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実態が見えてきた安倍ノミクスの評価

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公開日付:2013.02.08

昨年末の総選挙での予想以上の自民党の大勝利で安倍首相が再登場することとなり、そこで主唱してきた経済振興最優先政策の具体策と正体が見えてきた。
これは、消費増税や東日本大地震被害の復興促進、国際貿易や外交における日本の存在価値の向上にしろ、先ずは経済再建を通じた内政の安定を国民が選択した結果といえようが、今度こそは看板倒れの期待はずれにならないことを願いつつ、その正体と是非について考察してみよう。
先ず安倍総理自身の人物的評価についてであるが、第1次の政権では、その政策の具体的打ち出しや成果を見る間もない短期間で、体調不良のため退任されたので、なんとも評価し得なかった。
しかし政治家にとっては致命傷といわれる不幸な病気を克服し、雌伏のリハビリ期間中に、自己改革や更なる研鑽、旧来の自・公民政権の反省と問題点の洗い直しに努められた結果か、第1回目の首相就任時には、政界名門のプリンスで、人柄は良いが、押しの強さと個性、強力なリーダーシップに欠けるとの印象が持たれていたのが、今回は見違えるほど積極性と逞しさで、選挙前から明確に、増税など国民に負担を強いる点もあるが、大胆な金融政策と財政支出で、とにかく早期デフレ不況からの脱却と経済の好転最優先、毅然たる外交の展開などといった自己主張の政策を前面に打ち出し、国民の審判を仰ぐという姿勢で臨み、それに市場も株価上昇や円高への変転という好反応を示したこともあって、見事な圧勝で首相の地位に返り咲いた。
その是非や成果は今後もう暫くのお手並み拝見ということになるが、取りあえずは国民の期待と支持を得た、順調な滑り出しになったといえよう。
選挙に強く、それを勝利に導いた指導者ほど、その政治家としての地位の安泰を確保し得ることはないので、今後余程大きな失言や政策遂行上のミス、選挙での圧勝の奢りからの暴走や、党内反主流派からの揺さぶりに煽られた態度のぶれがない限り、当分は少なくとも党内のまとまり、政局の安定は維持されるであろう。
予てから筆者は、国家経済の発展や景気の浮上には、「7・5・3の要素と3本の推進ロケットの完全燃焼とその手順」が大切であると主張してきた。
改めてその要項を簡潔に述べると、先ず、経済発展のために必要な基本的な「7要素(7気)」とは、為政者や国民の(1)士気(やる気)、(2)勇気、(3)鋭気、(4)活気(元気)、(5)才気、(6)根気、(7)天気の7項目であり、語呂合わせからこの範疇に入れた(7)項目の天気(気象環境)以外は、全て人間の意識や気の持ち方など心理状態に関するものだが、これが経済発展や景気の好・不調を左右する基礎を成すものとなる。
国民により良い未来や国家にしようという前向きな意思と努力がある限り、今はどうあれ、何事も必ずその方向に向かい、目的は達成できるものである。
そういった意味からも、たとえ一時的なアナウンスメント効果であったとしても、株価の低落や円高の是正で閉塞的気分で落ち込んでいた国民や企業経営者に、些かでも明るい期待と希望を抱かせ、もうひと頑張りしようという気持ちにさせ得たことは、首相交代の成果として一応評価しておきたい。
「5項目の要素(5M)」とは、(1)モノ(生産資源)、(2)カネ(金融の円滑さ)、(3)ヒト(労働力人口や労働の質)、(4)マーケット(土地、市場環境)、(5)メソッド(情報管理システムなどの諸制度や運営手法の優劣)」などの要素に恵まれ、他国との競争で優位にあること。
「3項目(3安)」とは、(1)生産資源・エネルギー、(2)金融(金利)、(3)労働のコストが安価で、低価格・高品質の製品やサービスが創出できること。
景気浮上のための3本の推進ロケットとは、(1)輸出力、(2)民間企業設備投資、(3)個人消費の3項の推進ロケットが、この順序で、順調に揃って完全燃焼することであり、それぞれの経済発展への貢献度が約13%、17%、60%、合計約90%で、100%の上昇推力に満たないが、そんな場合に、残余の約10%を、発展軌道から外れようとするのを助成・修正する補助エンジンとして(4)財政投資で補うというものである。
新しい安倍政権が打ち出した当面の大胆な経済政策のことを「アベノミクス」とマスコミでは称しているが、これは従来にはなかった思い切った(1)「物価上昇率2%を目標とする調整インフレ策の導入で、デフレ不況からの早期脱却を図る」というもので、その具体的施策としては、本年3月の日銀総裁の任期満了交代を機に、日本銀行法を改正してまでも中央銀行との協調を強めて、(2)大幅な金融緩和政策を実施すること、(3)積極的な財政政策を採ること、(4)そのためには差し当たり10兆円ほどの大型補正予算を組むこと、消費税率を段階的に、最終10%程度まで引き上げることというものである。
安倍新政権が経済政策の他に、日本再建計画(安全で逞しい国家の骨格づくり)として掲げている方針は、原子力発電の安全性確保再検討、これに変わる再生可能新エネルギーの開発、便利さの向上だけでなく、安全や自然環境保持も考慮した産業・生活インフラの整備、東日本大地震被災の復興促進も加味した公共投資の拡大、憲法改正も含めた国土自主防衛力の強化、多角的外交の積極化、高齢者の医療費負担や児童手当、年金制度といった福祉政策の見直し、領土問題などでの国際外交姿勢の明確化などであるが、概して従来の自民党や民主党政権よりは、その実現性の如何はともかく、何をするかが比較的にはっきりと表明された点は認められよう。
しかしこれらには、多分に選挙対策向けのマニフエストも含まれており、当然、優先順位がつけられて先送りにされたり、国会審議の過程で大幅修正を余儀なくされたり、言うは易く行うは難しといったものもあり、また貧富格差の是正や社会的弱者の救済策、富裕層優遇の税制見直し、生活必需品の消費税非課税や軽減など複数消費税率の導入などには乗り気薄なのかで、すっかり亡失された感がある。
これらから、新安倍政権が掲げる政策の正体が明確になったことは、やはり保守本流らしい、アメリカとの協調維持、対中国警戒感が強いこと、財界や富裕層優遇志向ということ、先ず経済優先で、株価の吊り上げや円高の是正で、上層部の経済情勢が好転すれば、やがてその下層にある中小企業や中流サラリーマン層、若年層の就業、失業率の改善、社会福祉の充実などすべての分野にわたって、時期のズレはあっても、漸次富の分配・浸潤が行き渡るという従来からの姿勢であることなどである。
しかしながら、過去の例からも、こういった施策方針による富の恩恵が低層部まで浸透するまでに要する期間は5~7年かかるとされ、上層部に陽が当たるのは早いが、冷え込んだ谷底まで日差しが届くのは遅く、逆に谷底の日陰の冷え込みは最も早く、その前に次の景気循環の短期波動の波(周期は約4年)が再び襲い掛かるので、結局、谷底には陽が差し込まず常にとり残されたままとなる。それに日本の大企業は何層ものピラミッド型下請構造を形成しており、末端は常に景気対応策としてトカゲの尻尾切りとされ、引っ張り上げ育てようといった理念を持たないので、頭寒足熱策への意識転換が必要なのではといった疑念が残る。
いずれにしろ取りあえずの人為的経済刺激策(実体経済の発展が伴わない見せ掛けの金融経済による膨張経済、ミニバブル)による緊急対症療法が提示されただけに止まり、地球の転機という観点からの長期的な新世界や日本の将来を遠望した壮大なビジョンや方針の明示にまでは踏み込んではおらず、これまで苦難と忍耐の皺寄せを受け続けてきた庶民層の困窮実態には冷淡な、エリート族による理論の治世といえようか。
選挙で多くの国民の支持を受けて圧倒的に勝利したというが、この度の選挙結果は、自民党の新政策が有識者に信認されたというよりは、多分に、民主党のミスリードと分裂の結果の自滅、拙速に結成された群小新党の乱立で民主党票が奪い合いになったこと、期日前投票者に張り付いた出口調査結果の推計を、事前に自民党圧倒的優勢か?と報じたマスコミの誘導的情報宣伝に煽られた無定見な民衆の勝ち馬に賭けようとする心理的雪崩れ込みがあったこと、積極的賛同支持ではないが他の政党と比較して、安倍首相の人柄もあり少しは良くなりそうだからといった程度の消極的選択によることや、直前になっての株価の好転、円安への反転も、安倍党首のアナウンス効果によるものというより、ちょうどアメリカ経済の復調傾向やEU経済安定化の見通しがつき始め、市場が変転する時期であったことなどといった幸運にも恵まれた結果であったといえる。幸運さも器量のうちといえばそれまでだが。
従ってこの後の難しい諸課題の遂行課程での躓きや、国民の期待を裏切るようなことがあれば、決して磐石とはいえない党内の支持、消費税の軽減税率を巡り連携する公明党との軋轢顕著化も予想され、あっという間に民衆の支持が消滅する大いなる賭けといった危なっかしさを秘めていることも否定できない。
次に、新政権の経済政策(アベノミクス)とその他に掲げる政策の各項目について考察してみよう。
先ず大胆な金融緩和政策を主体とすると経済再建策だが、これを過去の悪夢を蘇らせる麻生副総理兼財務・金融大臣とのコンビで実施し、日本銀行に圧力をかけて協調させ、大量発行する国債を、日銀に紙幣の大量発行をさせて買い取らせ、インフレターゲットを設けた意図的ミニ・バブルで2%ほど物価を上げ、景気を浮上させて、ひいては所得税収増で、経済再建と国家財政の健全化も図ろうというものである。
この仕組みの是非を考察するには、日本銀行の性格と役割をまず理解しておく必要があろう。
わが国の中央銀行である日本銀行は、半官半民の資本構成で設立され運営される、政府や特定機関の干渉を受けず独立性と中立性が尊重・保証された機構で、家庭でいえば、働く(行政)のはお父さん、そのお金のやりくりを管理するお母さん役が日銀ということになり、これで人気取りのためにお金をばら撒き暴走しがちな行政に警告を発し、お金の出入りをコントロールして物価と国民生活の安定化を図ろうとする存在であるから、物価の番人とも言われ、常に冷静、慎重、保守的であるべきとされ、バブル経済の過熱や過激なインフレの発生を最も恐れる。
こういった金融面からの経済調整などといった役割を担う政策の決定は総裁以下の有識者による政策決定委員会で行われ、それに基づき(1)金融政策の決定と景気調整、(2)通貨を発行(日本銀行券)する権利を有する唯一の機関、(3)政府資金の出納管理、(4)都市銀行や地方銀行など市中に存在する諸銀行をまとめる銀行といった4つの重大な役割を担っており、そのために、投機的なマネーゲームを戒め、堅実な貯蓄を奨励したり、紙幣の真贋を判定したり、市中銀行の業務検査をする部門なども有する。
日本銀行が行う金融面からの景気調整策には、金利の上げ下げで景気の過熱化や冷え込みを調整する(1)公定歩合操作と、市中に出回るお金の量をコントロールすることで景気を調整する(2)公開市場操作(市中銀行が保有する国債や有価証券を日銀が売買し、市中銀行が民間企業にお金を貸しやすくしたり引き締めさせたりする。売りオペ・買いオペ)、日銀が市中銀行などに融資する際、その債権保全のため一定の積立金をさせているが、この積み立て比率を増減する(3)支払準備率操作という3つの手法と、その前段の警戒的処置として市中銀行に対する(4)窓口指導がある。
1980年代の経済成長期には、こういった日銀の中立的良識による操作に、当時の与党であった自民党が圧力をかけ、さらに超金融緩和策をとらせた結果バブル経済が発生し、その行き過ぎを是正するため急遽貸し出し規制の金融引き締め策に転じたミスリードの結果、バブル経済破綻を招き、企業倒産の増大、市中銀行や信用金庫などの連鎖的経営破綻、金融不安、長期デフレ不況、大量失業者の発生などの経済・社会大混乱を招いた。
こういった過去の反省もなく、今回も日銀への圧力でこの危ない橋を渡り、目標限度は設定するとはいえ、意図的なインフレ政策に転じるため、バブル破綻不況脱出策として長期にわたり既に実施してきた前記(1)の超低金利政策の上に、更に(2)の量的緩和までしようとしているのである。
お金が安易に手にはいれば、どうしても人間は好ましくないことに浪費したり、より有利なマネーゲームに向けがちであり、前回のバブル期にも不動産投機に向けられたが、将来への研究・技術開発など前向きで実体経済にも反映する石油に代わる新エネルギー開発、安全な国家づくりのためのインフラ整備などに有効活用すべきではなかったか。
多くの大企業や富裕層は、好業績のお金余りで、切実な国内設備投資の資金需要はなく、買いたいものも既に揃っているし、胃袋の消費量には限界があるので、個人消費の拡大には効果薄ではなかろうか?
本当に必要な中小企業などの部門に、直接有効にお金が回るような配慮をした上での金融量的緩和をしないと、欧米でも成功体験例が少ない調整インフレは、悪性インフレに繋がりかねないので、慎重に対処すべきであろう。
安倍政権が強調する無制限の金融緩和は、「日銀を恫喝してでも、新規発行した膨大な国債を直接日銀に丸買いさせるため、お札をどんどん刷らせる。その好機は今春の日銀総裁交代時に自民党寄りの人材を送り込む画策をしている」といった噂もあるが、これでは日本銀行の中立性や独立性を侵食するもので、フアッショ政治のようで危険であり、日銀の抵抗もあろうし、総裁人事では多数に頼る強引な3分の2ルールも通用しないので、その実現性は難しいものと考える。
まだアドバルーンを上げた段階に過ぎないアベノミクスの前宣伝だけで、早速に株価は上昇に、為替は円安に転じて、上げ潮に乗ったかのように有頂天になっているようだが、実体経済の実情や冷静な理論値としては、これは煽られ相場でしかなく、人為的なバブル経済政策の再来と言うべきものだ。だからこそ、こういった傾向を憂慮してIMFでは早々と、「恣意的な株価の吊り上げや通貨安政策は好ましくない」と専務理事が警告を発している。
やがて落ち着けば、いずれ揺れ戻しの反動調整落ともなろうが、この機を狙って売り逃げ大儲けをするのは大手外国投資機関、逃げ遅れで大損を蒙るのは日本の庶民投資家ということにもなりかねない。
アベノミクスの主体を成す大規模な金融緩和策が挫折したら株価は低落し、円安による経済成長戦略も思惑通りにはいかなくなろう。
日本ではインフレ対策の体験例は多いが、需給の逆転による長期デフレ不況の体験は少なく、これまで本格的なデフレ脱却策を講じたことがないといえるが、この根本対策は供給(生産)と需要(消費)の均衡化であり、消費需要を拡大するには、国内消費人口の増大を図るか新規需要の創出か、財政出動で公共投資を拡大するか、海外輸出の増強が必要ということになる。つまり金融政策と政府の財政政策は経済飛翔への両翼ということになるので、日銀への強制は好ましくないが、日銀との対話による協調は必要ということになる。
そのためには、小出しでなく思い切った経済政策や金融緩和策で、貯蓄より消費をといった生活態度でも将来に安心が持てるといった環境をつくり、消費購買意欲を喚起したり、市中に出回るお金の量を増やし、購買能力をつける政策誘導が必要だが、経済には、たとえば為替相場の円高は輸出業者にはマイナスだが、輸入物価は下がるし、逆に円安では、輸出には有利だが、輸入には不利で原油高、諸物価の高騰といった弊害も生じるといったように、必ず功罪の二面性があるので、その状況や時期に応じた機敏な対応と匙加減が重要になり、このアクセルとブレーキの踏み方を誤ると副作用が生じたり、反転し過ぎて超インフレになる危険性も伴う。
従ってアベノミクスは、根本的に間違った愚策ではなく緊急対策としては必要で、いつか誰かが犠牲になる覚悟で、過去の残滓の大清算をしなければならないことなのだから、舵取りとその進捗状況の監視は大切だが危険性も伴うので、政治生命をかけた勇気ある決断と賭けに出たものともいえよう。追い詰められた日本の最後の切り札と期待される新安倍総理の健康と健闘を祈念しつつ、今後の言動を見守りたい。

著者プロフィール

経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)

幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。

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