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2018年の展望とリスク

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公開日付:2018.02.15

暦を調べることは、歴史を検証し、未来予測に役立てようとすること

 新年おめでとうございます。毎年のことだが、年末になると来年はどんな年になるのか思いを巡らせ、年が明けると今年はどうなるのか熟考する。
 古来、人類は未来を知ることに英知を傾けてきた。未来の出来事がわかれば、一個人の人生であれ、国家の行く末であれ、圧倒的に有利になるからである。経済学・統計学等の学問が発達したのも、歴史的事実や最新の知識を得ることにより、より良い未来をつくろう、未来予測に役立てようという試みからであろう。
 しかし、未来は神のみぞ知る領域であり、未来予測が不可能なことは言うまでもない。そこで、人類は、暦や天体の運行、シャーマン・巫女等を通して、自然の摂理や神の意志を知ろうとしてきた。神の領域に一歩でも近づくべく発達したのが、西洋では「アストロロジー」、東洋では「易占」や「干支」「9星」等になろう。わが国で易占いや星占いというと胡散臭く見られがちだが、西洋でアストロロジーといえば立派な学問である。米レーガン大統領の政策が、星占いに傾注していたナンシー夫人の影響を大きく受けていたことは有名である。
 日常生活の必需品となっている暦だが、暦の存在するところ、古来、必ず占いがある。暦は数が基本であり、暦の科学性と占いの非科学性が融合すると、未知への期待と畏れもなる。未知は道に通じ、暦は歴史となる。「暦」は未知を知るべく作られた過去に関する記述であり、暦が過去になると「歴」になる。過去に関する記述である暦の積み重なりが歴史となるのである。
 実は、「暦」と「歴」は同義語である。「暦」と「歴」は、もともとは同一の漢字で、「がんだれ」の下に「禾(のぎ)」を二つ並べ、その下に「日」と書いていた。「禾」は米や穀物のことで、2つ並んでいることは穀物が日々成長することを表す。暦を調べるということは、歴史を検証し、未来予測に役立てようとすることなのである。歴史は決して同じことは繰り返さないが、似たようなことが起きるからである。

故・安岡正篤氏によれば、干支は万物の循環過程を約説した経験哲学

 天皇陛下の退位が2019年4月30日に決まったことで、「平成」元号も残すところ1年余りとなった。昭和の歴代首相のご意見番と言われ、「平成」元号を名づけた故・安岡正篤氏は、政財界・皇室からも頼りにされ、年末年始になると各年の干支の意義を政財界の要人に講釈していた。氏の著書『干支の活学』の序文には、「干支は占いではなく、生命あるいはエネルギーの発生・成長・収蔵の循環過程を分類・約説した経験哲学ともいうべきものである」と記されている。
 私も毎年、年末になると来年を予測している。安岡正篤氏に倣い、私の予測も「歴史は過去の年回りと似たことが繰り返される」ことを前提にしている。このため、私は「干支」だけでなく、干支(10干・12支)・9星を検証し、私はこれを暦学(=歴学)と称している。現役のアナリストだった一時期、私の年頭の予測がよく当たるので、毎日新聞に「エトノミスト」として紹介されたことがある。それを見て訪ねてきた学友と旧交を温めたのは懐かしい思い出である。
 なお、暦は数が基本と前記したが、干支も数が基本である。干支の「干」は、文字の形が示すように、「一」に始まって「十」に終わる。「支」は一つのもとから枝分かれした区分を表し、もとを支える意味もある。
 さて、2018年を展望する前に、最近2年間を検証してみよう。「2016年は、ものごとが順調に進んでも油断できない年」と予想したが(TSR情報、2016年1月8日号「丙申二黒土星」参照)、英国のEU離脱ショック、米大統領選でのトランプ氏の勝利と、驚天動地の大事件が起きた。
 2017年は「現状維持と変革の新旧勢力が衝突し、始まりと終わり・破壊と創造の年」と予想し、「トランプ米大統領が就任するにあたり、まさにふさわしい幕開けの年」とした(TSR情報、2017年1月6日号「丁酉一白水星」参照)。実際、トランプ大統領は、環太平洋経済連携協定(TPP)や地球温暖化に関するパリ協定から離脱し、トランプ大統領の「破壊」は世界に衝撃をもたらしている。「創造」では、2017年12月の中東和平のための「新アプローチ」や、これも12月に成立した連邦法人税の史上最大の大型減税が代表的である。

2018年は戊戌九紫火星

 さて、2018年は干支(10干・12支)・9星で言うと、戊戌九紫火星(つちのえ・いぬ・きゅうしかせい)となる。「戊」は茂の意だが、草木が生い茂って、鉞(まさかり)を用いて伐採しなければならないという意味である。「戌」は、戊に一を加えた字で、茂と同義語である。すなわち、枝葉末節が茂り、日当たりが悪いため、剪定しなければならないという意味である。つまり、2018年は、似たような意味を持つ「戊」と「戌」が60年ぶりに揃う干支の年になるのである。「9星」の「九紫火星」は、太陽の最も旺盛な色を表す。草木でいえば、最も茂った状態である。
 10干の戊年から、過去の歴史を振り返ってみよう。150年前の1868年は明治維新の真っ最中だ。江戸城無血開城が実現し、「明治」と改元された。1918年には第一次世界大戦が終結した。1948年にはベルリン封鎖が始まり、1978年には日中平和友好条約が調印された。
 1998年は、平成バブル崩壊後の処理を巡る苦難の年だ。公的資金60兆円を投じる金融再生関連法が漸く成立し、日本長期信用銀行・日本債券信用銀行に初めての銀行国有化が適用された。クリントン米大統領の弾劾訴追が決定したのも1998年である(翌年に無罪判決)。
 2008年は、世界を震撼させたリーマン・ショックの年である。米政府と米連邦準備制度理事会(FRB)は危機を回避すべく矢継ぎ早に手を打ったが、9月に大手証券会社のリーマン・ブラザーズが倒産した。ニューヨーク・ダウが史上最大の暴落を演じたのは、まだ記憶に新しい。
 12支の戌年を見よう。1946年に、連合国軍最高司令官マッカーサーが連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に日本国憲法の草案作成を指示し、11月3日に公布された(施行は1947年)。1994年には社会党委員長を首班とする内閣である村山連立内閣が発足した。
 2002年2月から始まった景気拡大がいざなぎ景気を抜き、戦後最長となったのは2006年の戌年である。米国では、FRBの新議長としてグリーンスパン氏に代わり、2006年2月、バーナンキ氏が就任した。バーナンキ議長は2006年6月までに3回の利上げを行い、7月には日銀が2001年のITバブル崩壊後続けてきたゼロ金利を解除した。

日経平均株価は1~3月が山場か

 以上、「戊戌九紫火星」の概説および過去の歴史を考慮すると、2018年は「万物が最高潮を迎え、対策を迫られる年」と予想する。そうなると関心事は、世界株高、とりわけ上昇基調を辿る日米株の行方、日米欧の金融政策の行方、さらには北朝鮮情勢の行方であろう。
 日本株の見通しについては、時局レポート2017年6月22日号「米量的金融緩和正常化の行方」で、「2017年秋あたりが転換点になる可能性がある」と予想したが、2018年に入って一段と上昇している。前記で、相場の転換点を2017年秋あたりと予想したのは、相場サイクルから現状を把握し、将来を予想する「エリオット波動原理」に基づく。
 当時の想定に比べ、現状は期間も幅も大きくオーバーしている。相場がピークを付けるときは、たいていオーバーシュートするが、現局面は、そのオーバーシュート局面だと思う。本稿は1月下旬に書いているが、相場のピークが近づいていると思っている。1~3月、遅くとも今春頃が相場のピークではないかと思う。
 オーバーシュート局面が期間も幅も想定以上に大きくなれば、なお上昇基調が続くこともあり得る。しかし、相場が上がり続けることは決してない。上がれば必ず下がる。どこまで上がり続けるかは予測困難である。マエストロ(巨匠)と称えられた米FRBのグリーンスパン議長が「バブルは崩壊して初めてバブルと分かる」と言ったように、相場の天井も、相場が崩壊して初めて天井だったと分かるのである。

相場の天井が近いと考える多くの状況証拠

 日本の株式相場のピークが近づいていると思う状況根拠は幾つもある。第1に、世界の株式市場をリードする米国で2017年12月、連邦法人税の史上最大の大型減税が成立した。現在、大型減税が景気・企業収益に及ぼす好影響を手掛かりに米国株は急ピッチで上昇している。しかし、これ以上、株価の起爆剤となる好材料は望めないだろう。第2に、移動平均線からの乖離率が過去20年間で過去最高水準に達するなど、米国株式相場の過熱を示すシグナルが続出している。
 第3に、皆が総強気だからである。1月1日の日本経済新聞に、毎年恒例の今年の景気・株価予想が掲載された。アンケート調査による経営者20人の回答である。それによると、今年の日経平均株価の高値は2万5000円以上と予想する人が17人に達した。安値も2万円割れを予想した人は僅か1人で、それも1万9500円だった。皆が総強気になれば、相場の天井である。
 第4に、個人が信用取引で買った株式の含み損益の度合いを示す信用評価損益率が、1月12日申し込み時点でマイナス3.63%まで大きく改善したことである。過去の経験則では、信用評価損益率がゼロ前後になれば、相場の天井を示す。ちなみに、前回の相場の天井である2015年は6月から8月にかけてピークを付けたが、この時はマイナス6.09%が最高値だった。現在は、既にその水準を超えている。
 第5に、世界経済に大きな影響を及ぼす米国の金融政策は既に金融引き締め局面にある。2017年9月には保有資産の縮小開始を決めた。2018年の米国は、資産縮小と利上げとのダブルで金融引き締めが行われるということになる。そうしたところに、FRBの正副議長、さらにNo.3のニューヨーク連銀総裁が交代することも気になるところだ。
 第6に、既に金融緩和の正常化・縮小に動き出した米FRB、欧州中銀行(ECB)に続き、日銀も金融緩和の縮小に動き出す可能性がある。第7に、リスク要因として、2018年は米国で逆イールド(長短金利の逆転)が起きる可能性がある。足下は、10年債利回りが2.6%程度、30年債利回りは2.9%程度(1年前はそれぞれ2.4%程度、3.0%程度)と両者の差が縮まっている。過去に逆イールドが見られた時は、遅かれ早かれ景気後退に陥っている。

リスク要因 … 北朝鮮・中東情勢、米中貿易戦争の激化など

 国際政治学者として世界的に著名なイアン・ブレマー氏が率いる政治リスク調査会社の米ユーラシア・グループは毎年、年頭に「今年の世界の10大リスク」を発表している。2017年の3大リスクは、「トランプ次期米大統領の米国第一主義」「中国の国益重視・過剰対応で米中間の緊張が高まること」「ドイツ・メルケル首相が力を失い、弱体化する欧州」であった。
 2018年は、「米国の力の不在を歓迎する中国」「偶発的なアクシデント」「世界的なテクノロジーの冷戦」である。中国の存在感・影響力が一層強まるのは誰しも同意するだろう。偶発的アクシデントでは、北朝鮮や中東で軍事衝突する危険性が高まっているとしている。イアン・ブレマー氏は、インタビューで「2018年は過去20年間で最も危険な年だ」と述べている
 北朝鮮情勢が、2018年の大きなリスク要因であることに多くの人が異論を挟まないだろう。2017年12月4日の英ガーディアン紙は、CIA長官の報告を受けた米元国連大使ボルトン氏の発言を根拠に、「米国は北朝鮮を2018年3月までに先制攻撃するだろう」と報じた。
 私も、この情報は得ていたが、時局レポート2017年12月19日号「緊迫化する中東情勢」では、「中東地域で紛争の拡大を望む勢力は、北朝鮮についても2018年3月のロシア大統領選挙後の開戦を目指している」とだけ書いた。この時点で、「3月までに先制攻撃する」という情報と、「3月のロシア大統領選挙後の開戦を目指している」という情報があったが、中東情勢をテーマとする原稿であり、北朝鮮情勢については、私が想定した結論だけ書いたのである。
 そう考えたのは、韓国で開催される平昌五輪・パラリンピックの開催期間(五輪:2月9日~25日、パラリンピック3月9日~18日)中は軍事行動を起こさないだろうと考えたこと、3月(上中旬か)には中国で全国人民代表大会(全人代)があり、3月18日にはロシア大統領選があるため、米国が軍事行動を起こすなら、この後と考える方が合理的だろうと考えたからである。
 2018年に入り、北朝鮮情勢が急展開し、緊張緩和が進んでいる。北朝鮮の金正恩委員長が1月1日の新年の辞で、平昌五輪に選手団を派遣し南北対話を探る考えを示したからである。以後、急速に南北対話が進展し、1月10日にはトランプ米大統領が「南北対話が進んでいる間は、軍事的行動はない」「適切な条件下では対話の窓は開いている」と述べた。ここにきて米国は北朝鮮の核を容認するとの見方も有力になっている。ただ、北朝鮮有事が避けられ、北東アジア・北朝鮮情勢の冷戦状況が続いても、中東情勢については、上記の時局レポートで書いたように、2018年8月に危機到来の可能性がある。
 2018年のリスクとして、イアン・ブレマー氏は「テクノロジー冷戦」を挙げたが、私は「米中冷戦、なかでも米中貿易戦争の激化」を懸念している。仮に、米国が世界貿易機関(WTO)から脱退すれば、世界経済は大きな混乱に陥るだろう。
 最後に一つ追加すれば、トランプ米大統領の就任当初から囁かれていた失脚・弾劾の動きが、2018年の年回りからすれば、本格化する可能性があろう。(1月25日記)
著者プロフィール

経済・国際問題評論家  吉永 俊朗(よしなが としろう)

1948年福岡県生まれ。九州大学卒。山一証券経済研究所企業調査部長、山一投資顧問投資戦略部長、東海東京証券理事経営企画部長、藍沢証券アナリストを経て現職。著書に「100年たってもアメリカに勝てない日本」他。

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