく引き継いで、これを燃え続けさせるため、国際輸出競争で優位に立てる新産業や新製品の開発を図ることが肝要であり、これは積極的な公共投資においても同様、将来の再生産や国益に直接的に有効な分野への投資が必要であり、その手を打つべき時期はいつか?、それは「今でしょう!」ということになるのだが、こういう抜本策を具体化することは至難のわざであり、一時的な株高景気回復感で、首相も政府も大企業も国民も、有頂天になっていてはならない。
 アベノミクスは元来、手放しで喜べることばかりではなく、副作用の強い劇薬投与の対処療法のようなものであり、国家経済体質の強化に連なる根本的治療策とはならない、非常時の苦肉の策というべきものでしかないのである。
 例えば、「異次元の金融緩和」といえば、国民の手元に入るお金が増えるかのようだが、決してそれではなく、政府が多数発行した国債を、民間市中銀行などに売りつけ、次にその市中銀行が保有する債権を日本銀行に買い取らせることで、日銀がその資金を民間金融機関に大量に供給しようとする、日銀金融政策の買オペレーションによる金融量的緩和というものであり、これで日銀は金融調節面からの景気と物価調整の公定歩合、支払準備率、量的調整という全手法を行使したことになる。
 しかし市中銀行がこの資金を一般企業への貸し出しに向けず、あるいは一般企業の新規投資資金需要がなく借り手がないとなれば、それは各銀行の日本銀行当座勘定に無利息で滞留させ眠らせるだけか、銀行は多少リスキーだが相場差益稼ぎ(損失となる場合もある)の証券投資運営に回し、本来の預・貸金の金利差益による業務収益より投資収益を図ろうとするだけであり、これはその他の大企業においても、富裕層においても同じような対応行動をするであろうから、上が潤えば、時間的遅れはあっても、漸次下層部にまで恩恵が及ぶとの主張は、実際上その通りとはならず、下部は不況の影響を素早く受け、好況の恩恵を受けるのはずれて遅く、その期間は短く、恩恵の受け方も少なくなるというのが実際であり、ましてや一般庶民の懐にまではなかなか回ってこないので、消費購買力の向上にも連ならない。
 さりとて日本銀行が実体の裏づけがなく、価格変更リスクのある国債を大量に抱え込んで保有することは、更なる大きなリスクが伴う危険な賭けだといえる。
 また実際に不必要な資金を大量に市中にばら撒き、好況であるかのように演出することは、食欲のない病人に無理に食事を詰め込んで太らせようとするようなものであり、悪性のインフレ、貨幣価値と信頼の低下という悪循環を招き、本来は需要と供給の関係で自ずから落ち着くべき価格に落ち着くべき物価を、人為的に操作しようとする計画的インフレ導入策は、言うは易くとも実際にコントロールすることが難しい未知への挑戦であり、下手をすると抑制が効かない悪性の超インフレを喚起しかねないので非常に危険である。後は富の再配分を応能税負担などで如何に適正化し、頭寒足熱の健康体に抜本的体質改善をするかが重要な課題となる。
 アベノミクスの第1の矢である積極的な財政支出、公共投資の促進による景気刺激といっても、先立つのはその資金であり、それを赤字債権で賄うことは、国家財政の健全化とは相容れない矛盾だらけのものであり、事実、もう既に国の借金が対GDP出200%を超え、先進国の中で最悪の状態であることを考えると、アベノミクスの正体は、善意に解釈しても、副作用やリスクを承知の上で、苦肉の応急手当か非常手段としての危なっかしい綱渡り、一か八かの危険な賭けに打って出たものといえ、決して持続性のある正常な政策ではなく、「今は良い良い、明日が怖い」ということであり、これを勇気ある決断とか奇抜な発想などと煽てることは好ましくなく、むしろ注意深く厳しい目で見守るべきであろう。
 第3の矢の経済成長を持続させるために必要なことは、国内の需給均衡化による安定だけでは発展性も進歩もなく、わが国は国際交流と貿易の円滑化があってこそ進める国であるから、なんとしても先ず世界が平和であることと、そのためには武力を除く面での国際貢献と存在価値を保持すること、世界を相手にして稼げる国家経済構造にし、そのような産業や製品を開発すること、その基礎的対策としては、世界に通じ、リードする売りものを創出するための、モノづくりの知識・技術教育を重視し、品質の向上や生産効率化の努力を怠らないこと、そういった国策にマッチしたベンチャービジネスの起業化を促進・支援すること、コスト競争では不利な条件を背負っているので、その競争優位性発揮は、低価格化より品質や希少性など非価格競争力に重点を置くことが肝要であり、こういう国策的事業への前向きな公共投資や、社会・国際貢献度に応じた企業への優遇税制や助成なら、国民も納得するであろう。
 第3は、急成長を遂げた中国や韓国の経済にも、峠を越えて、バブル経済破綻の兆しや、極端な貧富・地域間格差の増大から、国民の内政への不満が爆発寸前にあること、軍部の政治干渉力が強まり、その抑制が効かなくなりつつあることなどで繁栄に翳りが見え始めたことである。
 近年、世界の生産工場、販売市場となった日本・中国・韓国が仲良く揃い踏みの繁栄を持続することは、アジア地域だけでなく世界の平和や経済発展にとっても重要なことなので、各国の良識ある慎み深さと互恵・互助を望みたいものである。
 ところが彼らは、内政・経済不振打開のための焦り、国民の不満解消の手段として、その目と力を国内から国外に向けさせるため、日本を標的とすべき仮想敵国に仕上げ、離島の領有権問題や防空識別圏の一方的な設定、情報謀略の仕掛けなどといった暴挙に走った。
 しかしこういった押したり引いたり、脅したり煽てたりの揺さぶりや、離合・集散したりといった、かけ引きや騙し合い、謀略、秘密裏の情報戦の展開は、程度の差はあれ、何処の国でも日常茶飯で行っており、想定内と考えている国際外交の常套手段であり、むしろこれを想定外の暴挙と驚いたり、感情的に反応しようとする日本の外交力の方が、平和ボケして未熟で、外交他力本願、世界情勢にも疎く、独立主権国家としての見識も、自主的努力も怠ってきた感がある。
 従ってこの種の揺さぶりに慌てふためいて動揺し過剰反応することなく、毅然と自己見解を事実を立証して論理的・合理的に主張すべきは主張しながらも、相手の出方や反応を窺い、注意深く見守りつつ、冷静な対応を心がけると同時に、孤軍奮闘でなく、日本の立場を理解し同調してくれる仲間づくりを図ることが重要である。
 第4は、TPP交渉への参加表明である。この地域貿易協定は本来、経済レベルや事情に共通性のある国が自発的に集まって、互助・互恵を図ろうとしてスタートしたものであったのに、アメリカが後から割り込み、その都合が良いように規定し、自国が有利な項目については完全自由化を、不利益な項目については特例を設ける余地を残すといったエゴな姿勢を通したことから、その自由協調貿易の純粋性が薄れ、複雑な、新たな紛争の具となったものである。
 この種の話し合いや制度は、国土や資源に恵まれ、自給自足体勢が整い、輸出・入余力や能力のある国ほど、相手国の対場や事情を思慮し譲る度量を示さないと、うまくまとまり、永続的に機能させることは困難である。
 本年は2020年のオリンピック東京開催が決定したことでもあるから、スポーツ競技を例にこの是非を考えると、体格の大小や武具の優劣に関係なく、互いに同じ条件とルールで、素手でフエアに闘い、高度な技量や闘い方の工夫次第では、小より大を制すことも可能な意外性のある相撲の魅力が、最近国際的にも注目されていること、国際化したものの、基礎体力に優れた欧米選手の都合が良いように、体重階級制や攻勢点や判定制の導入などとルールが定められたため、日本選手が軽量級では勝てても、重量級では最初からハンディキャップを背負い勝ち難くなり、面白さが減退した柔道、経済力に優れ立派な艇が製造できる国しか参加しえず、弱小国は最初から勝ち目がなく参加し難いヨットレース、なぜ紳士のスポーツといわれるゴルフコンペでは、各自の能力に応じたハンディキャップが決められ、それで対等の、審判不在のプレーが愉快に出来るのかなどを参考に、焦ることなく適切な判断を慎重にしたいものだ。
 第5は、歳末になって強行採決された特別秘密保護法についてであるが、日本は、世界からスパイ天国などといわれるように、形の見えない情報には無関心、無防備であったし、盗聴を仕掛けたり、人を騙したりお金で買収するといった諜報活動は卑怯な行為としてきた。しかし国際交流の活発化や高度情報化社会になった現代では、情報収集の積極化、情報管理の厳重化、秘匿信義の遵守などに関しても、その活用の公明さと同時に、その厳格化を検討する必要性は認めねばならないだろう。但し、特定者に権力が集中し過ぎないようにすること、守秘義務の厳格化、国家機密の定義や基準の明確化、一定期限を過ぎた後の公開制度、その運用の第三者によるチェック体制整備などについては、十分に配慮した慎重審議をしていただきたい。
 第6は、原子力発電所の放射能漏れ防止と汚染の完全防止に関してであるが、福島第一の被災後1千日も立つというのに、未だに被害状況の把握も定かでなく、万一の事故に対する防護策や汚染除去の方法も確立していないという状況は残念であり不安でもあるが、もう既にそんなことにはお構いなく、密かに原子力発電の再開が着々と画策されていることには納得がいかない。それよりも不幸をバネに、将来に通じる新しい無公害で無限のエネルギーの探求と開発、供給にこそ注力していただきたい。
 以上を総括して、2013年度に限っての日本経済と安倍政権の成果を評価すると、本年は、宣言の声は高く大きかったが、具体策の提示は曖昧、成果は未知で虚無であり、表題の如く、「乱気流に煽られ凧揚げ(経済成長)ままならずで終わった一年」であったということになろう。
 安倍首相の来年度の活躍と成果を、期待というより祈る思いで見守りたい。

   

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

資料請求・お問い合わせはこちら お気軽にお申し込みください

製品詳細・資料請求・お問い合わせに関して

製品に関する詳細情報、料金体系につきましては、「資料請求・お問い合わせ」ボタンをクリック後、以下の手順でお問い合わせください。

  1. お問い合わせ種別:「お問い合わせ」を選択
  2. お問い合わせの内容:「○○○」(任意:質問事項・要件など)とご記入
  3. ご連絡先:必要事項を入力し、送信してください。
このページを見ている人はこんなページも見ています

重要な経済指標である倒産をベースに国内経済を把握できます。
倒産月報・企業倒産白書

倒産情報や債権者リストなど経営判断に欠かせない情報誌です。
TSR情報誌(倒産情報誌)

国内を含めた世界最大級の多彩な企業情報をオンラインでご提供!
インターネット企業情報サービス(tsr-van2)

1日2回、最新の倒産情報をメールいたします。
TSR express(TSR情報Web) -倒産情報配信サービス-

TSRネットショップ TSRの商品がオンラインで購入できます!

インターネットエラベル TSRがオススメする就職・営業に役立つ地域の優良企業紹介サイト

TSR Express 1日2回の倒産情報配信・検索サービス

メルマガ登録 無料セミナーやイベントを優先的にご案内!

ページの先頭へ