ホーム > 最新記事 > 時局レポート > 2013年 > アベノミクスによる日本再興への注文

アベノミクスによる日本再興への注文

  • RSS
  • お気に入りに登録する

公開日付:2013.03.08

日本の経済・産業は今、将来の明暗を左右する瀬戸際に立たされており、その救世主として安倍首相の新政策「アベノミクス」に期待が高まっている。
安倍自民党も、そのあたりの世相と責務を理解し、控え目で方針が不明確であった第1次内閣当時とは打って変わった強気な姿勢で、今回は総選挙前から「自民党は変わった」をスローガンに、国家財政の再建よりも、経済成長と国際的威信の回復を差し当たりの最優先課題に掲げ、これにより消費税率の段階的アップ、原子力発電所再稼動、TPP参加、高齢者医療・介護費負担率、貧富格差増大などといった、重要だが難題で、支持票には結びつかないような事項には触れずにぼやかして、積極的財政出動の姿勢を明確にした結果、アメリカと、財界、証券市場などの好感を呼び込み、権力に迎合するマスコミや御用学者まで味方につけて、見事に圧倒的な大勝で政権与党の地位奪回を果たし、何処まで本気であったのかは不祥だが、リップサービスだけで、とにかく株価の高騰と円安への転換までもたらしたのだから、安倍党首は、してやったりといった笑顔で高々と勝利宣言をした。
この辺りは読みの深さとなかなかの巧妙さだといえなくもないが、それにしても少し前までは、あれほど民主党の政治刷新を歓迎して煽て上げ、自民党の歴代政権をけなし、批判し続けてきたマスコミなどが、しらっとして掌を返したように「アベノミクス」などと、まだその具体的な政策や、ましてや成果が明確でない段階にもかかわらず、一斉に歓迎の煽り立て記事に切り替えた無節操・無定見さ、それを冷静に見極めて善悪の判断をしようともせず、早速に目先の利権にありつこうと画策する財界筋の浅ましさ、それに、勝ち馬に乗ってその恩恵に与ろうとして証券会社の窓口に殺到したりレジャーに浮かれる民衆の蒙昧さと軽薄さにも呆れ果てる。
確かに、経済発展や景気を左右する基本には、「人間の前向きな気持ちの持ち方次第、景気は気から」といった面があることも事実であり、実際、こういった選挙用の人気取りアナウンス効果だけで、特別に意図的な市場操作がされたわけでもなく、わが国の株式市場は活気づき、株価は3割以上も急騰し、為替相場もドル高・円安に転じたから、一見、安倍新政権は順調な滑り出しをし、福の神であるかのようにも思えよう。
しかしこの僅かな期間中に、日本の経済・景気に大きく影響する自然環境や世界の情勢が好転したり、アメリカ経済の復元、画期的な新エネルギーや技術の発見、経済を牽引する新産業の誕生があったわけでも、国内の実体経済に好ましい現象や指標値の改善が確認されたわけでもないのだから、あまりにも異常な現象であり、口先きだけの煽り相場、思惑心理相場、実体の裏づけが伴わない悪夢のバブル経済トリックの再演のようでもあり、むしろ、やがて必ずいつかはある反動落と失望感の揺れ戻しの方が怖い。
とはいえ、たとえ一時的にせよ、長期不況で萎縮していた国民の心に一抹の希望の灯を点し、予想以上の市場の反響も得たので、自己の政策に自信を強め、第2次の首相就任後、この路線で突っ走ることになったという感は否めない。
したがって、この間に、第2弾、第3弾の本格的経済成長ロケットにうまく点火出来て、将来の日本を深謀した根本的な国家体質改善の軌道に果たして乗せられるかどうかという点が気がかりであり、危険な賭に打って出たともいえ、まだまだ楽観は出来ない。
なぜなら、肝心の第3の矢の経済成長戦略の具体策が曖昧で、それはこれから考究して肉付けをするという事だからである。
だがこうなれば、同じく不況に喘ぐ欧米諸国からも、これまでのように、「日本はもっと頑張って国際協調・貢献をしてもらわないと困る」とか、「日本はエゴで不公正な円安誘導で、輸出競争での優位性を目論んでいるのでは」といったような妬み半分の身勝手な要求や難癖もつけてこようから、これからこそが本当に多難であると同時に、真価の発揮しどころとなろう。
実際に、狡猾な外国投資家たちは、虎視眈々と売り逃げ利鞘稼ぎの機会を狙っているので、こういった状態がいつまでも持続するとは思えない。
円安は輸出企業には有利でも、輸入業者にとってはマイナスであり、立場でその好悪が別れ、相殺される。
日本は輸出大国であると同時に輸入大国でもあり、この両者の比率は、国別では差があるものの、全体としてはやや輸出が大といった程度でほぼ均衡している。
本来、通貨高はその国の力が高く評価され、逆に通貨安は国力衰微が懸念されている証とされ、日本の場合、どちらかといえば、輸出増による経済発展より、原油などの資源輸入価格高となる反応の方が早く大きく出がちなので、諸般への悪影響が強い。
現に早速、原油や輸入諸物資の先行値上げや、国産生活物資の不当な便乗値上げが巷では見受けられるようになっている。
それに、日本のみならず世界的にも、これまでの経済学理論や各国の経済政策では、インフレの抑制や撲滅に関しては、幾度かの体験もあり、研究も進められてきたが、地球規模の需給環境が従来とは逆転し未知の世界に突入した現代、全く異なるデフレの解消や計画的インフレ誘導策については、十分な経験も、対策研究もされてこなかった事態なのだから、なおさら難しい課題を背負い、社会実験を試みることになる。
よって新安倍政権の行方は、「今は良い良い、帰り(反動、将来)が怖い…♪」といえ、これからこそが本当に多難な正念場であり、同時に真価の発揮しどころでもある。
第2次安倍政権は、発足後早速に、選挙公約の中から取り敢えずの優先政策として、(1)日本銀行と密接連携した大胆な金融緩和、(2)財政出動による積極的公共投資の再開、(3)これらを通じた戦略的経済再興策の立案」という「サンフレッチェ(3本の矢)の実施を表明し、物価上昇限度目標2%というインフレターゲットを設けて、デフレ不況からの脱却と、本格的経済成長路線への軌道乗せを目指そうとしているが、お題目としては誠に結構なことだが、いずれも具現化への具体的アプローチ策はまだ不明確なままである。
目下、国会で審議中の予算案で見る限りは、アメリカ寄りと財界志向であり、浮上を目指す潜水艦の船首部分を押し上げれば、直接的な手を添えずとも、漸次、その恩恵が末端の船尾部分にまで浸潤し、中小企業の業績改善、賃上げによる中間所得層の生活向上、雇用の拡大、福祉の充実、消費購買力の回復、税収増、完全景気浮上にまで及ぶであろうといった従来の自民党治世の基本姿勢とあまり変わりがないことがはっきりしたこと以外は、旧態依然として曖昧であり、特に前記したように、最も重要な(3)の戦略的経済再興策が「考究・立案する」となっているだけであることは聊か心もとない感がする。
従ってその評価は、もう暫くの間、この後の経済成長戦略の組み立て内容と、その具現化の推進状況を注意深く見守る必要があろう。
そこで今後のアベノミクス具現化の過程における留意点について、いくつかの注文をつけておこう。
先ず第1に、崖っ淵に立たされて大きな転機を迎えるも、その脱出口や将来への針路が見出せず、混迷し閉塞状態にあった日本だが、そういった自信喪失で家に籠もりがちな鬱病者に、たとえ一時的にせよ、明るい気持ちにさせる慰めの声をかけ、少しでもその気にさせた安倍首相の応急処置は、取り敢えず良かったと評価しておきたいが、今後、将来の品格ある健全な国家としての日本再興の具現化に当たっては、国家の運営も、経済・産業活動も、日々刻々と情勢が変わる「生き物」であることに変わりはないのだから、「人体の健康維持と成長を図るのと同じであることと、道に迷った時は原点回帰が必要であり、目先の成果に奢らず、拘らず、真理に基づく王道を堂々と歩め」ということを、治世の理念と手法の根底においていただきたい。
第2に、そういった意味からは、当面の施策として金融政策面からの刺激に重点が置かれ、それも超低金利という手は既にゼロ打たれていたので、この度は大胆に蛇口を緩めてて市場に出回るお金の量的緩和を図るというものだが、これは人体の治療でいえば、緊急輸血か点滴を打って、取り敢えず体力の回復をさせようとするものに過ぎず、根本的な治療にまでは至らず、限界もある。
健康を維持するための血液量の保持は絶対に必要だが、多過ぎても血圧を高め、少な過ぎると貧血となり、一部に固まりその流路が妨げられると溢血の原因となるので、最も大切な事は、その全身への循環をスムーズにすること、とりわけ足の裏は第2の心臓とされ、血液を心臓に環流させる重要なポンプ役であるから、この部分(中小企業や家計など)への円滑な還流に留意することが必要である。
金融は経済活動の血液循環に当たる重要なものだが、それが体外(国外)に大量流出したり、脳などの一部(大企業などの上層部)に偏重したり、固定化(埋蔵・隠匿)されたり、気温の変化(相場価格)で流量や圧力が過度に変化する不安定さは好ましくない。
従って、大胆な金融の自由化や緩和の一方で、その監視と調整の妙で、血液が本当に必要な分野に適量配分される、つまり経済の分野では、適正で有効な融資先や公共投資の選択といった「分配」の公正さへの関心を高めることと、頭寒足熱政策への発想転換こそが重要であろう。
第3は、人体の健康維持には、血液だけでなく、適切な食事(生産)、十分な咀嚼(効率的運営)、栄養素の確保(収益)、不良在庫の抑制(皮下脂肪蓄積・便秘)、痔ろう出血(浪費・乱費)予防などや、よく働く(勤勉)こと、休養すること(精神文明の向上)も大切であり、また、心・知・技・体、文・武・財・心、体格・体質・体力、栄養摂取など、なにごとも諸要素のバランスこそが肝要であるから、その舵取りをしっかりとしていただきたい。
第4に、今年もプロ野球の開幕が近づき、有名選手のアメリカ大リーグへの移出もあれば、逆に戦力外通告を受けて引退する選手もいるようだが、憧れのアメリカ大リーグ入りに挑戦したが、身体を壊して成功しなかった選手の要因は、もちろん日本とは比較にならないほどの過密で移動距離が長いハードなスケジュールということもあるが、多くは、基本的な体格・体力差があるにもかかわらず、巨体の外人選手に負けじとマシントレーニングで上半身だけを鍛え、長打力に拘るが、下半身とのバランスが悪い体形になってしまったことにあるという。
つまり、頭でっかち尻すぼみの国家構造でなく、樹木が根っこがしっかりしてこそ逞しく大きく育つように、底辺から盛り上がる足腰の逞しさこそが、経済の永続発展の基ではなかろうか。
全てアメリカの亜流やその追従で良しとせず、自主独立国日本としての、独自の道を確立し、主張すべきは堂々と主張し、協調・融和はすれども同化・隷属はしないという、毅然とした姿勢を貫き通していただきたい。
第5に、アルプスの少女ハイジで有名なスイス連邦は、地勢的にも不利な所に位置し、高い山に囲まれた国土面積は41キロ千平米と狭く、人口約750万人、人口密度約180人/キロ平米で、資源的にも恵まれないという点では日本とよく似ているものの、GNPは約4350億ドルでも、国民一人当たりでは約58千ドルと日本の約39千ドルより高い。地味ながらも堅実な国民性があり、世界で唯一の永世中立国という孤高を保ち、超大企業はないが、高級腕時計では世界ベスト10社の内で7割を占める他に、精密機器、医薬品、酪農製品、金融のノウハウなどでも、厳しい世界貿易競争の中でも揺ぎない地位を確保しており、社会福祉や治安の面でも優れ、贅沢ではないが食料自給率も良好で、国民は平和で安定した生活をし幸福感を抱いている。
わが国も、体格的な経済の大きさや、価格競争での世界優位性でなく、経済体質や、精密で高品質な製品、オンリーワンと誇れる技術やノウハウなどでの世界優位性確保、自国の環境や条件の特性を活かしたエネルギーも含めた自給自足率の向上、国内での独自のモノ作りの見直しを目指すべきではなかろうか。
第6に、そういった意味からも、これまで以上に、GNP(GNIも同じ)とGDPの開きを是正することと、貧富格差是正(分配の適正化)への関心と政策を強め、国と企業が栄えて民衆が苦しむといったことのないように配慮すること。
日本の企業が土地や人件費の安さを求めて海外に脱出し、外国で生産・販売をするようになると、GNP(国民総生産)は増大してもGDP(国内総生産)は減少し、貿易収支も、外貨準備高も悪化し、国内生産設備も技術力も弱体化し、雇用の拡大も賃上げも、税収増も、国内需給のバランスも期待できなくなり、国の外観は立派になっても体質や体力は脆くなり、国と企業は栄えても国民は苦しみ、豊かさや幸福の実感が得られなくなる。
こういった自企業の収益本位のエゴで売国奴的ともいえ、国内実体経済への貢献度が低い産業構造を改めるためにも、国内投資・生産の助成や優遇、輸出貢献産業の奨励策などを講じるべきであろう。
第7に、消費税率の段階的なアップについてである。わが国の消費課税制度は、全ての物品やサービスを課税対象とし、逆累進性が問題となる一律の税率で、原則全ての財貨・サービスの生産・販売者に課税し、業者はこれを消費者に転嫁させる間接消費税制度を採用している。
この方が、徴税の煩雑さや手間やコストから合理的だとされてきたが、消費者から徴収した預かり消費税を流用したり使い込んだり、虚偽申告で脱税する業者が出る余地が生じているし、生活必需品と不要な贅沢品も、高所得者も生活困窮者も同率というのでは、逆累進性の不公平さも問題である。
生活必需品など特定の物品やサービスは非課税としている国も多く、それを考慮すると、日本だけが極端に低税率とはいえないし、手間で非合理的だから出来ないということもないはずだ。社会保険料なども含めた公的負担全般との調整も配慮したきめ細かな税制、不労資産所得など恵まれた富裕者優遇税制の見直し、税制を通じた貧富格差是正、年金の総合的一元化なども、この際根本的に再検討していただきたい。
働きたい若者や、まだ働ける高齢者まで、非正規雇用による所得の差別化や、早期退職でその機会を奪い、所得を減少せしめ、それを社会福祉や助成でカバーしようとし、国家財政が破綻するというのなら、国内で就労し所得を得る機会の拡大に努め、勤労所得税収増を図り、消費購買力をつけるという政策に転換した方が、経済の好循環を喚起するし、精神的な負い目もなくなり、自信や希望も抱かせるというものではなかろうか。過剰な甘やかし福祉が、幸福な社会だとか、人間教育上好ましいとは言い切れないと考えるし、働けるものを働かせない方が、もっと大きな無駄であり、国家的損失であろう。民衆を見捨てた国が発展した例はないのだから。
第8に、国家の安全と国民の安心を図ることが政治の重要な目的の一つであるから、近年の領土問題などの解決が必要であることは否定しない。
しかしこの問題は相手があることだから、直ぐ簡単に片付くものでなく、崖っぷちに立つ日本にとって、今緊急に憲法を改正してまで防衛軍事力を強めて取り組むべき課題とは考えないので、下手に刺激せず、外交交渉での論理的立証で主張すべきは主張した上で、一時棚上げをする事が得策と考える。
先ずは「国内事情が落ち着き、良くなってこそ、外交も成る」というものだから、当面は内政を優先重視すべきである。突っかかってきている各国も、内政に問題を抱えているから、仮想敵国を設けて国民に危機感を抱かせ国家統率をせざるを得ないという事情を抱えている。
「平成」の年号には、そういった世相の見通し基づく示唆と願いが込められているのである。安倍政権の今後の良導を祈念して止まない。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

資料請求・お問い合わせはこちら。お気軽にお申込み下さい。

製品詳細・資料請求・お問い合わせに関して

製品に関する詳細情報、料金体系につきましては、「資料請求・お問い合わせ」ボタンをクリック後、以下の手順でお問い合わせください。

  1. お問い合わせ種別:「お問い合わせ」を選択
  2. お問い合わせの内容:「○○○」(任意:質問事項・要件など)とご記入
  3. ご連絡先:必要事項を入力し、送信してください。
このページを見ている人はこんなページも見ています

重要な経済指標である倒産をベースに国内経済を把握できます。
倒産月報・企業倒産白書

倒産情報や債権者リストなど経営判断に欠かせない情報誌です。
TSR情報誌(倒産情報誌)

国内を含めた世界最大級の多彩な企業情報をオンラインでご提供!
インターネット企業情報サービス(tsr-van2)

1日2回、最新の倒産情報をメールいたします。
TSR express(TSR情報Web) -倒産情報配信サービス-

TSRネットショップ TSRの商品がオンラインで購入できます!

インターネットエラベル TSRがオススメする就職・営業に役立つ地域の優良企業紹介サイト

TSR Express 1日2回の倒産情報配信・検索サービス

メルマガ登録 無料セミナーやイベントを優先的にご案内!

ページの先頭へ