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震災から1年『新しく設立された法人』(新設法人)   岩手、宮城、福島の被災3県で1,883社、信用調査、与信管理、倒産情報は東京商工リサーチ。

公開日:2012.03.01

震災から1年『新しく設立された法人』(新設法人)  岩手、宮城、福島の被災3県で1,883社

 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県、宮城県、福島県。この3県では、震災からいち早く復興に向けた歩みが始まっていた。震災や景気低迷で2011年3月-10月に全国で設立された法人は6万8,028社(前年同期比0.2%減)だった。しかし、被災3県では震災から2カ月後の5月から法人設立が増え始め、3月-10月に設立された法人は1,883社(同12.3%増)を数え、全国平均を大きく上回った。

 

 業種では、建設業や卸売業が増加したが、復興需要や支援に関わる非営利団体の設立も相次ぎ、法人設立を後押しした。とりわけ被災地の沿岸部(3県38市区町村)で、法人設立は高い伸びをみせた。社名に「復興」や「未来」、「元気」、「絆」、そして地域への思いを込めた「地元名」を付けた法人が増えた。厳しい現実と復興への道のりが見えにくいなか、被災地では復興への決意の証として「法人」を設立し、新たな芽吹きの礎にしようとする動きが広がっている。

 

※ 本調査は、東京商工リサーチ(TSR)の企業データベース(242万社)に収録されている新設法人データのうち、2011年3月-10月までに設立された新設法人を抽出し、分析した。

被災3県の新設法人は12.3%増 被災3県は前年を上回る

 2011年3月-10月に被災3県(岩手県、宮城県、福島県)で設立された法人は、前年同期比12.3%増の1,883社だった。県別では岩手県337社(前年同期比33.2%増)、宮城県1,012社(同13.3%増)、福島県534社(同0.7%増)がそろって増加し、社数では宮城県が3県の過半数を占めた。また、増加率では岩手県が3割増という高い伸び率だった。

 

 東電福島第一原発事故の影響が大きい福島県では534社の法人が設立された。前年同期(530社)より4社増にとどまり、増加率は0.7%増と3県のうち最も低かったが、全国平均を上回った。

 

沿岸地域で高い増加率

 設立地域を沿岸部(38市区町村)と内陸部(93市区町村)に大別すると、沿岸部が631社(前年同期比14.5%増)に対し、内陸部は1,252社(同11.2%増)だった。津波被害が限定的で都市圏を抱える内陸部が、社数では沿岸部の2倍を数えた。しかし、増加率では沿岸部が上回り、津波被害に晒された岩手県沿岸部の大船渡市14社(前年同期2社)、陸前高田市7社(同1社)、下閉伊郡10社(同2社)、釜石市13社(同3社)などでは急増している。

  沿岸部は津波被害で水産業など地場産業が大きく毀損した。しかし震災後、被災した飲食業者を中心に屋台形式で出店する大船渡屋台村有限責任事業組合(大船渡市、9月設立)、震災で休刊した新聞社の社員らが設立した「復興釜石新聞」を発行する合同会社釜石新聞社(釜石市、6月設立)、被災した流通センターに入居していた鮮魚店など9店が共同で出資し、海産物販売などの商業施設「気仙沼さかなの駅」をオープンさせた気仙沼さかなの駅株式会社(気仙沼市、10月設立)など、地域復興の象徴的存在になる企業も設立され、地域に元気を与えている。

東北3県新設法人

設立月別 5月以降ハイペース 

 新設法人の設立月別は、震災直後の混乱などもあって3月から4月は349社(前年同期452社)にとどまり、前年同期比でも22.7%減と大幅に減少した。ところが、5月以降は一転してハイペースに転じ、8月は前年同期比35.8%と最高の伸び率を記録した。特に、沿岸地域では9月こそ前年同月比26.1%増にとどまったが、ほぼ毎月50%前後の高水準で推移dしている。

新設法人月次推移

 

資本金別「1百万円~5百万円未満」が約5割

 資本金別では、1百万円以上5百万円未満が921社(構成比48.9%)で最多だった。次いで、1百万円未満が350社(同18.6%)で、資本金1千万円未満の企業が全体の約8割以上を占めた。資本金1億円以上は4社(同0.2%)にとどまった。一方、1万円未満は14社あり、小額資本でも地元に根ざした復興への強い思いを込めた中小・零細規模の法人が相次いで設立されていることがわかった。

 

産業別 10産業のうち8産業で前年増 卸売業・建設業が大幅増

 産業別では、サービス業他が778社(構成比41.3%)で、突出して多かった。次いで、建設業322社(同17.1%)、小売業271社(同14.4%)、不動産業125社(同6.6%)、製造業104社(同5.5%)と続く。全体の約4割を占めた「サービス業他」を業種別で細分化すると、物品賃貸業、学術研究,専門・技術サービス業、他のサービス業が前年同期より増加した。一方、宿泊業、医療・福祉事業、飲食業など個人消費者向けの業種では、観光客の減少や地域人口の流動化もあり減少した。

 

 増加率では、10産業のうち8産業で前年同期より増加した。減少したのは、情報通信業(前年同期比15.4%減)、運輸業(同10.2%減)の2産業。増加率トップは、卸売業(同81.8%増)で、細分化した業種では機械器具卸、建築材料、鉱物・金属材料等卸などで増加が目立った。次いで建設業(同38.1%増)が89社増加した。

 いずれも復興に伴う需要増が見込まれる業種で新設法人の設立が多かった。

法人格別 一般財団法人・一般社団法人が大幅増

 法人格別で最も多かったのは、「株式会社」の1,469社(構成比78.0%)で、全体の約8割を占めた。増加率では、「一般財団法人」6社(前年同期2社)と「一般社団法人」78社(同40社)が大幅に増加した。

 これらの公益法人は2008年12月に施行された公益法人制度改革で設立が容易になったことも背景にあると見られる。特に、特定非営利活動法人(NPO法人)に比べ、所轄庁の認可が不要で、設立までの時間が短期間ですむメリットも大きい。震災後、素早い支援活動を目指した団体の多くが一般財団・一般社団法人での運営を選択しているようだ。

 

新設法人の課題 想定外のコストアップやスポンサー探しに難航

 被災3県で設立された新設法人は、震災からの復興に向け「雇用」など地域経済の再興に大きな意味を持つ。だが、新設法人の経営者からは、いくつかの課題が浮かび上がってくる。

 

 多賀城市の陸送会社は「出身地が被災し知人が数多く失業した。自分が戻って起業し雇用などの支援がしたかった」と8月に会社を設立、従業員6名を雇い営業を始めた。

 

 伊達市の食品製造会社は、震災で事業再編を余儀なくされた食品工場の事業を引き継いで設立し、従業員は継続雇用している。小規模の企業が多いが、新設企業が被災者の失業対策という大役を担っている。

 

 増加率が高い建設業は、復興受注の増加に伴い、職人不足が深刻だ。奥州市の建設会社は「復興需要を見込んで設立した。工事はあるが職人不足と人件費高騰で受注が厳しい」と、復興工事の本格化とともに想定外のコストアップに苦慮している。仙台市の建材卸会社は「資材流通は回復したが、建設工事がコスト高騰で工程通りに進まず納品が遅れている」と、復興特需の陰では建設関連の幅広い業種でコストアップ、人員不足などが波及している。

 

 一方、復興支援を目的とした企業では事業の進捗状況、人員の確保など概ね問題はないとの回答が目立った。ただ、一部では「沿岸地域では建築制限などで事業がなかなか進捗していない」、「復興基金の立ち上げに際し、スポンサー探しが難航している」、「復興するにつれて求められる支援内容も変わり、新たな方向性を模索している」という意見もある。

 

 復興支援に高い志を持って起業しても、復興特需に連動したコストアップ、人手不足、支援事業に対する当初の認識と時間が経過した現状のズレなど、さまざまな悩みに向き合う経営者も多いようだ。

社名に「復興」、「三陸」急増

 新設法人の社名に含まれる特徴的な言葉として「復興」が2010年の0社から2011年は35社へ大幅に増加した。○○復興プロジェクト、○○復興ファンドなど支援に携わる法人が多いことが背景にある。前向きなメッセージを込めた「未来」、「元気」、「希望」なども目立った。

 再生や復興への象徴的な言葉として、2011年の漢字にも選ばれた「絆」は、2010年の1社から2011年は4社に増えた。

 

 また、東北の地域、地名を社名に入れた新設法人も多い。社数の最多は「東北」の48社。次いで、「仙台」26社、「岩手」23社と続く。

 増加が目立つのは、沿岸部で津波被害の大きかった「三陸」が2010年の1社から2011年は12社に急増している。また、同じ沿岸部の「釜石」も0社から4社、「気仙沼」が1社から3社に増えている。

 

 さらに、津波だけでなく東電福島第一原発事故による影響も大きい「相馬」は2社から10社に急増している。

 被害が大きかった地域を中心に、震災で強まった郷土意識が、名前に地名を入れた法人の増加につながっているようだ。

 

◇          ◇           ◇

相次ぐ「復興特区」の創設 企業新設・雇用面に期待

 政府によれば、復興集中期間(当初5年間)の事業規模は少なくとも19兆円にのぼる。こうした復興需要と被災者支援団体の設立を背景に、新設法人は震災発生の3カ月後には増加に転じた。

 2月10日に復興庁が発足し、ようやく本格的な復興需要が期待できる段階にこぎ付けた。同9日には被災地の復興特区第1号に宮城県の「民間投資促進特区」が認定された。県内34市町村に進出した製造業者などを税制面で優遇し、産業集積と雇用確保を目指すものだ。

 

 このほか仙台市は津波被害を受けた農地の再生を目指し「農と食のフロンティア推進特区」の創設を申請、税制優遇で農業法人や企業設立を促す。岩手県では「産業再生特区」の創設を申請、福島県でも「ふくしま産業復興投資促進特区」を2月29日に申請した。

 こうした特区の創設が起爆剤となり、企業進出や法人の新設を呼び込むことができれば、東北3県の新設法人数はさらに増え、雇用面でも強力な旗振り役になることが期待される。

 今後、一過性の特需に頼らない安定所得による消費、生産活動の活発化、人口増、そして雇用の拡大という好循環を実現できれば、被災地で新たな実需を生み出す可能性がより高まってくる。地域に根ざした経済復興ができるか、民間の力をバックアップする行政の手腕も、また問われている。

 


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