読めばわかる与信限度額 part4 ~限度額設定時の注意点~
公開日付:2014.8.28
前回の「読めばわかる与信限度額 part3」では、与信限度額の算出方法
について、いくつかの例をご紹介いたしました。
与信限度額の算出には、自社や取引先の財務健全性比較、業界標準および
同業他社との比較など、基準となる評価項目は数多くあります。
しかし一方で、万能な与信限度額の算出式は存在せず、取引先毎に
最適な与信限度額の設定を行う必要があります。
そこで今回は、「読めばわかる与信限度額」シリーズの4回目として、
与信限度額を設定する際の注意点をご紹介いたします。
・「売掛債権額」=「与信限度額」ではない
与信限度額は売掛限度額の最大値のことです。決算や期末時点での取引先の
売掛債権額は回収や決済後の残りの金額であり、債権金額的には最大でない
ケースが多く、売掛債権額をそのまま与信限度額とするには不適当といえます。
・都合の良い「販売目標」で計算していませんか?
計算された一つの値に対して、自社の予定もしくは目標とする売上構成比や
取引のウエイトを加味した上で、与信限度額を設定する方法があります。
その場合、自己都合による恣意的な要素や、営業担当者の希望的な観測が
含まれていないかを確認しましょう。
・同業他社の与信限度額について
同業他社が適用している与信限度額を自社に適用する場合は、自社と同規模程度の
業態や財務内容であることが求められます。また、同業他社が短期間で
極端に与信限度額を下げた場合には、その取引先の信用度が低下した可能性も
あるので、その点にも注目しましょう。
・ストック面は「月商」では測れない
取引先の月商を参考に与信限度額を設定することは一般的な手法です。
ただし、月商の値は月間収入ではないという点は注意が必要です。
また、貸借対照表によるストック面での評価が別途必要ないかを検討しましょう。
・「財務比率」の落とし穴
売上高1億円の企業と1000億円の企業を同一の財務比率で単純に
比較することは危険です。小規模経営で業歴の浅い企業が極端に良い数値と
なってしまうケースもあるので、勘定科目の絶対金額も考慮して評価しましょう。
一つの指標や計算式のみで様々な企業の与信限度額を設定すると、
偏りが生じ、適切な運用ができなくなるリスクがあります。
様々な与信限度額設定の切り口を用意し、各手法での弱点を
補足するような仕組みを作ることが、与信管理の最適化への近道になります。