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サイゼリヤ堀埜社長 コロナ後の外食「“酔っぱらう酒”から“楽しむ酒”へ」、価値観変えて 単独インタビュー[後編]

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公開日付:2021.06.22

―ほかのレストランチェーンが軒並みスクラップするなかで、サイゼだけ増店傾向だ。

 こんな時期に、身の程知らずといわれるかもしれないが(笑い)。「予定していた出店計画をやめる必要もない」ということで出店を続けている。元々、当社は工場も多く固定費が大きい。だから、店舗を閉めていくと将棋倒しになる。他のチェーンさんは財務的な面を見てスクラップを決断しているが、トータルのバランスで見ると、うちは閉めない方が良い。逆に出店を続けることでコストも下がり、利益を出せる方向に向かっていく。

―出店する上で、立地面のこだわりは?

 20年ほど前、超高速出店した時期があった。1年で130店ぐらいの出店。その契約が長かった。いまようやく入れ替わりの時期にきている。当時は2流立地とか1.5流立地といわれる場所に出店していた。1流立地は、ロイヤル(ホスト)さんとかデニーズさんとか、他の大手チェーンが入っていて、入り込めなかった。だが、今、他のチェーンが閉店を進めているので、「じゃ、うち次入りましょうか」と。1流立地への出店も積極的に行っている。

サイゼリヤ後編"

インタビューに応じる堀埜社長

―ショッピングセンター(SC)にも多く出店している

 サイゼリヤはSCで成り立つ数少ないフォーマットと認識している。他のファミレス大手さんは、SCの営業時間に合わせて利益を出すことが難しい面もあり、出店を控えている。今、時短営業が求められるなかで、うちの営業活動は、なんとか成立する。いま、利益が出ていないのは(感染拡大防止のための)席の間引きがあるから。その分だけカバーすれば時短を続けられる。

―SCの出店に耐えられるのはなぜか?

 生産性の問題。店舗運営に関し、あらゆる要素を絞っている。だからSC内で利益が出る構造となっている。だが、このコロナ禍で調理品のテイクアウトにすぐ対応できない、という弱点も露呈した。イートイン特化型であったため、様々な要素を絞り込んでいた。店舗運営での余剰が少ない分、調理品のテイクアウトのオペレーション確立に苦戦している。

―現在の状況は

 今もテイクアウト品目を絞っている。ガストさんなんかは、かなり昔から宅配をしているし、ほかにもいろいろなことをやっている。そういう他社さんは、スペースや営業に余裕幅がある。うちは、イートイン特化型で、そういう“余りの幅”がないため、テイクアウトは絞らざるを得ない。

―今後の出店施策は

 そこそこやっていきましょう、という感じだ。でも、やはり頭打ちになっていく。今、他社さんで退店が多いとは言え、退店したお店のテナントの面積がサイゼリヤに適したものかというと、そうでないものも結構ある。広すぎるとか、家賃が高すぎるなど。そういうところは出られない。ただ、出たい地域はいっぱいある。

―具体的に出店したい地域は?

 都内だと練馬区とその周辺は全然出られていない。ちょうどいい大きさの物件がない。うちは、もともと利益モデルが60~70坪型。そのサイズに合う物件は、なかなかない。練馬以外だと、北区、板橋区で、住宅街のような場所に出店したいが、そもそもそのような場所はだいたい物件が小さい傾向で難しい。逆に、たまに広い物件があるが、急に値段が上がってしまう(笑い)。広めの物件だと、回転寿司店とも競合する。
 最近注目しているのは、コンビニサイズの物件。コンビニの閉店が相次いでいるので、すごい数の物件が出てくる。そういう背景もあり、「コンビニ跡に出店できたらいいね」と。

―1人客向けのカウンター席を設けた店舗の出店も話題となった

 話題になったのは、コロナ以降だが、ずいぶん前からカウンター席のある店舗はあった。ただ、1人用の席はこれまで好んで選ばれるような席ではなかった。席についても、社内でこれまで散々研究を行ってきた。台形のテーブルを作ってみたり、いろいろなケースを試してみた。

―コンビニ跡への出店は今後増えていく?

 増やしたい、と考えている段階。これがうまくいくと、都内に山ほど出店できる。また、コンビニの店舗跡は都内だけじゃなく、地方にもたくさんある。地方に進出する足掛かりにもなる。地方は中心部に集客の見込める繁華街が集中していて物件が少ないうえに、賃料が東京並みに高い。でも、コンビニは必ずあるし、つぶれるコンビニも相当数ある。

―まだ未出店が14県ある

 沖縄は現状難しいけれども、他の13県は出るときにはコンビニサイズが「意外といけるのでは」と考えている。未出店県は、人口も比較的少ないので、1店当たりの極端な売上は期待できない。相応の大きさの店舗で始めるのが望ましく、小型店にした方が良いかもしれない。コンビニサイズは地方出店をにらむ上でも鍵となる形態かも。だが、まず、どういうビジネスモデルが好ましいかテストが必要。ただ規模を小さくして出店する、ということはアウトだ。

―今期、業績を黒字予想している

 要因は、単体が補助金によって経常利益が黒字になる可能性がある、ということと、海外店舗が好調である、この2つ。ただ、残念ながら営業利益の赤字は消せない。国内での営業損失があまりにも大きい。
 海外は中国が絶好調で、北京以外はとくに調子がいい。上海は最高益を出している。加えて、香港とシンガポールでは、ロックダウンの際の手当てが厚い。今も(5月下旬)、シンガポールは外食禁止と発表があったが、迅速に協力金が出る。また、額も大きい。

―日本の助成金と比較すると?

 大変早くに支給される。日本は2月分が5月に支給されるような感じ。うちみたいに現金があるところは乗り越えているが、小規模の事業者さんなど、お金がないところは厳しいと思う。倒産する可能性もある。国には企業の資金繰りの仕組みを知ってほしい。小規模の飲食店は期待しているお金が入らず、大変なことだろうと思う。

―五輪開催の可否は、業績にどのような影響がある?

 可否によっての影響はまったく不透明だが、業績への好影響は期待していない。中間決算発表の際の会見で、個人的な意見として「五輪は開催した方が良い」と申し上げた。五輪に出場する選手の皆さんは、私たちにできないことができる。池江璃花子さんの姿を見て、どれだけ勇気づけられて、つらい思いを乗り越えた人がいるか。多くの人を勇気づけるためにも、東京五輪は開催すべきだと思っている。東京五輪で活躍するアスリートの姿は、人々にポジティブな影響を与えるだろう。
 感染者数の問題は、五輪放映時や放映直後、盛り上がった人たちが街中に出て騒ぐようなことがなければ、ステイホーム観戦によって感染拡大を一定程度抑えられる可能性もある。だから、五輪開催はマイナスの影響ばかりではない。

―新型コロナが落ち着いた段階で、これまでの外食習慣に影響はあるか。例えば大人数での宴会は減る、など

宴会のような大人数での会食については、反動で余計増えるかもわからない。ただ、このコロナ禍を経て、外食で進化すべき点は“酔っぱらう酒”から“楽しむ酒”に価値観を変えていかねばならない、ということだ。このコロナ禍は、“楽しむ酒”に移行できる大きなチャンスとも言える。
 これほど酔っ払いに優しい国は日本くらいだ。普通、海外だと盗みに遭ったり、逆に逮捕されることもあるだろう。場合によっては死に至る可能性もある。前職でブラジルに5年住んでいたが、酔っぱらった日本人が頭を殴られている場面にも出くわした。“酔っぱらう酒”をどれほど減らせるか―そういう変化を期待したい。


 TSRが実施したレストランチェーンを運営する上場主要11社の店舗数調査では、新型コロナ感染拡大前の1年間との比較で、唯一店舗数が増加したサイゼリヤ。競合他社が店舗撤退に舵を切るなか、「総合的な経営バランスを重視した」と、新規出店を取り止めず、計画通り出店を行った堀埜社長。
 また、アフター・コロナの新たなライフスタイルをにらみ、22時までの恒久的な営業時間短縮を決断。さらに、同時進行で非正規従業員の正社員化を急ピッチで進め、従業員の雇用安定を図る。このコロナ禍の社会情勢上、正規社員として働きたい非正規従業員のニーズをいち早く嗅ぎ取った。
 大胆な施策と堀埜社長の歯に衣着せぬ物言いが世間の耳目を集める同社だが、この実行力の源は、堀埜社長をはじめ、社内で日々繰り返す “テスト”の存在があるからだろう。店内に置くテーブル一つとっても、あらゆるテストを行い、何が来店客のニーズにフィットするのか、社会時流に適う取り組みかを、入念に調査・検証する。
 このコロナ禍でも昨春以降、独自で飛沫感染防止のためのテストを徹底的に行ってきた。こうした経験から、政府が推奨する飛沫対策にも懐疑的だ。「パーテーションを使った上で換気をすると、その空間に渦が起こり、却って感染を拡大させる恐れがある」。自社の経験、ノウハウを元に、コロナ禍の逆境を戦い抜くサイゼリヤの姿勢には、業界問わず学ぶべき点は少なくない。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年6月23日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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