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タカタ・東芝問題に思う ~ カントリーリスクと社長の使命

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公開日付:2017.08.15

 

会社が傾いたり潰れるのは経営者が無能だからである

 6月26日、欠陥エアバッグ問題で経営が悪化していたタカタが、東京地裁に民事再生法の適用を申請した。米国子会社も同日、日本の民事再生法に当たる米連邦破産法第11条の適用を申請した。自動車メーカーが肩代わりしていたリコール費用を加えると、負債総額は1兆円を超え、製造業では戦後最大の倒産になると報道されている。
 このタカタの欠陥エアバッグ問題と東芝の不適切会計問題が、最近の企業不祥事の双璧だろう。この2社以外でも、企業の不祥事が続発している。ここ1~2年で大きな話題になった事件だけ見ても、東洋ゴム工業の免振データ改ざん、旭化成建材・三井不動産のマンション杭打ち不正、東亜建設工業の地盤改良データ改ざん、三菱自動車工業・スズキの燃費不正など枚挙にいとまがないほどである。
 こうした不祥事において、最も大切なことは、不祥事を起こしたことに対する対応及び事後処理である。補償や弁済はもちろん、再発防止のための有効な対策を迅速に取りまとめる必要がある。社内的な行動だけでなく、社会的話題になった以上、外部から見ても適切と思われる補償や対策が採られているかなど社会的な見地も必要になる。
 事後処理がうまくいけば、不祥事で地に落ちた企業イメージを一気に回復することも可能だが、そうしたケースは少ない。不祥事を起こす企業は、不祥事を起こしやすい構造的問題を内包していることが多く、三菱自動車工業のように不祥事が繰り返されることになる。タカタの欠陥エアバッグ問題では2008年11月、本田技研工業(ホンダ)が米国で初のリコールを行い、2009年5月には米国で初めての死亡事故が発生したにもかかわらず、認識が甘かった。このため、対応が鈍く、後手に回り、適切な対応策も採れなかった。不祥事に対し、迅速・適切な対策を打てないと、最悪の場合、タカタのように倒産することになる。
 なぜ、タカタは欠陥エアバッグ問題に対する認識が甘かったのか。なぜ、対応策が後手に回ったのか。幾つもの問題点があるだろうが、結局、一点に尽きるだろう。それは、社長である。日本マクドナルドの創業者として著名な藤田田(ふじた でん)氏は「給料を払いすぎて潰れた会社はない。会社が潰れるのは経営者が無能だからだ」と断言している。

東芝経営陣の事後処理の迷走に加えて、「不適切会計」と報道するメディアの姿勢も問題

 2015年4月に不適切会計が発覚した東芝の不適切会計問題も、見るに堪えない迷走を見せている。東芝の社長・会長を歴任し、経団連会長も務めた土光敏夫氏も、草葉の陰で泣いているだろう。東芝経営陣の事後処理の迷走に加えて、東芝の不適切会計問題に対して「不適切会計」と表現するメディアの対応も生ぬるかった。オブラートに包んだような、奥歯にものが挟まったようなメディアの「不適切な報道」に多くの視聴者が不自然さを感じたのではないだろうか。メディアにとって、東芝は巨額の広告費を出してくれる大スポンサーであるから、なかなか批判し難いのだろう。
 そうしたところに6月19日、日本経済新聞に「東芝の決算巡る迷走は見るに堪えない」との社説が掲載された。この記事で注目されるのは、「不適切会計」との言葉が一切見当たらないことだ。不適切会計ではなく、本当は粉飾決算なので、新聞記者の良心として「不適切会計」という言葉を使わなかったのではないかと推察している。なお、この東芝の不適切会計問題に対し、「なぜ、粉飾決算と呼ばないのか」と糾弾したのは、筆者が知る限り、世界的な経営コンサルタントである大前研一氏だけである。
 「不適切会計」という言葉を用いるため、東芝に対する批判や追及が緩くなるのである。大前研一氏の著書のタイトルにあるように、『ニュースで学べない日本経済』(2016年4月刊)では困るのである。リチャード・コシミズ、ベンジャミン・フルフォード両氏の共著『日本も世界もマスコミはウソが9割』(2016年5月刊)では本当に困るのである。
 東芝の不適切会計問題で、前記の日本経済新聞の社説は、「東証は大企業の不祥事に対して厳しさを欠くと見る市場関係者が増えているようだ。問われているのは1企業の決算ではなく、日本の株式市場の公正さだ」と結語している。私は、それだけでなく、「不適切会計」と報道するメディアの姿勢も問われていると思う。さらに言えば、経団連会長を出した名門企業、日米の原子力事業を担う国策会社とも言える東芝を巡り、政官財・メディアの一蓮托生の体質も問われていると思う。

カントリーリスクは最大のコスト、倒産リスクがあることを認識すべきである

 タカタ、東芝に共通する問題として幾つか挙げられるが、特筆されるのはカントリーリスクである。タカタは米国で2008年に欠陥エアバッグ問題が表面化した。東芝も、米国の原子力会社ウエスチングハウス(WH)を2006年に英国核燃料会社から買収したことが、不適切会計問題の大きな原因となっている。
 日本企業の外国進出に際しての失敗例は、過去、何度も繰り返されている。平成バブル時も1989年9月と10月、ソニーの米コロンビア・ピクチャーズの買収、三菱地所の米ロックフェラーセンタービルの買収が大きな話題になったが、結局、両社とも数千億円をドブに捨てることになった。2000年代に入ってから大きな話題になったのは、NTTドコモの海外投資戦略である。2001年に米国の携帯電話会社AT&Tワイヤレスに1兆2000億円を投資するなど、オランダやイギリスで海外展開を進めたが、いずれも失敗した。2005年にはすべて撤退し、損失額は1兆5000億円に上った。
 海外投資や買収の失敗で済んでいる場合なら、まだましだが、倒産してしまったら終わりである。企業の安全(存続)は、繁栄よりもはるかに重要であることを認識すべきである。思うに、第2次大戦敗戦後の日本ならびに日本人は、国家の安全を他国任せにしてきたせいか、国(企業)の安全は国(企業)の繁栄よりもはるかに重要であることを忘れてきた、あるいは疎かにしてきたのではないか。このことがカントリーリスクの軽視につながっていると思う。
 繁栄を追求するのは大いに結構だが、企業の存立基盤が根底から揺らぐようでは元も子もないのである。外国に進出するに当たり、カントリーリスクは最も真剣に検討すべき最重要の課題・コストであろう。最大のコストになりかねないどころか、倒産リスクもあることを肝に銘じるべきだろう。
 格好の教訓がある。17~18世紀の重商主義世界の中で、軍事大国イギリスと平和な経済大国オランダは3次にわたる戦争を行ったが、戦争の直接の引き金になったのは、貿易からオランダを排除すべくイギリスが制定した航海条例である。『国富論』を書き自由貿易論を唱えるアダム・スミスでさえ、「貿易に対する国家の制限は経済に有害だが、それが国家の安全保障に関する場合は例外である」と述べている。重商主義のさ中ですら、国の繁栄よりも国の安全が第一だったのである。企業においても同様と言えよう。

西洋では、略奪が一番簡単で一番豊かな生活を約束する

 日本人は、世界で最も心優しく徳の高い民族だと思う。日本は海で囲まれた豊かな自然に恵まれた農耕社会であるために、助け合い・譲り合いの精神がある。しかし、諸外国の多くは、砂漠や高原などの厳しい環境で生きる狩猟民族であり、バイキングである。隣人を助けたら、自分が死ぬという厳しい環境の中で生きてきたのである。そうした古来培われたDNAが持つ国民性の違い、思考の違いにもっと注意すべきだと思う。
 京都大学の会田雄次教授(当時)は1972年に出版された名著『日本の風土と文化』の中で、「西洋では、略奪が一番簡単で一番豊かな生活を約束する」と喝破している。こうした西洋の本質が、格差の拡大が問題になっている昨今の強欲資本主義であると言える。
 西洋の一員であるアメリカは、第2次世界大戦後、戦争ビジネスで儲かってきた。しかし、「戦争が儲からなくなると、訴訟で稼ぐようになった」(高山正之・馬淵睦夫両氏の共著『洗脳支配の正体』(2017年5月刊)。三菱自動車工業傘下の米国三菱自動車製造のセクハラ事件や最近のトヨタ自動車のブレーキ問題は、儲かっている日本の自動車メーカーからカネを巻き上げようと、米国の腹黒い政官財・メディアがでっちあげた冤罪と思えるが、両者ともに巨額の賠償金を支払うことになった。タカタの欠陥エアバッグ問題も、米国の強欲資本主義に狙われたと言えなくもない。認識が甘く、対応が鈍いタカタは絶好の獲物であっただろう。
 東芝のWH買収も、米英両国に東芝が狙われたと言えなくもない。「嵌められた東芝」との報道もある。東芝が買収した2006年当時、WHは既に問題企業だった。WHの親会社は、WHを英国核燃料会社に売却し撤退した。しかし、英国でもどうにもならず、問題企業の落としどころとして狙われたのが東芝ということである。1989年のソニーの米コロンビア・ピクチャーズ買収については、ソニーをたぶらかした連中の内幕を暴いたノンフィクション『HIT&RUN』が米国で出版され、ビジネス史上で21世紀最大の詐欺と言われたが、東芝のWH買収についても同じようなことが言えるのかもしれない。
 しかし、仮に、狙われた、嵌められたにしても、外国に進出したり、外国企業を買収する際に狙われたり嵌められたりするのは当然付きまとうリスクである。日本人は、他人を騙すより騙される方が良いとの考えを持つ人がいるが、多くの外国では騙すのは賢い人間が行う行為であり、騙される方がバカなのである。
 また、自らに非があっても「お前が悪い」と主張するのが外国の通例だ。「自分が譲れば(謝れば)相手も分かってくれる」と思うのは優しい日本人だけで、譲れば譲るだけ(謝れば謝るだけ)付けこんでくるのが外国の通例である。日本企業が外国に進出するときは、日本の常識が通用しないということも十分認識すべきである。要は、タカタにしても、東芝にしても、カントリーリスクに対する認識が甘すぎたということである。

社長の最大の使命は、時代・環境に応じた最適な次期社長を選ぶこと

 会社は、社長次第で如何ようにもなる。隆盛を誇ったシャープがあっという間に企業存亡の危機を迎え、台湾の鴻海精密工業からの買収提案を受け入れたり、苦境に陥った日産自動車がカルロス・ゴーン社長の下、急回復した例が典型的である。筆者も企業アナリスト時代に多くの経営者にお会いしたが、「社長は会社を映す鏡」なのである。この点、日本経済新聞の記者だった高嶋健夫氏の著書『しくじる会社の法則』(2017年5月刊)は共感するところが多い。
 タカタの欠陥エアバッグ問題では、信じがたいことに異常爆発の原因が今も完全に解明できていない。欠陥エアバッグがメキシコ工場で製造されたことは分かっている。原因がわからなくても、事故が起きているのは現実であり、自ら主体的に対策を打つ必要があった。にもかかわらず、タカタの認識は甘く、対応は鈍かった。米司法省は2017年1月に出した声明で「10年以上にわたり安全よりも納期や利益を優先してきた」とタカタの企業体質を批判している。
 米国に本拠を置き、世界的な巨大多国籍企業であるゼネラル・エレクトリックのジェフ・イメルト最高経営責任者(CEO)は「ダボス会議より製造現場でもっと時間を過ごせ」と言う。タカタも、もっと謙虚に現実に向き合えば、迅速に対応していれば、倒産は避けられたのではないかとも思う。まさしく経営者の責任と言えよう。
 東芝同様、名門企業のカネボウ(現在は花王の傘下)が、かつて倒産に至る迷走を見せた時、日本経済新聞の社説に「疑問多いカネボウ再建策」と題し、「名門企業のカネボウが凋落の道を歩んできたのは、その甘えの体質に原因があった。無責任な経営者、老害、行き過ぎた労使協調などが改革を阻んだ。メーンバンクにも責任の一端がある」との記事が掲載された。この社説が挙げた諸原因は、凋落企業につきものである。
 東芝も、不適切会計問題で、社長・重役経験者が就任する相談役・顧問が約30人もいることが明らかになった。No.1であるはずの社長の上に、数多くの上役がいるのである。東芝は、組織的に集団無責任体制と言えるだろう。明治時代、大財閥「住友」の2代目総理事として活躍した伊庭貞剛氏は、58歳で職を辞した時、「事業の進歩発展に最も害するのは、青年の過失ではなくて、老人の跋扈である」との言葉を残した。東芝に限らず、多くの日本企業が、伊庭貞剛氏の言葉を噛みしめる必要があろう。
 タカタのように倒産する企業がある一方で、実は日本には100年を超えて存続している長寿企業が極めて多い。世界的に見ても、日本の長寿企業の企業数は断トツである。東京商工リサーチの調査では、日本企業の長寿の秘訣として、「本業を重視しながら、時代に合わせて変化する柔軟性」「身の丈にあった経営」「従業員重視の信頼経営」などが挙げられるが、このほかに創業当初の家訓や、社是などを保持しているところも多い。
 特に日本の長寿企業には、衰退した本業に代わり、新規事業で発展を遂げている企業が多い。多くの繊維企業が代表的である。結局、社長のかじ取りなのである。その点、会社の存続・発展に傾注するのは社長の使命として当たり前で、社長の最大の使命は時代・環境に応じた最適な次期社長を選ぶことではないだろうか。

(7月23日記)

著者プロフィール

経済・国際問題評論家 吉永 俊朗(よしなが としろう)

1948年福岡県生まれ。九州大学卒。

山一証券経済研究所企業調査部長、山一投資顧問投資戦略部長、

東海東京証券理事経営企画部長、藍沢証券アナリストを経て現職。

著書に「100年たってもアメリカに勝てない日本」他。

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