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逆境に強い人財の発掘と育成

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公開日付:2013.03.22

1 大事・難事に担当を、順調・逆境に襟度を、群行・群止に識見を看る!

事業発展に必要な諸要素は「モノ・カネ・ヒト・情報・手法(英語の頭文字では5M)」であるが、モノを生産・販売するのも、カネを上手に管理して利益を稼ぎ出すのも、情報を巧みに活用するのも、これらを有効に処理する手法や諸制度を考案するのも全て人であるから、ヒトの要素こそが事業経営の主体をなすものであり、それも人員の数量的多少より質の良否、人材(財)の存在、とりわけ逆境期にこそ真価を発揮し得る有能で逞しい逸材の有無が企業存続発展の決め手となる。
古代中国の名宰相呂新吾の人物鑑定法の中に、「大事・難事に担当を、順境・逆境に襟度を、群行・群止に識見を看る…」とあるが、恵まれた環境、順調な高度成長の時流に乗って躍進を遂げた大企業や有名を馳せた経営者は多いが、わが国の民間法人企業数約260万社、つまりわが国には社長と称されるヒトがそれだけ存在するということだが、その内、激動と過酷な競走で、企業寿命が短縮しつつある現代、長期デフレ不況にも耐え、健全な事業経営を維持・発展し続けている、本当に実力のある企業や経営者は、果たしてどれだけあるだろうか。赤字経営などで法人所得税を納めていない企業が約40%もあると漏れ聞くが…?
日本の社長を分析する、人口比で社長と称される者の比率が最も高いのは福井県(注:独立志向が強い県民性で、中小企業が多い)、一部上場企業の社長では兵庫県生まれが1位(注:創業オーナー型よりサラリーマンの出世頭型、出身地では県内先進地の阪神間より北部但馬・丹波地方出身者が多い)、同じく、卒業大学別では、近年、東大より早稲田、慶応の方が上回り、増加傾向が目立つのは名大、東北大、上智、部活団体スポーツでは、野球とラグビー、そのポジション別では、キーマンといわれる、野球ならキャッチャー、ラグビーならスクラムハーフが目立つ。

2 逆境期に真価を発揮する実力派人財の見抜き方

逆境にも強い本当に有能な人材は、お金(待遇)だけで得られるものでなければ、一朝一夕では育つものでもなく、出自の良さ、高学歴、ペーパーテストの高得点、面接時の黒服姿と行儀の良さなどだけで見抜けるものでもない。また、アメリカのように、既成能力を採用するといった外部購入価値では得られず、企業自らの努力で求め歩いて発掘し、素質を見抜いて採用し、将来に適応し得る能力にまで育て上げる付加価値の創出であるべきであり、企業愛の魂が染込んだ叩き上げは、いざの時に逞しい。
但し、子飼いの士とはいえ、多様・高度化するビジネス環境の下では、それに適し将来を先取りし得るような人材育成には、あえて失敗や多様な分野の仕事、他社出向、海外勤務体験などをさせ、視野を広め、多能化を図ることも不可欠となる。
事実、社員一人当たりにかける教育研修費と企業の業績(労働生産性)とは比例し、充実した教育研修の有無の差による収益生産性は、全く同じような商品を同じような条件で扱う銀行業界でも、7~8倍以上にもなることや、逆境の現況においても、手堅く成長し続けている企業には、社員を厳しく育て、大切に扱っているといった共通要項が認められることなどからも明らかである。
従って事業経営者は、社員の教育研修に要する時間や労力や経費は、最も生産的で有効な建設的先行投資であるといった認識を強く持つと同時に、大事に育て上げた社員なら、不良在庫の整理のように簡単に放出せず、逆に更に生かして企業再興に役立たせる努力をすべきだ。教育研修費を、交際、広告宣伝費と同じ3Kの無駄な経費とするのは間違いだ。
近年の若者は褒めて育てよという傾向が強いが、やはり「ならぬことはならぬ」と注意し、叱るべきときは厳しくその理由を説明して叱る「しつけ…真剣に叱り、続けて反復し、計画的・建設的に」教育も大切で、褒めるばかりが能ではない。子供の教育では「7割褒めて励まし、3割叱る」こと、大人のビジネス教育では逆に、「7割叱って、3割褒めて励ます」こと、怒りは禁物、叱りは必要と考える。
筆者の永年の体験からの、逆境に強い逞しい有能人財の見抜き方としては、基本的な資質としては、概して、出生地では気象の変化が激しい気候風土、雄大な自然に恵まれた地域出身者、出自としては、名家の世襲御曹司のように、看板の重みを背負っている保守的な者でなく、フリーハンドの暴れん坊であること、自ら幼少期に貧苦・逆境体験をし、父母の苦労や努力、小銭の有難さを肌身で感じてきた者、過去に若気の至りといった多少の悪さや失敗を体験しながらも、それにいじけたり、挫けたりせず、「なにくそ、今に見ておれ」と頑張って、耐え抜き克服してきた者、乱世では、平治のような如才のない常識的英才型より、織田信長のような奇才型であることなどである。
余談だが、新陳代謝が激しい銀座の夜の世界で老舗を誇るクラブのママの人材の見抜き方には、流石と感じさせられるものがあり、「あの人は将来大物になる」とした人物に見間違いがあったことは少ない。その人物鑑定法の一例としては、「奢らず、威張らず、へつらわず、酒の飲み方に節度があり、馬鹿な金遣いはしないから、かえって末永く大事にしたくなるような客だ」という。
新規採用時においては、ペーパーテストや個人面接より、事前の待合室でお茶でも出しながら、自然体の待機風景をそれとなく観察すること。自分でテーマを自由に設定させて200~400字原稿用紙に小論文をまとめさせること、少人数グループで自由討議をさせたり、簡単な協力パズルゲームをさせ、創造性やリーダーシップ、協力・協調姿勢、コミュニケーションや説得力を観察することの方が有効であった。
例えば、円形に1本の斜線を引いた図形を示し、「この図形から連想できるものを所定時間内にいくつ考え付くか?」という課題を出すと、大概はそのままの平板な発想から駐車禁止のマークと答える。確かにこれも類似発想でアイデアを得ようが、それよりもこの図形を、拡大したり縮小したり、平板でなく上から見たり立体的な球形と発想したりで、マイナス螺子の頭、マンホールの蓋、山手線と中央線が描かれた地図、ボール、気球、地球儀、地球と赤道、宇宙船の丸窓から見た地球の稜線、土星のリングなどといった連想が出来る方が、発想の柔軟性、大胆性、飛躍性、奇抜性などがある有能な資質のある人財といえる。
長さ1メートルほどの1本の紐と、直径5cm程度の球状の物体を同時に組み合わせ、実用的な製品を考案せよといった出題でも、風船、ヨーヨー、分度器、水深計、垂直計、時計の振り子などといった発想が出されるが、生真面目で固い頭の官学卒の学業優等生より、むしろ遊び好きなやんちゃ坊主タイプの方が奇抜で面白い発想力を持つ。本田技研の創立者本田宗一郎氏などがこの好例といえよう。

3 社員教育研修体制の整備

各企業が期待する人材は、それぞれの企業の将来に向けての長期的発展計画に基づき、それに対応し得るレベルにまで、各企業自体の努力で育てる必要があると申し上げてきたが、そこには知識・技能だけでなく、その企業独自の経営基本理念や伝統的社風などといった魂も植えつける事の重要性を込めてのものである。
学校教育では進級レベルに達しないと落第させることも可能だが、企業教育では、一人の劣弱者が企業全体の信用失墜や弱点となりかねないので落第者が出せず、全社員を標準期待値にまで引き上げる必要があり、また事業の将来発展計画に沿った、卒業のない生涯学習が要求される。
この点が学校教育と企業教育の大きな違いであり、特徴であり、要点ともいえる。
教育研修の成果を上げるための原則の先ず第一には、有能な人材は厳しい環境に揉まれて逞しく育てられ、人は日常最も多く接する者の影響を最も多く受けるといわれるので、そのような教育重視の社風と職場の雰囲気づくり、環境と教育研修体系の整備、計画的な取り組みと反復継続に留意することが肝要である。
企業の教育研修体系は、大きく(1)企業内教育研修、(2)企業外教育研修、それに(3)自己啓発の推奨の3つに大別される。
企業内研修には、(1)日常の職務遂行を通じた社員の修練といった職務内研修(On the Job Training)、(2)社内での職務現場を離れた研修所での合宿研修などといった職場外研修(Off J・T)、(3)執務時間外や休日などを利用した任意参加の社員対象公開・セミナー、(4)過去に小生が発案し銀行や大手チェーンストアーなどの多忙な職場で実践指導し有効であった、日常業務を中断せず遂行しながら実際的に現場で職場ぐるみで学ぶ、臨場巡回職場ぐるみ研修(Whole Family Training)に分類される。
職場外教育研修は、(1)外部教育機関などが主催する公開講座への指名参加受講、(2)他社や異業界企業などへの派遣研修、(3)通信教育の指名受講推奨などがある。
自己啓発も、(1)企業が個人別に学習課題を与えて積極的に、半分義務的に受講を強く推奨するものと(近年のビジネス英語・中国語教育、パソコン研修など)、企業が推薦する通信教育を、(2)あくまでも個人の自発と任意で受講するものとがある。
いずれにせよ、教育研修の成果を高める原則には、計画性の原則や反復継続の原則もあるので、これらの受講を企業の能力管理や人事考課の資料とし、単位取得や受講費助成などのインセンティブをつけ、学習を奨励することが効果的である。
OJTの場合、各職場ごとに、教育リーダーを任命したり、先輩に後輩の指導をペアーを組んで責任担当させるブラザー&シスター制度などが有効であり、彼らリーダーに対する事前の教え方研修を実施することも必要である。
受講対象者別の分類としては、採用前の準備教育、新人社員研修、管理職登用前研修、中堅管理職・役員研修に到るまでといった、各階層ごとに実施する横割りの「階層別研修」と、営業研修、生産・技術研修、事務能力向上研修など、同一職務ごとに縦割りで実施する「職能別研修」とがあり、近年は、縦横を組み合わせた混合研修で仕事の互換性を高めることが重視されるようになってきている。
階層別教育で特に大切なのは、新人の研修と管理職登用研修である。鉄は熱いうちに打てであり、新人研修では、即戦力化の現場配置を焦らず、職場内研修(OJT)だけに依存せず、基礎研修に時間をかけ魂を吹き込む事が将来のためになる。
したがってこの段階で、全般的な基礎研修に続き、その資質を見抜いた適材適所配置に向けた担当職務別基礎研修まで実施する必要がある。
下層部の研修では、作業遂行能力の習得に重点がかかり、上層部になるほど、作業実施能力より企画力、状況判断や意思決定能力に重点がかかるが、階層の如何に係わらず必要とされる能力は人間関係とコミュニケーションの能力である。
わが国の企業の場合、機械購入の場合には慎重で、下見や試運転を重視するのに比し、一人の雇用者に定年まで支払う直接・間接人件費は約3億5千万円ともいわれる人材採用では、案外の安易さであるが、人は機械のように、たとえ不都合だったからといっても、簡単に切り捨ても下取り放出も出来ないと考えるべきである。

4 上手な社員の育て方

学校教育においても、良い教師と出会い、その教え方が上手であったため、苦手であった教科目が好きになり成績も上達したといったことがあるが、産業教育においても同じで、企業勤務者は自分で上司を選べないので、教育に熱心で周囲の先輩の後輩指導が徹底しているといった良い企業風土や環境の職場と、教え方が上手で良き手本となるような上司に恵まれるほど幸せなことはないし、こういった社員の自社教育で、全社員の能力のバラツキを少なくし、チームワークの重視で組織総合力を発揮しようとするのが、諸外国にはない伝統的で独特な日本型経営の長所ともいうべきものであろう。
1980年代に不況で苦慮したアメリカは、従来、チームワークより個々人の既存能力顕示型で、同僚はライバルといった企業風土であったものを改め、こういった日本型社内教育重視の長所を見習い、それで立ち直ったとされ、近年は、アメリカの社員一人当たり研修予算は、長期不況に喘ぐ日本を上回るようになっている。
産業人教育とはいえ、差し当たりの職務遂行上必要な知識や技能の教育訓練だけでなく、「知識×技能=才能」×「意欲×人間性=人徳」といった「才徳兼備」の全人格教育が企業のイメージアップや経営体質の強化にも絶対必要だということと、教育は上から末端まで、全社ぐるみで学ぶという社風を築くことが肝要だというのが筆者の持論であるが、以下その要点を列挙しておこう。

  1. 問題が生じてからの泥縄的教育研修より、問題を生ぜしめず、企業の発展計画に沿った教育ニーズを先取りした、計画的で予防的な教育研修を重視すること。
    従来の研修は、企業が現実に期待する能力に満たない点を修正し、全社員一定の期待能力水準にまで研ぎ揃える画一的研修、金太郎飴型社員養成が主体であったが、激動と変革の近年では、未来先取り型の、企業が将来に期待する能力に間で引きあげる積極的志向の研修が要求されている。
  2. 時代の多様化に対処する社員能力の多能化を図るため、適宜、職務転換(ジョブ・ローテーション)を実施や生涯学習を重視することで、「心・知・技・体」四位一体のバランスが良い全人格教育、仕事の互換性がある万能型社員育成を目指すこと。
    「2点間を結ぶ最短距離は直線、3点を結べば平面を形成し、あらゆる点を全うする面は球形」であるが、この球形人材こそが円満な人格者であり、それに到る手順と要領は、「逆さT定規」を回転させながら、漸次、多点を結ぶように、より広く、高く、深くを心がけることと、「守・破・離の原則」、つまり先ずは基本を忠実に守り、次にそれを突き破った応用動作を修練し、それが十分にこなせるようになってから、他を引き離した独創的な能力を身に着けること。
  3. 教育とは、Educationの語源がDraw out、即ち、朝得つけて型に嵌めることでなく、個々人別の特性や潜在能力を発見し、それを最大限に発揮させることに重点を置くこと。
  4. 人材教育の鉄則は口先だけで教えるのでなく、指導者が率先垂範する後姿の正しさで、あのような人になりたいと共感し、興味を持たせることが肝要である。
  5. 人間の生涯能力の開発法は、4段の鏡餅飾りのように、先ず九つと「つ」が付く幼児期は、学力より体力育成を専一に、体力に自信がつけば自ずとやってみようという気力が涌き、そこで基礎的理論の知力を身につけさせ、最後の段階で技術力の習得に挑ませること。日本は音楽の勉強や自動車運転免許でも、この全く逆の手順でやっているから、学習に興味がもてなくなるのだ。
  6. 知識教育と技能訓練では教え方を変えること
    いずれも、教える対象者のニーズやレベルに合わせ段階的に教えることが重要な点は同じだが、知識教育は、彼らの既知のことを例に未知の分野へと進め、専門用語は平易な解説をつけて教えれば興味深く学ばせられる。たとえば、お金を稼ぎ多くの人を幸せにする方法が経済だが、どうしてお金を稼ぐかと問えば、一生懸命、効率的に働くと答えるので、それが経済発展の原点だといえば、親しみを感じ納得する。
    技術の修練は、たとえば自動車の運転なら、その実物を見せて仕組みを説明し、実際に操縦して悪い例と良い例を示し、全般の概要を説明してから、ハンドルやブレーキ操作など各部操作技能の要点を教える。そうすれば製品完成への一部に過ぎない地味な部品の品質管理の重要さを理解し、作業に意欲が涌き魂がこもる。
  7. 勘所を教えると習得が容易で上達も早くなる
    昔の徒弟制度の教え方は、無理偏に拳骨とか、俺から黙って盗めといったものが多かったが、例えば空中綱渡りでは、高所怖感をなくすこととバランス感覚がポイント、美しい所作は一動作でなく二動作以上でと、その肝どころを教えること。

このように、有能な人材に育て方は、「根気強く、大きくこまやかな愛情をベースに、教育ニーズを把握し、向上目標を定め、教育訓練計画を立て、環境整備や教材を準備し、学習結果の利点を感じさせ、正しいやり方を説明し、やらせてみて、修正すべき点は要点をおさえて指摘・指導し、その結果を確認し、改善・進歩の成果を認めて評価し、褒めて、励ますこと」と、組織は恐ろしいほど敏感に、経営トップの性格や意思、能力を反映するので、やはり経営トップの言行一致の姿勢こそが肝要であるということに尽きる。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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