ホーム > 最新記事 > 時局レポート > 2013年 > アベノリスクを日本改革の好機に

アベノリスクを日本改革の好機に

  • RSS
  • お気に入りに登録する

公開日付:2013.05.31

「地獄の沙汰もカネ次第」といわれ、とりわけ資本主義経済が主流で万事お金次第といった拝金主義が横行している近年では、お金儲けへの関心やお金に対する執着が強くなっているが、問題はそのお金の生み出し方である。
お金を手に入れるには、(1)自ら働いて収入を得るか、(2)親から財産を譲り受けるか、(3)篤志家から授与されるか、(4)親族や銀行などから借金をするか、落語家のジョークのように自動販売機の下に手を突っ込んで(5)拾うか、人を騙して(6)詐取するか、他者から(7)盗むか、暴力的に(8)奪取するか、(9)貨幣を偽造するか、(10)人を雇って働かせ、その稼ぎのピンはねをするかなどであるが、(2)(3)のような幸運に恵まれた人は稀少、(4)は信用力や返済能力、担保がないと不可能だし、借りたお金は利息をつけて確実に返済しなければならず信義や契約に反することはできず、(5)の効率は悪く、(6)~(10)は卑劣で違法な、許されざる不当行為である。
したがって正当な手段としては(1)以外にはなく、それもただ肉体を駆使するだけでは十分な収入が得られないので、知識や技術を身につけ、頭と身体を生かして効率の良い勤労をする必要があり、またそういう働く機会に恵まれねばならい。
それが故にわが国では憲法においても、国民の就業や教育が権利であると同時に義務とされ、国家の政策としても、これらを保証しなければならないと明記されているのである。
にもかかわらず日本では、ビジネスに従事する者も含め国民の多くが、「お金は欲しいが、難しい勉強は好まず、専門家任せで…」となり、経済や金融に関する情報や知識の習得には無関心、それでいてうまくいかない場合の批判と文句だけは一人前に言うといった傾向が強いのはなぜだろうか。
こういった無定見で、人の噂やマスコミの煽動にのせられ易く、勝ち馬に乗ろうと付和雷同し、一喜一憂して両極端に大きく振れる野次馬的国民性が、政治家や官僚たちに対するチェックが甘く、彼らに「民は由らしむべし、知らしむべからず」といった格言の意を曲解・悪用を許容させている一因ともなっている。
たとえば、これまであれほど政府や自民党の施政を非難し続けていたマスコミや有識者までもが、どれほど論理的に裏づけられた自信があってのものかも不明な選挙対策用のリップサービスで、「無制限の金融緩和でデフレからの脱却を図る」という大博打ともいう前宣伝の政策を表明したことで、予想以上に大きく早く市場が反応し、株価の上昇や円高への転換が見られただけで、自民党の圧勝、政権与党復帰、安倍新総理の誕生となったが、その途端に、たちまち掌を返して、「三本の矢の成長戦略」、「アベノミクス」などと煽て上げ、まるでもう既に景気浮上、経済が順調な成長軌道に乗ったかのような「よいしょ」のお世辞記事を書き立て、無知蒙昧な庶民に消費(浪費)の拡大を推奨し、二面性がある経済の不都合な点や、アベノミクスの副作用には触れないが、この後に、消費税率アップ、福祉負担増、輸入物価高によるコストアップ、生活必需消費物価の先行上昇、不当な便乗値上げ、TPP参加の具体化、領土を巡る外交、近隣諸国との友好関係修復などなど数他の難問を抱え、果たして本当に、この上昇気運がこのままいつまで続くというのだろうか?
筆者としては、劇薬投与による目先の対症療法でしかなく、その副作用や反動落まで視野に入れているのだろうか疑問であり、また、選挙で大勝し過ぎたことで、首相や政府・与党に、やや過信と奢り、多数の力に頼った暴走、猪突猛進と焦り過ぎのきらいがあり、国民にも、株高・円安に浮かれ過ぎといった印象を受けるので、無条件で「アベノミクス」礼賛、大歓迎というわけにはいかず、むしろ「アベノリスク」と捉え、一抹の危惧の念で慎重に今後の推移を見守ることと、第3の矢の戦略的経済成長の具体策明示、実体経済面での具現化努力、この機をアベノリスクの予防策としての抜本的な日本の国家構造改革への好機とすることこそ肝要であろうと考える。
「景気は気から」といった一面があることも事実であり、国民も企業も日本全体が、バブル経済破綻後の長期低迷と、為政者の無策で、すっかり自信を喪失し閉塞感に陥っていたのを、安倍首相が、たとえアナウンスメント効果狙いだけであったとしても、世界にも例がない危険な賭けともいえる無制限の金融緩和策を打ち出し、自ら積極的に行動し、禁じ手とされていた総裁人事に関与してまで、腰の重かった日本銀行との協調体制を取り付け、国民にたとえ一時的で聊かなものであったとしても期待と夢を抱かせ、投資市場を活気付け得たことに関しては、その善悪は別としても、第一次組閣当時とはがらりと人が変わったようで、また歴代総理としても数少ないタイプの指導者として、その勇気と決断、これまでの実行力には一応の評価をしておきたい。
しかし政治はあくまで正しい判断による結果が大切であり、これからの具現化こそが多難な重大課題であるが、未だに、将来どんな日本に、どんな方法でするのかといった長期的な国家再興の具体的なビジョンや方針、戦略的遂行計画が明示されていないことは大いなる不満や不安な点であり、その実践と実体経済面での成果が伴わないと、やはりハッタリのバブル景気回復でしかなかったのかと化けの皮が剥がれ、落ちた偶像になってしまいかねないし、それだけでは済まない、劇薬投与による対症療法の副作用や反動の悪影響、失望感の、国内のみならず国際的な経済・社会の悪影響と大混乱が心配である。
「アベノミクス」が本当に日本の救世主となるか、単なる「バブルミクス」で終わるか、「アベノリスク」の悪魔となるかどうかは、投資市場経済頼みの今の株高・円安の空人気と空景気に浮かれず、この機に第3の矢といわれる実体経済成長路線へのロケットに点火し、巧みな操作で正しい日本再興への軌道乗せと、そのための構造改革に成功し得るかどうかに、わが国の将来の命運が懸かっている。
日本人は「意思あるところに方法あり」とか、「理屈より行動があれば道は自ずと拓ける」などといった精神論や根性論が依然として根強いが、「兵は国の大事、軽んずべからず」、「始計第一」であり、やはり、「正しい事実認識と先見力があってこその、正しい判断、正しい操作、正しい成果」であるというのが真理であり、失敗を恐れず挑戦する勇気を賞賛するというパイオニア精神が旺盛な超大国アメリカでさえ、八分の勝てる見込みがない戦いは避け、勝てるか負けるかやってみないとわからないような自信のない戦いは絶対に仕掛けない」という。
そのアメリカがもう、安倍首相のあまりにも調子に乗った早急な右傾化の外交や経済運営を危んで警戒視し、抑制の釘を打ち始めているとも聞く。
実態が伴わない市場相場頼みの現在の株高・円安の安倍バブル景気だが、その投資の4割が海外の投資ファンドによるものであり、彼らが日本の株式相場を主導・左右するが、彼らは篤志家的長期安定株主になる気も、ましてや日本のデフレ苦境からの脱出を支援しようなどとは決して考えておらず、あくまでも自己利益本位のトレーディング・ストック、つまり短期売買での値上がり差益のボロ稼ぎであり、その好機を虎視眈々と狙い、大量売り逃げするには、当然それに対応する買い手が必要であり、そのターゲットとしているのが、経済音痴だが小金を持った博打好きの日本の大衆投資家であり、これを褒め殺してカモにしようと目論んでいるのだ。
過去の体験例からも、このカモの客層に投資熱が高まり、外人持ち株額が10兆円近くになり(証券業界の極秘情報では本年6月中旬と予測されている)、株価の上昇スピードが鈍くなり出した時から彼らの売り抜けのサインとなり、そうなると一気に早い者勝ちの売り相場となるが、彼らが売り越に転じなくても、買いが鈍ったり止まるだけでも、日本の株価はたちまち暴落し、グローバル経済下では世界にも波及する。
これは日本の機関投資家や個人投資家が買い支えできないとなると、アベノミクス・バルブの思惑は崩壊するので、それまでにデフレの解消、実体経済の好調化が達成されねばならないのだ。
にもかかわらず、そうでなくても資金需要がなく余剰気味である日本のお金が、アベノミクス金融超緩和で更に大量に出回り、行き場がなくなるとなると、銀行経由で証券市場、さらには海外金融投資市場のマネーゲームへ投ずるしかないことになる。
しかし、本当に資金不足で苦しんでいる中小企業や庶民にはお金が回らず、日本の将来を展望した国内のインフラ整備や新しい無公害エネルギー開発、東北復興、民間企業の設備投資や技術開発にも回されていないので、雇用の拡大や賃上げ、個人消費の活発化など実体経済への反映効果は、今のところまだ鈍いままである。
いつまでも人為的な口先の相場作りという投資金融市場頼みのバブル景気に悪酔いしているような不健全な経済や世の中が平和的に永続するはずがない。
無制限な超金融政策や、デフレの解消から目標値を設定したインフレへの切り替えというリフレーションは過去の体験例が少ない。それに安倍政権が起死回生の策としているのが思い切った金融緩和政策は、バブル経済破綻以降、既に旧自民党や民主党の菅政権時代にも実施されてきたことで、別に珍しいことでもなく、金利面からの緩和策としては現在もゼロ金利政策が、量的規制緩和にしても、資金の需給環境を無視した緩和策で資金余剰状態が続き、それが行過ぎたマネー経済の加熱を招来した。しかし、こういった金融政策だけでは、一時的なアナウンスメント効果はあっても、これまでのような間接的な金融政策では、実体経済面への直接的効果が鈍く、限界があることが、日本だけでなくリーマンショック以来の世界同時不況対策として先進他諸国でも現に実施され効果薄だったと立証されてきたことであり、今更どうしてといった感を抱く。
金融政策だけでそんなに簡単にデフレからの脱却が可能であるというのなら、なぜこれまでの政権でも実施してきたことなのに、それが実現しなかったのであろうか。
それは、バブル崩壊の当初にその深刻さを十分に認識し、小出しやゼロ金利政策だけでなく、今回のような思い切った量的緩和にも踏み切るべきであったという見解もあろうが、それよりも、いくら金利を極めてゼロに近く下げても借り手がなく、一方、国内での運用金利も安いとなれば、行き場のないお金が海外投資やマネーゲームに向かい、それはやがて海外への輸出の障害、産業の海外脱出を招くと懸念したこと、そうと知りつつも目先の企業生き残り策を考えると、それでも国益より企業利益を優先したこと、案の定、それが今になって、国内生産力や国際競争力の低下なる悪循環を招いてしまったことである。
ある時期は、ベンチャー企業の起業化推奨と、それを可能とするベンチャー・キャピタルの充実も提唱されたが、それも創業資金がゼロでも会社設立が可能になるなどといった曖昧なまやかしの法制もあって、「利は元にあり」といった原理に反するものであったので、意図した雇用の創出や税収増、国家財政の健全化、経済の活性化などといった実に結びつなかった。
それ以上に更に重要な根本的要因は、経済の先行きが見通しが困難な混迷の時代となったこともあり、そんな時代にこそ大切な、国家の将来ビジョンや目標が明示されず、国民に夢が描けなくしたこと、資金需要環境整備などによる国家の経済。産業構造や財政構造の改革、資金需要環境の整備などの努力を怠ってきたこと、デフレの根本原因は、日本の経済・財政構造にあると認識すべきであろう。
従って事実、今回の依然として金融政策に重点を置くアベノミクスについても、欧米では、日本のお手並み拝見と危惧の念も抱きつつ、やや冷ややかに眺めており、ドイツなどではこういった投資金融や市場経済万能主義に同調せず、直接的財政投資の強化などの独自の新政策を探求中である。
だから今までのところ、アベノミクスの恩恵を受けているのは、これまでも政策的優遇での勝ち組であった一部の金余り大企業や富裕者、輸出企業、不動産業、証券業などでしかなく、中小企業や庶民には、景気回復の実感がなければ、期待より危険視し、不満と不安の方が増大している。
したがってわが国も、アベノミクスの当面の緊急対症療法は良しとしても、今後の実体経済の活性化や長期戦略的な国家の発展策に関しては、いつまでも、これまでのような欧米の亜流や、狡猾な彼らの褒め殺し戦略の罠に嵌められることがないように、この際、毅然として独自の発展策を探求し、国家構造や、大企業・富裕者優遇の政策を根本的に改めるべきであり、そうでないと世界中のモデルとなるような風格ある国家への再興は望めなくなるであろう。
今回の安倍総理の勇断には、その正しい情勢や事実の認識と判断がどの程度あってのことであろうか、どうも目先の対応でしかないと感じられるが、如何なものか?
こういった金融政策に重点を置くアベノミクスをあえて「アベノリスク」と称するその他の懸念問題としては、先ず第1に、政府とは間を置き、あくまでも独立性・中立性を重んじるべき中央銀行である日本銀行への、今回の総理の介入と抱きこみに関しての批判についてであるが、裏面の実態は知る由もないが、公表されているような協力要請という程度なら、国家があっての中央銀行であり、その存在価値や独立性・中立性は尊重すべきだが、国政と離反してのものであってはならないので、両者の意思疎通を図ることは必要であると考える。
第2は、アベノミクスで最も肝心な第三の矢である「戦略的経済成長」に関する具体施策が未だに明確に打ち出せていないことである。
幸い第一エンジンの燃焼では先ず先ずの好スタートが切れたようだが、この推進力が燃え尽きない内に、早く第二の財政出動、第三のメインエンジンである戦略的経済成長に点火し、期待通りのデフレの解消から、調整インフレ目標実現への転機のリフレーション期を無難に乗り越え、本格的な経済の成長軌道に乗せる必要がある。金融緩和資金を、銀行を通じて間接的にと考えても、銀行は危険な融資より、投資運用した方が儲かると考えようから、国策的に直接、公共投資や中小企業支援など、明日の発展と国家体質の強化に連なる有効部門に直接投資する方が、資金の国外流出も防げ、効果が早く出てより有効と考える。
第3は、国家財政規律との調整であるが、これは国家経済も家庭経済も健全性を維持するための原則に変わりはなく、それぞれの事情や環境に応じた、その時々の収支の均衡で生活設計や態様を保つことが何より大切であり、無制限な借金で派手な生活を続けようとするのは、決して健全な生活態様とはいえないことは当然である。
第4は、経済には必ず功罪の2面性があるが、その都合の良い面だけを強調している嫌いがあるという点である。例えば、円安は輸出依存型企業にはプラスでも、エネルギーや生産の基礎資源が乏しく、輸入依存型の企業や生活必需物価高の影響を受ける庶民の家計にはマイナスとなり、プラス・マイナスで、海外生産比率が高まった日本にとっては、輸出産業のプラスより、資源輸入コスト高の方が諸般得への悪影響が強いといえよう。
第5に、インフレターゲット2%の設定については、この目標達成までは金融緩和政策を続けるというだけのことならあまり問題ではない。それより便乗値上げなどで歯止めが効かず、悪性インフレにならない化が心配であり、その監視と調整体制を強めていただきたい。血液は金融は経済活動の血液、物価はその血圧、それを調整する番人が日銀であり、いずれにせよこの施策は救命治療の緊急輸血といえ、無制限緩和の恒常化は慎むべきである。
第6に、消費税増税についてであるが、元気な者(勝ち組)に更に元気になって稼いで下さいと輸血(金融、税制面での優遇)し、救急を必要とする貧血者(社会的弱者)から血液を抜き取る(増税)といった愚かなことは避けるべきである。
中長期的には財政健全化との調整で必要となろうが、安倍首相が、「いずれ税率アップは必要だが、現時点で時期やスケジュールは明確に設定せず、景気の状況を見て判断する」としていることは妥当、この後の増税に際しては、一律でなく逆累進性是正、貧富格差の是正も念頭に置いていただきたい。
どの党の誰が政権を担っても簡単には解決し難い苦難が多い異常事態なので、そう度々短期で総理が代われば国際的信用もなくすし、腰を入れた良い政治などできるはずはない。それに既に、多少のリスクは覚悟で、未来へのロケットが発射されてしまったのだ。今はただその成功を祈るばかりである。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

資料請求・お問い合わせはこちら。お気軽にお申込み下さい。

製品詳細・資料請求・お問い合わせに関して

製品に関する詳細情報、料金体系につきましては、「資料請求・お問い合わせ」ボタンをクリック後、以下の手順でお問い合わせください。

  1. お問い合わせ種別:「お問い合わせ」を選択
  2. お問い合わせの内容:「○○○」(任意:質問事項・要件など)とご記入
  3. ご連絡先:必要事項を入力し、送信してください。
このページを見ている人はこんなページも見ています

重要な経済指標である倒産をベースに国内経済を把握できます。
倒産月報・企業倒産白書

倒産情報や債権者リストなど経営判断に欠かせない情報誌です。
TSR情報誌(倒産情報誌)

国内を含めた世界最大級の多彩な企業情報をオンラインでご提供!
インターネット企業情報サービス(tsr-van2)

1日2回、最新の倒産情報をメールいたします。
TSR express(TSR情報Web) -倒産情報配信サービス-

TSRネットショップ TSRの商品がオンラインで購入できます!

インターネットエラベル TSRがオススメする就職・営業に役立つ地域の優良企業紹介サイト

TSR Express 1日2回の倒産情報配信・検索サービス

メルマガ登録 無料セミナーやイベントを優先的にご案内!

ページの先頭へ